71

村上10番隊は、戦闘シミュの練習を始めた。

「画面にユニットが出たね」
「ミニサイズのキャラがかわいいな」
「視界の外にいる敵は見えないです。けど、右上のレーダーには映ってるはず」
「本当だ」

画面の右上には、レーダーという画面があり、そこには敵がどの位置にいるかが映っている。

「オレたちのチームにはスナイパーがいないけど、バッグワームを着てると映らなくなるのか?」
「試してみようか」

女主人公はそう言うと、バックワームを起動した。

「消えたな」
「だな」
「ユニットから出ている扇形が、先ほど説明した”射程範囲”です。くるくる動かせるので、攻撃だけじゃなくて防御もその範囲の中になる感じです」
「なるほど」
「バッグワームにも扇形が付いてるね?」
「シールドや防御用トリガー以外でも、攻撃を”避けるかどうか”の判定はあるみたいです」
「ということは、どんなトリガーでも扇形以外の方向から攻撃されると回避も防御もできないってことだな」

5人は、試しにユニットを動かしてみることにした。

「移動にも種類があるんだよね」
「そうだな」

村上・蔵内チーム、堤・女主人公チームで分かれて対戦をする。

「設定終わりました?行動開始してください」

氷見がそう言うと、画面の中のユニットが動き出した。

「女主人公発見」
「あらら」

村上のユニットは、追跡移動で女主人公を自動追跡する。
女主人公のユニットは逃げながら、堤の待つ十字路まで誘導し、堤がガンナートリガーで攻撃をする。
が、村上のレイガストで防御している間に堤のユニットが蔵内に撃ち落とされた。

「やられたな!」

ここでターンが終了する。

「扇形をよけて狙おうとすると位置が制限されるから、その分わかりやすいな」
「たしかに」
「”追跡移動”は便利だけど、使いどころが大事になるな」
「攻撃や防御をするたびに、”待ち時間”があるから、トリオンで優ってる強い相手も足止めできそうだな」
「だね」
「これ、最初に動きを設定しても、途中で戦闘が起こったら、そこで行動力を使うから後半に設定した動きは行動力不足で実行されないんだね」
「やっぱり行動力が多い人が有利だな」
「なるべくやりたいことをターン前半に設定したほうがいいかもな」
「了解」

ある程度操作に慣れた女主人公たちは、共通課題に戻ることにした。

「女主人公、大丈夫か?」
「うん。ルールは把握できたから。正直、やってみないとわからない感じはあるけどね。操作に慣れればなんとかなりそう」
「だな。お、ちょうど今日の対戦順が届いた」

村上は上からのメールを開く。

「最初は古寺6番隊だ。その後は諏訪7番隊、水上9番隊…8試合目は休みだな」
「楽しみだな」
「とりあえず、今日は配点がそこまで大きくないし、慣れることを意識してくれ」
「わかった」

共通課題を進めていると、あっという間に戦闘シミュレーション演習の始まる15時になった。







1試合目の相手は古寺6番隊。
初戦を白星でスタートした村上10番隊は、次の2試合目、諏訪7番隊との試合もギリギリで勝利。
村上と女主人公の防御力の高さを活かしたマップ中央での削り合いをメインにしていて、蔵内と堤が後ろから援護する形で動いていた。

「蔵内くんの”射撃連携”は強いね」
「村上のレイガストも防御に使えるな」
「削り合いなら、負けはなさそうだ」

2試合を振り返って、「そうだな。このままこの作戦でいこう」と村上は言う。

順調に勝ち星を増やしていく中、6試合目が終わったタイミングで、上から”特別課題”が届く。

「このタイミングで”特別課題”が届いたな」
「え?」
「試合まであと数分なんだけどな」
「共有に入れたから開いてくれ」

全員で特別課題の内容を確認する。

特別課題2の内容は、B級ランク戦の各試合が、なぜ三つ巴・四つ巴の形式で実施されているのか、その理由を考え、意見をまとめて提出しなさい、という内容だった。

「6時30分までってことは…」
「戦闘シミュが終わるまでは待ってくれないってことだな」
「どうする?今回は、全員でって書いていないから、誰か一人が担当するか」

そんな話をしていると、女主人公は「特別課題…私がやってもいいかな…戦闘シミュ、私のせいで足引っ張ってるし…」と言った。

「そうか?そんなことないと思うけどな」
「苗字先輩の防御力とカバーの高さは戦術的に利いてます!」
「そう…?でも、選択ミスも多いし、みんながカバーしてくれてるからなんとかなってる気がする…共通課題も私だけ遅れてるし…」
「共通課題は、最終的には正解率が重要だから、自分のペースでやるのが一番なんじゃないか?」
「苗字はタイピングが遅いってだけで、正解率は蔵内の次だろ」
「そんなことないと思いますよー…」
「どうする?隊長」

氷見は村上に聞く。

「そうだな…」

村上は、少しだけ考えると「うちのチームは8試合目が休みだから、そこで全員で一気にやればいいんじゃないか?」と言った。

「ふむ…?」
「それだと時間が間に合わないんじゃないかしら?」
「オレはそれでいいと思う」
「全員でやればすぐ片付くだろ」
「それはなんだか申し訳ない…」
「まあ、時間オーバーしたらその時また考えよう」
「(うーむ…もしかしたらこのチーム…”みんなが気を遣える”ってとこが弱点になるかも…?)」



そうして村上10番隊は、次の試合を終えると、急いで特別課題に取り組んだ。

「そしたら急いで考えていくか」
「そうだね。三つ巴・四つ巴なのは…1対1の勝負になると編成とか戦術が決まっちゃう気がするんだよね」
「そうですね。決まった型に落ち着いてしまって、戦術や、それこそトリガーの進歩が鈍化しそうです」
「”安定性”を求めるならいいと思うけど、”柔軟性”を求めてるのが、運営なのかなって思うから、色々なことが試せる三つ巴・四つ巴の戦いが良いんだろうな」
「1対1だと戦力差もつくからな。圧倒的に3人チームよりも4人チームの方が勝ちやすい」
「人数の差がそのまま出るからな」
「1対1だと状況がそこまで変わることは少ないから、イレギュラーが出やすくて”こういう状況ではこう動く”って、臨機応変な対応ができるようになりそうだな」
「視野が広がりそうだよな。目の前だけ見てたら、後ろからやられるってこともあるし」
「そう考えると、ランク戦ってよく考えられたシステムだよな」

そこまで話していると、あっという間に提出の締め切り時間が迫っていた。

「とりあえず、今出た話をまとめて送る」
「了解」


特別課題を提出した後は残りの戦闘シミュをやり、19時になったので閉鎖環境試験の2日目が終了した。


「今日の順位が出たぞ」

村上はそう言うと、画面を見せた。

「3位キープだね」
「ああ」
「2位の古寺隊ともそんなにポイントが離れてるわけじゃないからな」
「逆に言うと、10位までそんなにポイントが離れているわけじゃないので、気を引き締めていきましょう」
「だな」

個人成績表を見て、「特別課題、昨日より下がっちゃったね…」と女主人公が言う。

「突貫でやったにしては充分だな」
「うん。及第点は取ってると思う」
「それだといいんだけど…」

そこに、氷見は挙手をした。

「…ちょっといいかな。課題の結果に不満があるわけじゃないんだけど、明日、同じような特別課題が来た場合どうするか、今決めておいたほうがよくない?」
「それはそうだな」
「今日みたいに”休み”のタイミングが嚙み合うとは限らないか…」
「たしかに…」

村上がそう返事をすると、氷見は内部通話を繋げた。

『村上先輩。”氷見の意見は?”…って訊いてください』

「…氷見の意見は?」
「私は、特別課題は蔵内先輩か苗字先輩がやるべきだと思うけど、諸々考えると蔵内先輩が一番高得点が見込めるからいいと思う」
「たしかに」
「蔵内先輩のユニットは苗字先輩に預ければいいと思います」
「私に?」
「蔵内先輩はシューターだから、苗字先輩は自分自身と似た感じで動かせるはず。苗字先輩のユニットをアタッカートリガーにして、蔵内先輩と一緒に動かしたりもできると思うので、動かしやすいんじゃないかな」
「…!」

「なるほど…」
『大丈夫そうなら、”それで行こう”って言ってください』
「ふっ…よし、じゃあ明日はそれで行こう。女主人公もそれでいいか?」
「うん。元シューターとして、蔵内くんを活躍させられるよう頑張るね」
「一人だと荷が重いって感じたら、オレに何体か渡してくれればいいからな」
「ありがとう」

『悪い、助かった』
『いえいえ』
『でも、もう大丈夫だ。学習させてもらったよ』

話がひと段落したので、「そしたら夕飯作るね」と女主人公は席を立つ。

「今日はオレが手伝うな」
「堤さん、ありがとうございます」



>> dream top <<