「…イコさんめっちゃ歌っとんな」
「歌ってますね」
「もうすぐクリスマスですもんね!」
「なんかご機嫌やな」
ここは生駒隊の作戦室。
もうすぐクリスマスということで、隊長である生駒はいつもの無表情でクリスマスソングを歌っている。
「もうすぐクリスマスやな」
「そうですね」
「今年はどないする?ケーキとシャンパンでも買うてきて、みんなでクリスマスパーティーでもしよか?」
「俺たち未成年なんで飲めませんね」
「せやった」
生駒のわかりにくいボケに的確にツッコミを入れる水上。
「イコさん、めっちゃご機嫌ですね。何かあるんですか?」
「よう聞いてくれた。イコさんな、女の子からクリスマスの日に誘われてんねん」
「そうなんですか?」
「イコさん誘うって…勇者やな」
「マリオちゃん、聞こえてるで!」
嬉しそうな生駒に、「誰に誘われてるんですか?」と隠岐が聞く。
「…食堂のおばちゃん…。クリスマスの新メニューにチキン使った料理出すから、食べに来てやって…」
「…イコさん…」
「それは誘いって言わないっすね!」
「海!黙っとれ!」
生駒は落ち込んだ様子を見せる。
「まあまあイコさん。今年も生駒隊のメンバーでわいわいしましょう」
「…隠岐はどうせ裏切るんやろ。モテるからな」
「モテませんよー。実際、誘いなんてありませんから」
「ホンマかいな」
「隠岐先輩は誘いを断ってるだけっすよね!」
「死刑」
「ひどいやないですかー。それに、今年で言うたらおれよりも水上先輩やと思うんですけど」
「…なんでやねん」
水上は、突然話をふられて嫌な予感がした。
「わからんふりはあかんですよ。女主人公先輩がおるやないですか」
「え!女主人公先輩って、ホンマに水上先輩のこと好きなん!?」
恋愛の話が好きな細井が隠岐に聞くと、隠岐の代わりに水上が答える。
「うっさいわ」
「これは本当のことを言われた時の反応っすね!」
「海ー」
そんな話を聞いていた生駒は「水上…」と、水上を呼ぶ。
「なんですか…」
「…おまえはこっち側やと思っとったのに…裏切者や…」
「裏切ってなんかいませんよ…」
「あんなかわいいかわいい犬飼ちゃんと付き合ってるやつは裏切者や」
「…付き合ってませんて…」
水上のその言葉を聞いて、隠岐は驚いた。
「え?水上先輩、女主人公先輩と付き合ってないんですか?」
「…そうやで」
「あんなに好意を示されてるのに、なんでですか?」
「犬飼ちゃんやと満足できへんのか?」
「そんな話してませんね」
生駒の言葉をハッキリ否定する水上。
「じゃあなんでなんですか?女主人公先輩のこと好きやないんですか?」
「別に好きとか嫌いとか、そういう問題やないで」
「そういう問題ですよー」
「…別になんでもええやろ。そもそも、俺は犬飼ちゃんに好きやとか付き合ってほしいとか言われてないねん」
「…え?」
そう言うと、水上は生駒隊の作戦室から逃げた。
作戦室から逃げた水上は、ラウンジに向かうことにした。
「よお」
「水上くん!」
「…ども」
ラウンジに向かう途中で、防衛任務帰りの諏訪隊と遭遇した水上。
「諏訪さん!今日はここで解散ですか?」
「解散してぇんだろ」
「はい!」
「たく!いい笑顔だな、おう解散」
「お疲れ様でした!」
女主人公は諏訪たちにあいさつをすると、水上のもとに駆け寄った。
「水上くん、お疲れ様!」
「おつかれさん」
「どこ行くの?」
「ラウンジ」
「わたしも一緒に行ってもいい?」
「好きにせい」
「ありがとう!」
二人は話をしながらラウンジに向かう。
「わたしのハウンドがなかなか当たらなくて、結局日佐人くんに助けてもらっちゃった」
「さよか」
「動く相手に当てるのって、やっぱり難しいよね」
「考えすぎてるんやない?もっとシンプルに考えたらええねん」
「考えすぎないようにしたいー」
今日の防衛任務での出来事を話しながら、ラウンジに入ると、C級隊員たちが二人を見てざわついた。
「あれ女主人公先輩と水上先輩じゃん」
「最近よく一緒にいるよな」
「女主人公先輩の好きな人が水上先輩って本当なのかな?」
「噂だろ…女主人公先輩が水上先輩のこと好きなわけないだろ…」
水上には、噂話がよく聞こえていた。
「…」
「水上くん?」
「…」
「どうしたの?」
「…何でもあらへん」
「大丈夫?体調悪い?」
女主人公はそう言うと、水上の額に手を当てた。
「…犬飼ちゃん?」
「うーん…熱はなさそうだけど…」
「…トリオン体やからな。てか、前も言うたけど、近いって…」
「あ!ごめん!!」
水上に指摘され、女主人公は手を離す。
「ごめんね…わざとじゃないの…」
「別に嫌なわけやないけど、あんま人前でそういうことせんほうがええで?」
「ごめん…水上くんのこと好きだから少しでも近くにいたくて…」
「…は?」
さらっと爆弾発言を落としていく女主人公。
そんな女主人公を見て、水上は珍しく驚いた顔をした。
「でもやっぱりヤダよね。ごめんね、気を付ける!」
「…ちょいちょい…」
「ん?」
「いや…自分今なんて言うた?」
「え?…気を付けるねって」
「ちゃうやん、その前…」
女主人公は水上に聞かれて、少し考えると「…近くにいたいって言ったこと?」と聞いた。
「ほぼ正解やな」
「そうだよ?」
「いやいや、そうだよやないやん。なんでそんな大事なこと、サラーッとこんなとこで言うん?」
「…そうだった!!」
女主人公はようやく自分の言ったことに気づき、顔を赤くした。
「もう水上くんにはわたしの気持ちがバレてるからって、こんなところで言うことじゃないよね!ごめん!忘れて!」
そう言うと、女主人公はラウンジから走り去っていった。
「…なんやったんや…」
水上は心底理解できない、という顔をしていた。
ラウンジに一人取り残された水上は、周りからの視線に耐えられそうにないので別の場所に移動しようとする。
が、ラウンジから走り去っていったはずの女主人公が戻って来た。
「あ、あの!」
「忙しいやっちゃな」
「ご、ごめん!肝心なこと聞き忘れちゃって」
そう言うと、女主人公は顔を赤くしながら水上の目を見る。
「み…水上くん!クリスマスの日は、予定ありますか?」
「予定?」
「うん!」
「…せやな…生駒隊のメンバーでクリスマスパーティーするくらいやな」
「そ…そっか…」
水上の言葉に女主人公はわかりやすく落ち込んだ。
生駒隊を差し置いて、自分を優先してくれるとは思えない。
「じゃあ…良いクリスマスを過ごしてね…」
「待て待て」
女主人公がそのまま立ち去ろうとするのを、水上は止めた。
「なんかあるんなら言ってや」
「でも…生駒隊の人たちと遊ぶって…」
「まだ決まっとらん。犬飼ちゃんの話、ちゃんと聞かせてや」
「…あのね、もし予定が空いてたら一緒にイルミネーション見に行きたいなって思って」
そう言うと、女主人公は携帯でサイトを水上に見せた。
「ここ、三門市のショッピングモールなんだけど、今年のイルミネーションが綺麗なんだって」
「ほーん」
「水上くんのお誕生日、過ぎちゃったけど一緒にお祝いさせてほしくて」
「別にいらんて」
「そ…そうだよね…」
水上の言葉に、また落ち込む女主人公。
「あー、もうそうやなくて!」
「え?」
「お祝いやなくて、普通にクリスマス過ごしたらええやん」
「え…?」
「俺と、犬飼ちゃんの二人で」
「いいの?」
「そう言ってるやん」
「ありがとう!」
その後、二人は連絡先を交換してラウンジで分かれた。
女主人公は早速犬飼に、水上をイルミネーションに誘ったことを連絡し、その連絡をもらった犬飼は生駒隊の作戦室に乗り込んだのだった。