02

家に帰ると、女主人公は布団を被って泣いていた。

「女主人公…大丈夫?」
「う…っ…うえーん…っすみくん…」
「水上くん…誤解してたみたいだよ」
「うう…っ」

あの時の水上くんの反応は誤解から生じたものだ。
そう伝えても、女主人公は泣いているばかりで落ち着くまでは少し時間がかかりそうだ。

「また後で話そうね。とりあえず、そんなに泣いてると目が腫れちゃうから、氷持ってくるね」



氷を取りに行き女主人公の名前を呼ぶと、手だけ布団から出てきて、氷を受け取るとすぐに引っ込んだ。
こうなったら少し時間が経つまで出てこない。
早く二人の誤解が解けるといいんだけど…。







『女主人公がこねえ』

諏訪さんから連絡がきた。

「すみません、昨日ちょっと色々あって…」
『あ?体調不良か?』
「みたいなものです。本当にすみません。探してくるので待っててください」
『わかった。特に防衛任務があるわけじゃねえからいいんだけどよ。いつも作戦室にくんのに来やがらねえから心配してただけだ』
「ありがとうございます。見つけたら連絡しますね」
『おう』

諏訪さんからの電話を切って、おれは女主人公に連絡を入れる。
けど、今日は多分無理そうだなー。
朝起きたときの女主人公の顔は、可哀想なくらい目が腫れてて痛々しかったから、学校に行けたのは奇跡だし、ボーダーに来れたのも奇跡に近い。

「水上くんは何やってるのさ!」





その頃女主人公は、三輪と一緒に屋上にいた。
たまたま三輪がいたところに、女主人公があとから来たのだが、女主人公は三輪を見つけると「水上くんに目が似てる〜!」と言って泣き出した。

「なっ!急になんなんですか!?」

目つきが水上に似てると言われ、そして泣き出す女主人公に戸惑う三輪。
放っておけばいいものの、律儀に女主人公に付き合う三輪は、ただのいい人であった。

「と、とりあえず座ってください」
「ありがとうー…」

女主人公は屋上の地面に座る。

「急にごめんねー」
「いえ…こういうのは慣れているので…」

三輪は、何をしでかすかわからない米屋や仁礼と一緒にいることが多いので慣れていた。
だが相手は先輩である。
三輪もどうしていいかわからず、とりあえず女主人公の横に座る。

「…何かあったんですか?」
「…わかる?」
「それだけ泣いていればわかります」

女主人公は顔を隠しながら「ごめんねー」と言った。

「別にいいですけど…女主人公先輩が泣いているのは珍しいので驚きました」

三輪の知っている女主人公は、笑っているか騒いでいるかのどちらかだ。
そんな女主人公が泣いている姿を初めて見た三輪は、何か大変なことがあったのだろうと思った。

「聞いてくれる!?」
「…は…はい…」

ここでイエスと答えたことを、後々後悔する三輪であった。



「ひどいと思わない!?」
「…はい…」

女主人公は昨日の水上とのやり取りを三輪に話した。

「すみくんは、何か勘違いがあって水上くんがそう言ったって言ってたけど、わたしにはわからないし…」
「はあ…」
「わたしは、ただ水上くんと仲良くなりたかっただけなのに…あんな…隠岐くんの名前出すなんて…」
「…そうですね…」
「これって脈なしってことだよね!?わたしには隠岐くんがお似合いだって言いたいんだよね!?」
「そ…それは…」

それが勘違いなんじゃないのか、と三輪は思った。
水上は、女主人公が隠岐と話をするために自分が使われると思ったからそういうことを言ったのではないかと考えたが、なぜ本人はそこに気づかない、と思った。

「告白もしてないのにフラれた気分だよ…」
「犬飼さんも、水上先輩は勘違いしてるって言ってたんですよね。なら水上先輩本人に聞いてみないとじゃないですか?当事者じゃないので憶測でしか判断できないです。ここで俺に話してても水上先輩の本心はわからないですよ」
「…もっかいお願いします」

そういえばこの人はあまり頭が良くなかった…と三輪は思い出した。
今、断片的な話を聞いた自分でも水上が何に勘違いしたのか、なんとなく気がつくのに、本人が気づかないのはそこまで頭が回らないからだ、と納得した。
三輪は女主人公が理解できるように、簡潔にまとめた。

「…水上先輩とちゃんと話しましょう」
「はい…」

三輪は女主人公が返事をしたので立ち上がり、「それでは行きましょう」と言って、手を差し出した。

「え?今!?」
「早い方がいいですよ。こじれるとめんどくさいです」
「…う…」

女主人公は三輪の手を掴もうとするが、なかなかその手を取らない。
三輪がイライラして「はい、早く!」と女主人公の手を掴んで引っ張り上げた。

「わっ!」

バランスを崩しそうになった女主人公を三輪は「危ない!」と言って支えた。

と、同時に屋上の扉が開く。

「…お取込み中やったな」

タイミング悪く現れたのは水上だった。

「ほなさいならー」
「あ!水上くん!」

水上はバタン、と扉を閉めた。

「わー!タイミング!」
「女主人公先輩すみません!でも、そんな落ち込んでる場合じゃないですよ!早く追いかけてください!」
「わたしに一人で追いかけろって言うの!?」
「ここで俺が一緒に行ったら余計ややこしくなりますよ!」
「三輪くんひどい!」
「男を見せてください!」
「わたしは女だー!」

そう言いながらも、女主人公は水上を追いかけた。

「…まったく…世話の焼ける先輩だ…」

三輪は、めんどくさいから早く二人の誤解が解けますようにと願った。



「み!水上くん!」

女主人公は水上に後ろ姿を見つけると、大きな声で名前を呼ぶ。
が、水上は聞こえないふりをしてそのまま早歩きを続けた。

「水上くんってば!」

女主人公は走って追いかけるが、脚の長さのせいでなかなか距離が縮まらない。

「もう!」

なかなか追いつけないので、女主人公はグラスホッパーを起動して水上のもとに跳んだ。
が、距離感を間違えたため、水上の背中に思い切りぶつかった。

「うお!」
「キャッ!」

なんとか踏ん張った水上は、後を向く。

「何しとんねん!危ないやろ!私的にトリガー使うんはあかんやろ!」
「だ、だって水上くんが全然止まってくれないんだもん!追いつけないし!」
「そりゃあそうやろな。脚の長さがちゃうんやから」

そう言うと、水上は女主人公に「離してくれへん?」と言う。

「…逃げない?」

ぶつかったタイミングで、女主人公は水上の腰に抱きついていた。

「逃げへん。こんなん犬飼に見られたら殺されてまう」
「…わかった」

女主人公はしぶしぶ水上から離れた。

「ほんで?何の用なん?」
「さっきの!あれは誤解だからね!」
「さっきの?」
「屋上で、あれは三輪くんに引っぱり上げられたところをバランス崩しちゃって、支えてもらっただけなの!」
「さよか。でも別に俺には関係ないやろ」
「わたしにはあるの!水上くんに誤解されたくないから!」

女主人公は自分が大きな声を出していることに気づいていない。

「も…もうちょいちーちゃい声でしゃべろうか」
「昨日から水上くんに誤解されてばっかり!」
「それはすまんかった」
「…もう一回、昨日のやり直したいんだけど」
「…俺とお喋りしたいっちゅー話か?」
「うん…」

女主人公がそう言うと、水上は照れくさそうに頭をかいた。

「…俺でええんやな?」
「…水上くんがいいの…」
「…さよか」

水上は「ほんなら茶でもしばきに行こか」と女主人公を誘った。

「うん!」



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