03

「…女主人公?」
「あ、すみくん〜!」

結局、タイミングが合わなくて家に帰るまで女主人公に会えなかったけど、帰ってから女主人公の部屋を覗いたら元気そうだった。
むしろ、顔の表情が緩みっぱなしでにやけている。
そんな顔もかわいいんだけど、いったいどうしたんだろう。

「あの後ね、水上くんとお話できたよ!リベンジ!」
「そうなんだ。それは良かった!」

誤解が解けたようで良かった。

「水上くんと何話したの?」
「んー?それは秘密!」
「なんでよ」
「でも思ってた通り、水上くんは優しくて素敵な人だったよ」
「…優しい?…素敵?」

そんな形容詞は水上くんには似合わない。
どちらかと言うと、何を考えているのかわからないから、腹黒いとか参謀って形容詞の方が合ってるんじゃないかな。

「今度生駒隊の作戦室に遊びに行くことになったの!」
「おれも行く!」
「え?すみくんも行きたいの?」
「うん!」
「わたしはいいけど、ちゃんと聞いておいてね」
「わかってるよ」







「なんでおまえもおんねん」
「やっほー!」
「こんにちは!」

今日は、女主人公と一緒に生駒隊の作戦室に遊びに来た。
多分、事前に聞いておくとダメと言われる可能性が高かったから、水上くんには何も言わずに来たけど、やっぱり聞かないで正解だったな。

「え、すみくん聞いてなったの?」
「ごめーん!忘れてた」
「もう」

プンプンと、効果音が付きそうな顔で怒っているけど、そんな顔でもかわいいのが女主人公。

「なんの用や」
「ひどーい!水上くん女主人公にそんなこと言うの!?」
「どう考えてもおまえに言ってるってわかるやろ犬飼」
「女主人公が心配だからついてきたの!」
「いらんなー」

そう言いながらもおれも中に通してくれる水上くんは、優しいな。
あれ、たしかに優しいって思っちゃった。


「あ、女主人公先輩や〜こんにちは」
「隠岐くん!こんにちは!」
「女主人公先輩だー!こんにちはっす!」
「海くん、こんにちは〜!」

中に入ると、隠岐くんと海くんがいた。

「あれ、イコさんは?」
「ソロランク戦」
「好きだねー」

作戦室の扉が開いて、細井ちゃんが入って来た。

「わ!なんや、めっちゃキラキラしとる二人がおる!」
「真織ちゃーん!」
「女主人公先輩!」
「生駒隊のみんなは女主人公のことが好きだねー」
「そら、女主人公先輩のことが嫌いな人はおらんと思いますよー」
「当たり前でしょ!」
「ホンマめんどくさいやっちゃな」

女主人公はかわいくてアイドルみたいな女の子なんだから、みんな大好きに決まってる!

「それで、今日はなんで生駒隊の作戦室?」
「水上くんに将棋を教えてもらおうと思って!」
「…え?本気?」
「俺は止めたで」
「ちょっと女主人公ちゃん?さすがに女主人公の頭で将棋は難しいんじゃないかな?」
「すみくんバカにしてる?バカにするならもっとストレートにしてくれる?」
「バカにしてないよ!してないけど…」
「しとるやろ」
「してますね!」
「そこ、外野は黙ってて!」

女主人公はおれよりも、すこーし頭が良くないけど、基礎がわかれば応用はできる。
けど、将棋とかチェスとか、頭を使って自分で考える系のゲームは本当に苦手だ。
頭を使って解決する、というよりも武力行使。
この見た目で、パワーでなんとかしていくスタイルだから(ゲームの話)将棋は無理なんじゃないかな。

「やってみないとわからないじゃない。それに水上くんが教えてくれるんだから、やる気あるよ!」
「そういう問題なの!?」

「女主人公先輩、水上先輩のこと好きですね〜」
「ええ〜!隠岐くん!やめてよ恥ずかしい〜!」

隠岐くんの言葉に、女主人公は両手で頬をおさえて赤くなった顔を隠した。
なにそれかわいいんだけど!

「女主人公先輩かわいすぎやろ」
「細井ちゃん、同感」

あんな姿を見たら、水上くんだって女主人公のこと好きになっちゃうでしょ!
そう思って水上くんを見ると、なんとも表現しにくい表情をしていた。

「…なにその顔」
「…別に」
「どういう表情なの、それ」
「…ほっとけ」

女主人公は細井ちゃんと隠岐くんと海くんと騒いでいるからこちらを気にしていない。

「ほんならやろか?」
「うん!水上くん、お願いします!」

水上くんは奥から将棋のセットを持ってきて、机に置いた。
女主人公は水上くんの隣に座ったんだけど、なんか距離が近くない?

「…犬飼ちゃーん…」
「ん?」
「近いやろ。パーソナルスペース、バグッとんな」
「…あ!ごめん!!」

女主人公は顔を赤くして、すぐに水上くんから離れた。

「…ねえ、水上くんって本当に人間?というか男?」
「はあ?失礼なやつやな」
「女主人公がこんなにかわいい顔してて、こんなに近くにいるのにその反応って何!?」
「うっさいわホンマに!」

水上くんって、本当に女主人公に興味がないのかな。
こんなにかわいいかわいい女主人公に、好意を示されてるのになんでって感じ!

「…犬飼先輩」
「ん?」
「多分、あれ、水上先輩は照れてるんやと思います」

隠岐くんがこそっと教えてくれた。

「そうなの?」
「はい。あんななんでもない顔してますけど、ホンマに嫌やったらそもそもあのスペースに入れたり、図書室で助けたりしませんから」
「…それもそうだね」

水上くんが、あの日、女主人公を図書室で助けたのは意外だった。
彼ならスルーか、誰か別の人を呼びそうなイメージだもん。
水上くんもなんだかんだ言って、女主人公のことが気になってたんじゃないのかなって思ってたけど、やっぱりそうなのかな。

「隠岐くーん、適当なこと言ったら殴るで?」
「すんませんー」


地獄耳の水上くんは、おれたちの会話が聞こえてたみたいで、隠岐くんに物騒なことを言っていた。
水上くんの方を見ると、女主人公が水上くんから将棋のルールの説明をしてもらってるみたいだけど、理解してなさそう。

「さっぱりわかんないっす!」
「…わ…わたしも…」
「ウチもや…こんなんがおもろいって意味わからんなー」
「ほんとに」
「人がせっかく親切に教えてやっとるのに」

女主人公は水上くんのことを見ると「もう一回!最初からお願いします!」と言った。

「別に無理せんでもええんやで?他のことしようや」
「ううん!水上くんの好きなものを、わたしもちゃんと理解したいの!」
「〜っ」
「水上先輩、顔赤いっす!」
「海くんちょっと黙ろうか」
「了解っす!」
「照れてる水上先輩レアっすね」
「隠岐ー…」

なんだ。
水上くんだって、結構女主人公のことを意識してるんじゃん。
おれがニヤニヤした顔で水上くんを見ていたら「こっち見んな」と言われた。

「ひどいなー!女主人公!本当に水上くんでいいの!?」
「水上くんかっこいいもん」

女主人公がそう言うと、水上くんは隠岐くんの背中を叩いた。

「いった!水上先輩ひどいやないですかー。照れてるからって、おれのこと叩くんわ違いますやろ」
「うっさいわボケ」
「そんなんやと女主人公先輩に嫌われますよー」
「いったん黙ろうか?」

そんな二人のやり取りを見て、女主人公は「漫才みたい!」と目をキラキラさせていた。
そういう感想になるのが、さすが女主人公だ。



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