ゾエくんや荒船くんたちが続々とB級に上がってきた。
ゾエくんがB級に上がったことをきっかけに、私たちは本格的に影浦隊として動き出そうとしていた。
ただ、チームを組むにはオペレーターが必要で、私たちはオペの子に知り合いがいなかったので、加古先輩に相談してみた。
「いいわ。うちのオペレーターに聞いてあげる」
そう言ってもらってほんの数日で、「あなたたちのチームに合いそうな子が見つかったわ」と紹介してくれたのが、仁礼光ちゃんだった。
「アタシが入ってやるよ!」
ヒカリちゃんは、とても明るく元気で可愛い女の子で、私も安心した。
そして、荒船くんは穂刈くんとチームを組んで、犬飼くんはなんと二宮さんの新しいチームに勧誘されて二宮さんと同じチームになることに。
加古先輩も新しくチームを作ることになり、名前の頭文字「K」でチームを決めているようで、雅人くんのことを引き抜こうとしていた。
「ねぇ影浦くんもわたしのチームに入らない?」
「は?ざけんな、入るわけねーだろ」
雅人くんは間髪を入れず断っていたけど。
私たちの学年が一つ上がるころには、仲の良いメンバーはみんなB級になって、それぞれでチームを組んで、B級ランク戦にも参加するようになっていた。
「そういえば、嵐山さんの部隊が広報部隊になったんだって」
ラウンジでご飯を食べていると、犬飼くんがそう言った。
「へー、広報部隊って何やるんだろう?大変そうだなー」
「確か、この前記者会見に出てたろ?」
「ごくろーなこった」
確かに、嵐山さんの容姿ならそれを目当てにボーダーに入ろうと思う子が増えるかも。
それにしても、大変だなぁ嵐山さん。
「苗字ちゃんも広報できそうだよね」
「え?」
少し驚いて犬飼くんのことを凝視してしまった。
「やだなー、そんな見ないでよ。でも嵐山さんと並んだら、美男美女で広報活動の効果も上がりそうじゃない?」
自分の顔を鏡で見てから言ってほしい。
犬飼くんが広報をやっても、多分入る人は多いと思う、そんな気持ちを込めて、犬飼くんを見ていると
「女主人公がんなことやるわけねーだろ」
「えー、そうかな?向いてると思うけどな」
「向いてる向いてないっつー問題じゃねーんだよ」
「はいはい。カゲは苗字ちゃんのナイトかな?」
やれやれ、といったような様子で犬飼くんは雅人くんを見ていた。
「犬飼、てめーうざってー感情刺してくんな」
「ごめんごめん。カゲも大変だねー」
「思ってもねーこと言ってんじゃねー!うぜぇ!」
喧嘩になりそうなピリピリムードになってしまった。
「もう、雅人くんやめて。犬飼くんも、あんまり雅人くんのこと煽らないでね」
「ごめんね苗字ちゃん」
ガタンッ
と音を立てながら雅人くんが席を立った。
「帰る」
「おい、カゲ」
「雅人くん!」
雅人くんの後を追おうと席を立とうとしたが、それを制したのは荒船くんだった。
「荒船くん?」
「俺が行く」
「え?」
そう言うと、荒船くんは雅人くんの後を追っていった。
「なんで?」
「さーな。ただ荒船にも思うところがあったんだろ」
「荒船くんなら何とかしてくれるよ、女主人公ちゃんも一緒に待ってよ」
「うん…大丈夫かな」
「犬飼のせいだし、気にすんな」
「えー酷いなー。おれは別にカゲを怒らせようとしたわけじゃないのに」
「その態度が気にいらねーってことなんじゃねーの?」
「犬飼くんもごめんね」
「苗字ちゃんが謝ることじゃないから気にしないで」
「おい!待てよカゲ!」
「あ?なんだよ」
ようやく影浦に追いついた荒船は、影浦の肩をつかんだ。
「何やってんだよ」
「犬飼のクソがムカつくんだよ。顔と感情が一致しねーのが気味わりぃ」
「だからって、あんなあからさまに態度に出すなよ。女主人公が困ってただろ」
「ほっとけよ」
そう言って、影浦は荒船の手を振りほどくと、歩き出そうとした。
「女主人公の気持ちも少しは考えろよ」
「なんだよ荒船。ずいぶん女主人公のこと気に入ってんのな」
「そういうことを言ってるんじゃねー。それに俺はおまえのことしか眼中にない女はお断りだ」
「は!あいつは俺に対して恋愛感情なんかねーから安心して好きになれよ」
「おまえな…」
影浦のセリフに荒船は心底あきれていた。
「好きとか嫌いとか、そういう次元じゃないだろおまえらは」
そう。
影浦と女主人公にとって、お互いは一緒にいて当たり前の存在。
好き嫌いの次元ではない。
そのことに影浦が気づいていないわけがなかった。
ただ影浦は、自分のサイドエフェクトのせいで女主人公が自分に気を遣って、やりたいこと、行きたいところ、たくさんの我慢をさせていることに、申し訳ない気持ちがあった。
女主人公は自分の感情を隠すのが上手いので、影浦には本当の女主人公の気持ちは分からなかった。
「(なんであんなに感情を隠すのが上手くなりやがったんだ…)」
それも、女主人公が影浦の負担にならないように努力した結果なのだが、影浦はそれに気づいていない。
「カゲだって、女主人公のことが大切なんだろ?」
「当たり前だろ」
「ならあんまり心配させるようなことするなよ」
「…わかってるよ」
「犬飼とも仲良くやれよ」
「無理だな」
「おい」
今更ラウンジに戻るつもりのない二人は、とりあえずかげうらに行くことにした。
「女主人公に連絡しておけよ」
「わかってるよ!おめーは俺のトーチャンか!」
「こんな可愛げのないでけーガキはお断りだ!」