絵馬ユズルの独白

特にここのチームに入りたい、とか、そういう気持ちがあったわけじゃないから、最初はどこでもよかった。
影浦隊に入ったのは、ヒカリにしつこいくらい勧誘されたのがきっかけだけど、今は入って良かったなって本当に思ってる。
多分、カゲさんの人を惹きつけるカリスマ性とか、ゾエさんのおおらかな雰囲気とか、ヒカリの明るい性格とか、影浦隊のメンバーのそういうところがオレには合ってるんだろうなって思う。

そして、女主人公さんのチームをまとめる力と、人を包み込むあったかい雰囲気が大好きだ。







「雅人くん」
「ん?」
「これ、次のランク戦のことなんだけど」

カゲさんは、戦闘能力は高いけど、思ってることを言語化したり、作戦を立てたりといったような頭を使うことは苦手。
それは、ゾエさんもヒカリもそうだから、実際に影浦隊の作戦のキーマンは女主人公さん。
カゲさんも、女主人公さんの言うことならきちんと聞く。

「せっかくユズルくんもいるんだし、もっと色々できそうなんだよね」
「いいんじゃねえの?女主人公ができるって言ったらできんだろ」
「うん」

女主人公さんはカゲさんに返事をすると、オレの方を見た。

「ユズルくん、影浦隊に入ってくれてありがとう」
「どういたしまして」

オレが影浦隊に入った時、女主人公さんはオレにそう言った。
そんな感謝されるようなことでもないけど、女主人公さんに感謝されるのは、正直嬉しい。



女主人公さんとカゲさんは幼なじみで、生まれる前からお隣さん。
それに二人は恋人同士ってこともあって、二人には時々、邪魔ができないような二人だけの世界に入っている時がある。
これが想い合うってことなんだろうな。
カゲさんも女主人公さんには素直だし、女主人公さんもカゲさんには心を許しているように見える。
そんな二人の雰囲気が、正直うらやましいなって思うこともあったりする。





「ユズルくん、こんにちは」
「女主人公さん」
「あれ、雅人くんたちはまだ来てない?」
「うん。多分オレたちが最初」

作戦室でゴロゴロしてると、女主人公さんが入って来た。

「この時期だから、テストかな?」
「カゲさんたちの成績大丈夫?」
「うーん…ダメかもしれない」

そう言って女主人公さんは苦笑した。

「でも、ボーダーには推薦枠もあるしね!多分大丈夫かな…?」
「心配…」
「まあまあ、なんとかなるって」

女主人公さんはカバンを開けると、「はい!いつも頑張ってるユズルくんに、特別にあげるね」とチョコレートをくれた。

「高そう」
「実際高いみたい」
「貰い物?」
「先生の手伝いしたらもらっちゃった」

女主人公さんの持っていたチョコレートの箱は、オレでも見たことがある高級チョコだった。

「もらっていいの?」
「うん。数が少ないから他のみんなには内緒ね。一緒に食べよう」

そう言うと、女主人公さんは給湯室に向かって「紅茶でも飲む?」と聞いてきた。

「飲む」
「じゃあ入れるからちょっと待っててね」


こんな風に、女主人公さんと二人になるのは久しぶりかもしれない。
やっぱりオレは、女主人公さんの出すこの雰囲気が好きだな。

「…この前、出水先輩が女主人公さんのこと姉さんって言ってたけど…」
「ああ、あれ。一人っ子なのに弟ができちゃったよ」
「…なんとなくわかる。オレも…家族は父さんしかいないけど、もし姉さんがいたら女主人公さんみたいだったかなって思う…」

突然オレがこんなことを言ったので、女主人公さんは少し驚いた顔をした。
けど、すぐにいつもの顔に戻って「ふふふ、光栄だよ」と言って、オレの頭を撫でた。

「ユズルくんは、勉強もボーダーも頑張っててえらいね」
「…なんか、姉さんって言うより母さんみたいだね」
「そうかな?」

オレと女主人公さんは4つしか違わないのに、4つって大きいんだなって思った。

「ユズルくんは、まだまだ誰かに頼ったり、弱音を言ったりしていいんだからね」
「…うん」
「私だけじゃなくて、雅人くんもゾエくんも、ヒカリちゃんもいる。それに、当真くんとかもちろん雨取さんもね」
「!!」
「ユズルくんの可愛い恋を応援してるね」
「べ…別にそんなんじゃないよ」
「ふふふ」

チョコを食べて、紅茶を飲んで、女主人公さんとお喋りをしているとやっとカゲさんたちが作戦室にやって来た。


「クソ!!だりー」
「お疲れ様」
「女主人公!ユズル!」
「どうしたの?」
「テストの補習」
「補習だったのね」
「ゾエさんは補習じゃないのにカゲに巻き込まれたよー」

思っていた通り、テスト関係のことだったんだ。
高校生って大変だな。

「何か飲む?」
「水」
「はいはい」

女主人公さんは水を取りに行った。

「カゲさん」
「あ?」
「あの時…オレを影浦隊に入れてくれてありがとう」
「なんだ急に?」
「なんとなく、言いたくなっただけ」
「変なこと考えてんじゃねーだろうな!」

そう言うと、カゲさんはオレの頭を乱暴に撫でた。
同じ撫でるでも、カゲさんと女主人公さんじゃあ全然違う。

「オレ、影浦隊に入れて良かったよ」
「むず痒いこと言ってんな!ゾエ!その感情やめろ!!」
「ユズルがデレてる!」



影浦隊は、なんとなく一つの家族みたいだ。
カゲさんがお父さんで、女主人公さんがお母さん。
ゾエさんがお兄ちゃんで、ヒカリがお姉ちゃん。
オレは、このチームを守っていきたい。

「そういえばユズル!おめーもうすぐ誕生日だろ!」
「そうだね」
「何欲しいか考えとけ」
「今年は何作ろうかな」
「女主人公!アタシも食べたい!」
「ちょっと、女主人公さんはオレのために作ってくれるって言ってるんだけど」
「堅いこと言うなよー!」

本当は、物なんていらない。
チームのみんながいてくれるだけで、オレは結構幸せなんだよね。
でも、そう言うとみんなは遠慮するなって言うから欲しい物を言うけど。

「女主人公さん」
「ん?」
「今年はカップケーキが食べたい。あと、今度クリームシチュー作って」
「もちろん」

オレがそう言うと、女主人公さんはふんわりと笑ってオレの頭を撫でた。
本当に、お母さんみたいだな。

オレは、影浦隊のみんなが大好きだ。



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