「出水くん」
「こんなにやつれて…かわいそうに…」
「心配してくれてありがとう」
「トリオン体だから変わんねーだろ」
「そのツッコミはいらないっすねー」
荒船の言葉に米屋がツッコむ。
「女主人公さんを泣かせるやつなんて、おれがハチの巣にしてやりますね」
「過激派〜」
そう言うと、出水と米屋は俺の方を見る。
「…なんだよ」
「なんでもないですよ」
出水は俺のことを軽く睨むと、すぐに女主人公の方に向き直した。
「女主人公さん、甘いものでも食べに行きましょう!」
「いいね」
「美味しいパフェが食べられるカフェがあるんです!この前柚宇さんに教えてもらったんで、間違いないと思いますよ!」
「国近さんおすすめなら間違いないね」
「今日はこの後何もないですよね?」
「うん」
「そしたら行きましょう!」
出水はそ言うと女主人公の手を掴んで立たせる。
「おいこら、ちょっと待て」
そのまま女主人公を連れて行こうとするから、俺は出水に声をかける。
「なんですか?」
「俺の目の前で、いい度胸じゃねぇか」
「ああ、荒船さんいたんですか」
「いたんですかじゃねー!」
「荒船さんに止める権利はありませんよ!女主人公さんのことあんなに泣かせて!」
「うっ…!」
痛いところを突いてくる出水に、俺は何も言えなくなる。
「今日は、おれと女主人公さんのデートなんで邪魔しないでください!」
「あっ!おいこら出水!!」
「まーまー、荒船さん」
出水は捨て台詞を残して、女主人公を連れて行った。
「くそっ、米屋。おまえも出水の味方かよ」
「別にオレはどっちの味方でもないですけどねー。ただ、今回はさすがに出水の味方っすね!」
「…だよなぁ…」
「オレ的には、荒船さんと苗字さんがケンカすることにびっくりでしたよ」
「まあな…」
俺だって、別にしたくてしたケンカじゃない。
「弾バカ…苗字さんのことかなり心配してたんで、今回は大目に見てやってください」
「…はぁ…まぁ今回は俺のせいだから」
女主人公の気分転換になるなら仕方ない。
「けど、あいつ…デートって言ったな?やっぱぶった斬っていいか?」
「あれはシスコンによる戯言なんで許してあげてください!」
出水が女主人公を連れて来たのは、新しくオープンした話題のカフェだった。
「わー!可愛いね」
「ですよね!女主人公さんに絶対似合うと思ってたんです!」
女主人公よりも、連れて来た出水の方がテンションをあげている。
「フォトスポットがあるんで、映え写真たくさん撮って荒船さんに送りつけましょう!」
「そうだね」
話題のカフェということもあり、少し並んだが、意外とすんなり入ることができた。
「あそこのテラス席でもよろしいでしょうか?」
「私は大丈夫だけど、出水くんは?」
「おれも大丈夫です!」
「ありがとうございます。ご案内いたします!」
もう5月も中旬、ということでテラス席は良い風が吹いていて気持ちがいい。
席に座ると、出水は早速女主人公の写真を1枚撮った。
「不意打ちはやめてよね」
「不意打ちでも女主人公さんは綺麗なんで大丈夫です!」
「まったく」
出水は早速荒船に写真を送った。
「今、カフェに着きました。テラス席でめっちゃ映えます!」
「写真撮るごとに送るの?」
「実況ですね!」
携帯を置き、メニューを広げる出水。
「これです!ここのカフェの人気メニュー」
「美味しそう。食べ切る自信ないけど」
「一緒に食べましょう!」
「そうだね」
二人は人気メニューの季節のパフェと、それぞれ飲み物を頼んだ。
「…それにしても、女主人公さん、本当に良かったですね」
「うん」
「荒船さんとケンカしてるってわかった時、本当に元気がなくて心配だったんです」
「心配かけてごめんね。国近さんにも声かけてくれて、ありがとう」
「いいえ!なんとなく、おれじゃダメな話なのかなーって思ったんで。柚宇さんに言って正解でしたね」
「うん」
そんな話をしていると、パフェと飲み物が届いた。
「わー!美味しそう!」
「女主人公さんテンション上がっててかわいいです!写真撮りましょ!」
「うん!」
二人がお互いの写真を撮っていると、「よろしければ撮りましょうか?」とスタッフが声をかけた。
「せっかくだから撮ってもらいましょう!」
「だね」
「はい、チーズ!」
スタッフに写真を撮ってもらい、携帯を受け取る。
「素敵なカップルに幸あれ〜」
「ありがとうございます!」
携帯を受け取り、撮った写真を確認する出水。
「綺麗に撮れてますよ!」
「本当だ」
「これ荒船さんに送りつけますね!」
「ほどほどにね」
出水は携帯を見ると「返信来てます」と、画面を女主人公に見せた。
「楽しめよ、だって。荒船くんらしいね」
「ですね」
二人は届いたパフェを仲良く半分こしながら食べる。
「女主人公さんと荒船さんって、いつから付き合ってるんですか?」
「去年の11月かな」
「意外とそんなもんなんですね」
「そうだね」
「おれ、てっきり女主人公さんは影浦さんと付き合うのかと思ってました」
「それね、結構言われるけど、私たちはもう家族みたいなものなんだよね」
「なるほど。さすが幼なじみってことですね」
「うん」
「おれは女主人公さんが笑っててくれるなら、誰と付き合っても文句言わないですよ!」
「出水くんは私のお母さんかな?」
「弟です!」
「ふふふ、ありがとう。心強い弟だ」
その後、二人はパフェを食べたり、飲み物を飲んだり、フォトスポットで写真を撮ったりと楽しんだ。
「あーっという間でしたね!」
「楽しかったよ、ありがとう」
「ねーちゃんを楽しませるのが弟の役目なんで!」
「ありがとう」
お店から出た二人を待っていたのは、荒船だった。
「女主人公」
「荒船くん」
「荒船さん、よくここがわかりましたね」
「国近に聞いた」
荒船は「気分転換できたか?」と女主人公に聞いた。
「うん。ありがとう」
「なら良かった」
「荒船さん、もう女主人公さんのこと泣かせないでくださいよ!」
「わかってるっつーの!カゲにもさんざん言われたわ」
「女主人公さんには影浦さんだけじゃなくて、おれもいるんですからね!」
「肝に銘じておく」
そう言うと、出水は頭の後ろで手を組んだ。
「女主人公さんと次はどこに行こっかなー!」
「もうデートさせるかよ!」
「弟なんだからいいじゃないですか!」
「弟でもゆるさん!」
そんな二人のやり取りを見て、女主人公はおかしそうに笑った。