「おめーら、今日は奢ってやっから好きなの頼め」
「わー!諏訪さん太っ腹!」
「さっすが隊長」
「ありがとうございます!」
「オレもいいんですか?」
「いいからさっさと選べ」
諏訪がそう言うと、女主人公と小佐野はA定食、笹森はラーメン、堤はB定食を頼んだ。
「空いてるかなー?」
「女主人公、あそこ空いてるよ」
「本当だ!」
小佐野が指をさした方を見ると、生駒隊のメンバーが座っていた。
「すわさん、あそこでもいい?」
「好きなとこ座れよ」
「わーい!」
そう言うと、女主人公と小佐野は生駒隊の座っているテーブルに近づいた。
「こんにちは!」
「おお、女主人公ちゃんと小佐野ちゃんやん」
「よく会いますね!」
「女主人公先輩、小佐野ちゃん、こんにちは〜」
「隣座ってもいい?」
「ええで」
女主人公は水上の横に座り、その向かいに小佐野が座った。
そして、後からトレーを持った諏訪、堤、笹森が合流する。
「よお」
「諏訪さん、こんにちは」
「諏訪隊もお揃いで」
「この後防衛任務なんだよ」
「そうやったんですね。うちは夜勤やったんで、さっき終わったところです」
「おつかれさん」
「水上くん夜勤だったんだね」
「せやで。犬飼ちゃんたちも、これから大変やな」
そんな話をしながら、全員でご飯を食べていると、小佐野が「そういえば、女主人公とデートしたんでしょ?みずかみ先輩」と聞いた。
「…一緒に出掛けただけやん」
「それを世間ではデートって言うんでしょ」
「おー、水上。うちの女主人公とのデートはどうだった?」
「もー!諏訪さんもおサノちゃんもやめてよー!」
女主人公は、デートと連呼する二人を止める。
「普通ですよ」
「おめーなー、そんな言い方してっと女主人公が怒るぞ」
「すんません」
水上は気にしていないような様子で答えた。
「てかみずかみ先輩、女主人公のことまだ苗字で呼んでるの?」
「ホンマや」
「犬飼とごっちゃになんだろ?」
「名前で呼べばいいじゃん」
諏訪と小佐野は、女主人公の気持ちを知っているので、進展を願ってこのようなことを言った。
それが水上には伝わっていて、内心めんどくさいと思った。
「…なんでですか」
「女主人公だって呼んでもらいたいよね?」
「えー…それは…」
女主人公が少しだけ期待するような目で水上を見る。
「…俺は好きな子ぉしか名前で呼ばない主義なんです」
「おまえ南沢が好きなのか?」
「オレは女の子が好きなんで申し訳ないっす!」
「なんでそうなんねん。異性に決まってるでしょう!」
水上は真顔でツッコミを入れる。
そんな三人のやり取りを、隠岐や堤たちは笑って聞いていたが、女主人公はショックを受けていた。
「…女主人公?」
何も言わない女主人公に、小佐野が声をかける。
「あ…ううん…なんでもない…」
あきらかになんでもなくない様子の女主人公だったが、防衛任務の時間も迫っていたので小佐野がそれ以上何か言う前に食堂を出ることになった。
諏訪隊の防衛任務が始まってからも、女主人公は心ここにあらず、といった様子で、諏訪たちは心配をしていた。
「おい女主人公!」
「…」
「女主人公!」
「…」
「女主人公ー!!」
「あ!はい!」
諏訪が何度も声をかけないと気づかない。
「おめー、どうした?体調でも悪いのか?」
「いえ、全然大丈夫です!」
「さっきからボケーっとしてんな。いつネイバーが出てくるかわかんねーんだぞ」
「すみません…」
そうして女主人公は諏訪に声をかけられながら、なんとか防衛任務を終える。
「なんかあるなら言えよ」
「…なんでもないです…大丈夫です」
「たく…」
あきらかに何かあるのがわかるくらいの落ち込みぶりだが、女主人公は何も言わない。
これ以上は今聞いても答えないだろう、と諏訪は判断し基地に戻ると「今日はもう解散でいいから、さっさと帰って寝ろ!」と女主人公に伝えた。
「はい。お疲れさまでした」
そう言って、女主人公は諏訪隊の作戦室を出た。
「…女主人公、どうしたんでしょうね?」
「元気ないですよね」
「原因が水上なのはわかるけどな」
「名前のことかなー?」
「あれ、あんな風に言ったらだめですよー。特に水上は頭いいんですし、もうちょっとさりげなくサポートしないと」
「あれはあからさますぎましたね」
「…悪かったな!」
「諏訪さんの気持ちもわかりますけどね。さすがにやりすぎです」
「ちゃんと女主人公に謝りなよーすわさん」
「おめーもだろうが!」
その頃の女主人公は、三輪隊の作戦室の前にいた。
「…」
作戦室をノックしようとすると、その前に扉が開く。
「!!女主人公先輩」
出てきたのは奈良坂だった。
「どうしました?女主人公先輩が三輪隊に用があるの、珍しいですね」
「奈良坂くん…三輪くんいる?」
「三輪ですか?中にいますよ」
そう言って奈良坂は作戦室の中に戻る。
「あ?奈良坂忘れもん?って、女主人公先輩じゃん」
「女主人公先輩?」
「こ、こんにちは!」
三輪隊の作戦室には、月見以外の三輪隊全員が揃っていた。
「女主人公先輩が来るのめずらしー!どうしたんですか?」
「三輪くんに用事があって」
「俺にですか…?」
三輪は嫌な予感がした。
女主人公が自分に用事がある、ということは今までそんなになかった。
前回、たまたま水上との話を聞いたことがきっかけで、頻繁に女主人公に話しかけられることが増えたため、水上関係の話なのでは、と身構えた。
「…三輪くんー…」
「な!」
三輪の嫌な予感は的中し、女主人公は三輪の顔を見ると、ボロボロと涙を流した。
「またですか!」
「またって何?」
焦る三輪、そしてそれを見て面白がる米屋。
「な!女主人公先輩が泣いている!!」
「大丈夫ですか?」
焦る古寺、そして冷静に女主人公に声をかける奈良坂だった。
「はい、とりあえず座りましょう」
「うん…」
デジャヴだな、と思いながらも三輪は泣いている女主人公の手を取ってソファーに座らせる。
「何?秀次って、前にも女主人公先輩のこと泣かせたの?」
「俺のせいじゃない!」
米屋の言葉を否定して、三輪は女主人公に向き合う。
「今回はどうしたんですか?また水上先輩ですか?」
「…大正解」
「水上先輩?」
「実はね…」
女主人公は先ほどの食堂の時の話をした。
「水上くん…好きな子しか名前で呼ばないって言ってて…」
「まあ…あまり人の名前を気軽に呼ぶようなタイプではないですよね」
「そうなの。でもそれって、わたしのことは好きじゃないし、真織ちゃんのことが好きってことだよね…」
「…はあ?」
「細井ですか?」
女主人公の言葉を理解するのに時間がかかる三輪隊の4人。
「だって、水上くん真織ちゃんのこと名前で呼んでるじゃない」
「…あれは名前で呼んでるって言っていいのか?」
「名前ってか、あだ名じゃないっすか?」
「マリオって呼んでましたよね?」
「…あ…」
そこでようやくマリオがあだ名なことに気づいた女主人公。
「…あだ名…かな?」
「あだ名ですね」
「あだ名です」
「…ってことは…真織ちゃんのことが好きっていうわけじゃないのかな?」
「…まあそれは聞いてみないとわからないですけど」
「…同じチームだし、一番一緒にいる時間長いし、やっぱり好きなのかな…?」
そこまで言うと、女主人公はまた泣き出した。
「女主人公先輩ってこんな泣き虫だったの?」
「水上先輩の話題限定だ」
「うはー、恋する乙女ってやつね」
「女主人公先輩って、水上先輩のことが好きだったんですね」
「そこからか」
まだ泣いている女主人公に、三輪は「女主人公先輩」と声をかけた。
「ここで泣いてても何も変わらないですよ」
「秀次ー、そりゃ正論だけど、それをこのタイミングで言うか?」
「女主人公先輩にはハッキリ言わないとわからないからな」
「おっしゃる通りです…」
「女主人公先輩が、水上先輩との関係を進展させたいなら、ちゃんと想いを伝えないとダメですよ」
「…うん…」
「三輪が恋愛について語ってると面白いな」
「だな」
「うるさい!」
面白がっている奈良坂と米屋に対して怒鳴る三輪。
「三輪くん…ありがとう…。なんとなく、わたしは水上くんに好かれてないなって感じるけど…でもこのままだと嫌だからちゃんと伝えてくるね!」
「はい。当たって砕けてきてください」
「砕けちゃダメだろ!」
スッキリとした顔の女主人公は、三輪隊のメンバーにお礼を言うと三輪隊の作戦室を出た。
「なーんか、意外だったな。秀次がああいうこと言うの」
「この前もあの人は、水上先輩のことで泣いてたからな」
「そうなの?」
「あの二人は、盛大な勘違いで気持ちがすれ違ってるんだ」
「へー。やっぱ秀次がそこまで気にするのめずらしいー!」
「何かあるのか?」
奈良坂の問いかけに、三輪は眉間にしわを寄せた。
「…目つきが水上先輩に似てるからって、毎回相談されるのがめんどくさいだけだ」
「ふはっ!秀次に恋愛相談してるのやべー!」
三輪の言葉に、米屋は大爆笑であった。