「あ?なんだそりゃ」
「なんでも、今日はB組の授業が1時間早く終わるみたいだ」
「そうなんや?」
「カゲは女主人公から連絡きてないのか?」
「…きてたわ」
影浦は携帯を取り出すと、女主人公から連絡が入っていたことに気づく。
「早く終わんなら、いちいちこっち来ねーで2人でどっか行けよ」
「ほんま俺らのこと好きやなーあの2人」
「この前だってよーわざわざ女主人公のこと迎えに来たと思ったら、3人で帰る羽目になったんだぞ」
「いややなーあの2人と同じ画角に入りとうないわ」
「なんでだ?」
「あの2人が揃うたらそこだけ世界が変わるやん。並んだら俺らも立派なモブやで」
そんな話をしていると、2人のクラスメイトが4人に話しかけてきた。
「また荒船くんの話か?」
「そうだ」
「おまえらも好きだよなー。暇さえあれば、荒船くんの話してないか?」
「隊長だからな、荒船は」
「荒船はオレの師匠だからな!」
「うちの常連だからな」
「…俺は関係ないで?」
そう。
この4人は、何かとクラスで荒船の話をしているので、荒船の名前だけ知っているクラスメイトは多い。
「そんなに言うなら会ってみたいなー!」
「本当だよな!」
「荒船はかっこいいからな!」
「会えばなるぞ、ファンに」
「どんなやねん」
「今日来んだから見れるだろ」
「えーまじ!?噂の荒船くん見たい!」
お昼休みになると、先ほどのクラスメイトが4人の隣に座った。
「荒船くんってどんな人なんだよ」
「抽象的すぎるな、質問が」
「性格とか見た目とか、色々!」
「そうだな、荒船はかっこいいぞ!」
クラスメイトに聞かれて、真っ先に答えたのは村上だった。
「目つきはわりーけどな」
「そこが荒船のかっこよさを引き立ててるんじゃないか!」
「鋼くんの荒船盲信はなんなん?」
「ちゃんと荒船のことをわかってるぞ!」
「他は?」
「頭もいいな、あいつは」
「面倒見もいいしな」
「え、顔もよくて、頭もよくて、面倒見がいいって性格もいいってこと?完璧人間じゃん」
そんな人間がいるのか…とクラスメイトは驚いた。
「弱点とかないの?」
「知りたいか、荒船の弱点を」
「知りたい!」
「なんでやねん」
「水と犬だな」
「教えるんかい」
「水と犬?」
「泳げないからな、荒船は」
「結構マジの弱点だった」
完璧人間に見えて、荒船にも意外とちゃんとした弱点があるんだと安堵するクラスメイト。
「でも、荒船にはそれを覆す最強のカードがある」
「あれか」
「あれって言ったら失礼だろ」
「人様のことをカード言う鋼くんも大概やで」
「あれって?」
「彼女がいる、めちゃくちゃ美人のな」
「な…!?」
穂刈の言葉に、衝撃を受けたクラスメイトは「本当に何でも持ってるんだな…荒船くん…」と言った。
「でも、美人って言うのは穂刈の主観じゃないの?」
「あ?」
「こら、カゲ。本当に美人だよ。多分10人中20人が美人って言う」
「人数増えとるやないか」
「そんなに!?」
「そして、その美人はカゲの幼なじみだ」
「なんてこった」
情報量が多すぎて、キャパオーバー気味のクラスメイト。
「その美人さんも一緒に来るの?」
「来るって言ってた」
「ますます放課後が楽しみになった!」
「見世物じゃねーぞ!」
「影浦モンペかよ!」
そうして昼休みが終わり、あっという間に放課後になった。
全員が帰り支度をしていると、さきほどのクラスメイトが穂刈の机に来る。
「いるか?!」
「ちょっと待て」
クラスメイトは窓から外を見る。
「カゲと鋼くんに連絡来てるんやない?」
「あ?」
「そうだな」
水上にそう聞かれ、二人は携帯を取り出す。
「もう校門のところにいるみたいだな」
「マジで!見たい!」
クラスメイトはもう一度窓から外を見る。
「あれかなー?」
校門のところに人がいるのはわかるが、3Cの教室からだと距離が遠くて顔までは見ることができない。
「てかあれ、六頴館の制服?」
「マジで頭良かったんだな、荒船くん」
「そうだ」
「疑ってたのか?」
「そういうわけじゃないけど…天は二物も三物も与えてんじゃん」
そう言うと、クラスメイトは少し落ち込んだ。
「まあ仕方ないな!荒船だから!」
「なんで鋼が嬉しそうなんだよ…」
「師匠を褒められて喜んでるんやろ」
「とりあえず行くか、下に」
「そうだな」
「俺たちも行きたい!」
4人と2人のクラスメイトは、校門に向かうことにした。
「村上たちが大げさに言ってるだけで、実際会ったらそうでもなかったパターンに賭ける」
「俺も!」
「失礼だな!大げさなんかじゃないぞ」
「鋼は褒めすぎなんだよ」
「わかるけどな、褒めたくなる気持ちは」
あまり期待しすぎないようにしよう、そう思いながら2人は靴を履き替える。
そして、6人で荒船と女主人公が待つ校門に向かうが、その途中、校門から学校を出る生徒たちが校門にいる荒船と女主人公を見ていることに気づく。
「なんか、みんなめっちゃ見てない?」
「な。絶対見てるよな」
「荒船!女主人公!」
「おう」
「鋼くん」
「!!?!??」
「!!」
村上の呼びかけに反応した荒船と女主人公。
二人がこちらを見たことで、クラスメイトは正面から荒船と女主人公の顔を確認した。
「か…顔つよ〜〜〜〜!!」
「女神じゃん!!」
クラスメイトはその場に崩れ落ちた。
「イケメンと爆美女の組み合わせって、どこの少女漫画だよ!」
「荒船くんのことが心底うらやましい!!」
「あ?こいつら誰だよ?」
「声もかっこいいとか!」
「イケボ!!」
2人のテンションに、若干引いている荒船。
「オレたちのクラスメイトだ!」
「クラスメイト?」
「荒船に会いたかったんだ、オレたちが荒船の話をしてるからな」
「すんなよ」
「んで、自分と荒船の違いに絶望してんだよ」
「なんだそれ」
荒船は崩れ落ちている2人に手を差し出すと「いつまで座り込んでるんだよ、汚れるだろ」と言った。
「い…イケメン〜〜〜!!」
そう言いながら、2人は荒船の手を握って立ち上がった。
「荒船くんかっこいいわね」
「そうか?ていうか女主人公、おまえ呼び方戻ってる」
「あらごめん。哲次」
「いい加減慣れろ」
「何気ないやり取りでさえイケメンって何事!?」
「もうやめて!俺たちのライフは0よ!」
そんな2人を見て「愉快なクラスメイトでよかったね」と女主人公が笑いながら言った。
「…尊死」
「ありがとうございます」
女主人公はよくわからないが、とりあえず笑っておくことにした。
「おら、さっさとボーダー行くぞ」
「そうだな」
「2人ももう満足したか?これがオレたちの荒船だ!」
「大満足だよ」
「ああ。俺たちには一生勝てない存在だってことを思い知らされたよ」
「おめーらに勝てるわけねーだろ」
噂の荒船を見ることができて満足した2人は泣きながら帰って行った。
「それじゃあ行くか!」
「ああ」
「…鋼くん」
「ん?」
女主人公は荒船の腕に自分の腕を絡めると、「さっきの、オレたちの荒船だって言ってたけど、私の哲次だからね」と言った。
「〜〜〜!!」
女主人公にそんなことを言われると思わなかった荒船は、顔を赤くする。
「こんな顔の荒船は見たことない。やっぱり女主人公には勝てないな」
「ふふふ」
「急にデレるのやめろ!」
「俺らは何を見せられてるんや…」
「殴りてえ…荒船を」