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夕飯を食べ終わった後、私は鋼くんに廊下に呼ばれた。

「女主人公、本当に大丈夫か?」
「何が?」
「蔵内のユニットを動かすって話…負担にならないか?」
「大丈夫だよ。さっきも言ったけど、結構慣れてきたし、ただ動かす分には問題ないよ」
「そうか。それならいいけど、無理するなよ」
「うん。鋼くん、さっき氷見さんと内部通話してた?」
「…よくわかったな」
「なんとなく、鋼くんの話のふり方が鋼くんらしくないって言うか、変な間があったから。最後笑ってたし」

私がそう聞くと、鋼くんは氷見さんに言われたことを教えてくれた。

「氷見さんらしいね」
「ああ。ちゃんと学習したから、もう大丈夫だ」
「隊長だからって、あんまり気負いすぎないでね」
「わかってる」







運営本部デスク。

2日目、特別課題提出締め切りの10分前から、運営本部のメンバーは集まっていた。

「さて…特別課題の回答が出そろったようです。時間もないので、さっそく採点を始めましょう」
「了解〜」

運営本部デスクには、城戸、忍田、林藤、鬼怒田、根付、そして迅がいる。

「まず、この課題の裏の意図でもある”役割分担をどう処理した”という部分についてですが、”分担課題を共有してから分担が決まるまで”の時間が早かった順に並べたリストです」
「目に見えてグダついたのは、下の3・4チームくらいか…どう揉めて、どう解決するかを見たいというのに、そつがないというか可愛げがないというか…」
「いやあ頼もしいじゃないですか」
「裏の狙いに勘づいてるっぽい人も何人かいたね」

裏の狙いに気づいていたであろう木虎には、A級からもプラスの評価がついていた。

「一方で揉めたチームの隊長には、減点評価もちらほらある」

影浦と犬飼の口論を止められなかった柿崎や、話し合いの場で黙り込んでしまった若村が減点されていた。

「こっちの2人は評価が割れとるな」
「ふむふむ」

そう言って鬼怒田と迅が見たのは、村上と北添の評価だった。
村上には、
−1冬島”どう考えても蔵内にやらせる一択でしょうよ”
−1三輪”決めあぐねて先送りにしたように見える”
という減点評価をされた。
一方で、
+1烏丸”チームメイトの頭の良さを計算に入れてるだろうから、問題ないと思う”
+1林藤”あの場で誰を指名しても微妙な空気になるから、あれがベター”
というプラスの評価をされた。

「…では、本題の特別課題の解答を見ていこう」
「採点のポイントは4つです。これに照らし合わせていくと…」

根付たちは、解答を見て採点を始めた。

「全員で取り組んだ村上10番隊も、採点ポイントの2までしか触れられていないですが、短時間でよくまとめたと言うべきでしょう」
「他のチームだともっと大ケガしてたかもね」

そんな話をしながら、本部の採点は終わった。





***

柿崎3番隊。

「太一、おめーもうちょっとうまそうに食えよ」

落ち込んでいる太一に藤丸は声をかける。

「あたしのメシはそんなまずいかぁ?」
「イエ…ウマイッスヨ…おれなんかにはモッタイナイッス…」

そんな太一を見て、柿崎は「…悪かったよ太一。明日またがんばろうぜ、な?」と声をかけた。
「ハイ…大丈夫ッスヨぜんぜん…」

そう言いながらパスタをもしゃもしゃ食べる太一は、まったく大丈夫そうには見えなかった。

「ザキさんのせいじゃねーよ。こいつのせいだろ」

影浦はそう言うと、犬飼を指さす。

「おれの?どうして?」
「おめーが特別課題ん時…太一のやる気なくすよーなこと言うからだろーが」

影浦は犬飼の物言いに眉をひそめる。

「おめーがつまんねー口出しっすから、太一がヒネちまったんじゃねーか」
「おれは別に太一くんを悪く言ったつもりはないよ。チームのための意見を言っただけで」

そんな影浦に対して、犬飼は飄々とした態度で答える。

「なんでも感情論で進めるわけにはいかないでしょ?苗字ちゃんたちはそれでも許してくれたのかもしれないけど、ここは影浦隊じゃないんだよ」
「あ?んだてめぇ…」
「おいこらケンカすんなっつってんだろうが!」

その後、柿崎は犬飼を別室に呼び、影浦は仕事部屋で藤丸に説教をされていた。

「おめーな、すぐ噛みつくのやめろ」
「おれじゃねーよ!あいつがいちいちムカつく言い方してくっから!」
「少しは堪えろ!」

藤丸は影浦の頭を殴る。

「おめーが変わろうとしてんのは、なんとなく見てりゃわかる。ちゃんとやれよ!」
「わーってるよ!」
「苗字に会えなくてイラつくのはわかっけど、あんまイライラすんなよ!」
「はあ!?うっせーな!!」

閉鎖環境試験2日目、影浦は女主人公に会えないことでかなりのストレスが溜まっていたが、それは藤丸から見てもバレバレであった。

「恋人に会えねーでイラつくなんて、かわいいとこあんじゃねーか」
「そんなんじゃねーよ!」
「照れんな照れんな!」

藤丸はそう言うと、影浦の頭を乱暴に撫でる。

「苗字にいいとこ見せてーなら、あんま犬飼の挑発にのんなよ!」
「うっせーな!」

影浦のことをからかっていると、シャワーから出た太一が仕事部屋に戻って来た。

「カゲさん…風呂どうぞ…」
「お…おう」

そう言うと、影浦はシャワー室に向かった。



水上9番隊。

荒船がシャワーから出ると、水上と今が廊下にいた。

「お?何の会議だ?」
「おこられてんねん」

水上は笑いながらそう答えた。

「なんかやらかしたのか?」
「戦術的理由でちょっとな」
「水上くんがこそこそ何かやってるのは、なんとなく気付いてたけど…今回みたいなことが続くとフォローできないわよ。何隠してるのか、せめて私たちには言えないの?」

今がそう言うと、「そらムリやなぁ。あとでバレたときチームが割れるやん?」と水上は言う。

「こういう場合、うそつきは1人でええねん」
「…荒船くんの意見は?」
「俺の意見か?」

今に聞かれた荒船は「好きにやりゃいいだろ。水上が隊長だ」とハッキリ言った。

「水上のやり方がハマってるから点取れてんだろうし、俺らの助けが必要になりゃそう言うだろ」

荒船の言葉に、うんうんとうなずく水上を見て、あきれた様子の今だった。

「私も別に成果に文句はないけど…嘘で信頼関係が壊れるのを心配してるの。照屋ちゃんや樫尾くんは、生駒隊のメンバーとか苗字さんとは違うのよ」
「なんでそこで女主人公の名前が出んだ?」
「苗字さんなら水上くんが何をやっても驚かないでしょ」
「まあ、たしかにそうだな」
「せっかく臨時部隊でうまくいってるのに、特に照屋ちゃんがかわいそうよ。あの子、噓つかれてるって知ったら、きっと怒るわよ」
「まあ、もしそうなったら俺と今でリーダー役を引き継げばいい」
「こわあ〜チーム乗っ取りやん」
「…そうならないように気をつけてよね」

水上は、廊下から照屋と樫尾の様子をうかがった。
水上の意図とは違うが、樫尾が照屋のフォローをして励ます姿を見て「物分かりよくて助かるなあ」と言った。

「ほんといい子たちなのよね…」
「あんまやりすぎんなよ」
「ほどほどにするわ」
「あまりにもひどいようだったら苗字さんに言うからね」
「なんでやねん」
「水上くん、苗字さんの言うことなら聞きそうだからね」
「あいつ、怒ると怖いしな」
「ホンマかいな。おこられんようにせな」

そう言うと、三人は仕事部屋に戻った。



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