07

女主人公は水上に自分の想いを伝えようとしていた。
だけど、そう決心したものの、なかなか水上と時間が合わず、すれ違いを繰り返していた。

「諏訪さん!今日こそ、水上くんに伝えてきます!」
「おう、頑張れよ」
「女主人公先輩、ファイトです!」
「日佐人くんありがとう!」

そう言って、女主人公は諏訪隊の作戦室を出て、生駒隊の作戦室に向かう。
生駒隊の作戦室はすぐそこなので、歩いて十数秒。
作戦室の扉をノックしても、誰も出てこない。

「…あれ?」

女主人公はもう一度、扉をノックするが、やはり誰も出てこない。
そこに、柿崎隊のメンバーがやって来た。

「お疲れ様!」
「柿崎さん!お疲れ様です!」
「女主人公先輩、こんにちは!」
「文香ちゃん、こんにちはー!」
「女主人公先輩、こんにちは」
「虎太郎くんもこんにちは!」

柿崎は女主人公と作戦室を見比べると、「生駒たちに何か用か?」と聞いた。

「はい。水上くんになんですけど…」
「水上?」
「どこに行ったか知ってますか?」
「さっきまで食堂にいたんですけど、見ましたよ」
「本当?」
「はい!ご飯食べてました」
「ありがとう!行ってみるね」

女主人公は柿崎隊の3人にお礼を言うと、食堂に向かった。







「あれー…もう食べ終わっちゃったかな?」

食堂に来てみたものの、生駒隊のメンバーは見つからなかった。
あの人たちはいい意味でも悪い意味でも目立つので、どこにいるかはすぐにわかる。

「どこ行っちゃったんだろう…」

女主人公は別の場所を探そうと、食堂から出た。
ラウンジに向かっていると、後ろから声をかけられた。

「犬飼ちゃん」
「迅さん!」

女主人公に話かけたのは迅だった。

「迅さんなんだかお久しぶりですね!」
「そうだねー。犬飼ちゃん、探し人?」
「はい!よくわかりましたね!」
「キョロキョロしてるから、そりゃわかるよー。このまま屋上に向かうといいよ」
「本当ですか?」
「うん。屋上に行けば、きっといいことがある。おれのサイドエフェクトがそう言ってるよ」
「ありがとうございます!」

迅にお礼を言って、女主人公は屋上に走る。
屋上の扉を開けると、そこには女主人公が探していた人物がいた。

「水上くん!」
「!」

女主人公の声に驚き、水上は女主人公の方を振り返った。

「びっくりしたわー。驚かせんといてや、心臓止まるで」
「わー!ごめん!大丈夫?」
「いや…そんな冷静な返しやめてや…ボケが台無しやで…」
「あ、ごめん!」

そう言いながら、水上は女主人公の方に歩いていく。

「どうしたん?」
「水上くんのこと探してたの」
「俺?なんか用やった?」
「うん」
「連絡入れてくれたらよかったやん」
「…あ!そっか!」

女主人公は水上にそう言われて、今更ながらそのことに気づいた。

「犬飼ちゃん天然やな」
「走り回ってたよ」

女主人公は恥ずかしそうに頭を掻く。

「ほんで、どないしたん?」
「うん!あ…あのね…聞きたいことと、伝えたいことがあって…」
「聞きたいこと?」
「うん…」

そう言うと、女主人公は軽く深呼吸をした。

「あの…み…水上くんって…ま…真織ちゃんのことが好きなの?」
「…はあ??」

女主人公の言葉に水上は顔をしかめた。

「どういうことやねん」
「この前、水上くんは好きな子しか名前で呼ばないって言ってたから…」
「…マリオはあだ名やろ」
「そっか…やっぱりそうなんだね」
「どう考えてもそうやん。それに俺だけやなくて、生駒隊みんなそう呼んどるやろ」
「うん…そっかそっか…良かった!三輪くんの言った通りだ」
「…三輪?」
「うん。水上くんがそう言ってたこと、三輪くんに相談したんだけど、ちゃんと聞いてみないとわからないって言われて。ちゃんと聞いてよかった」
「…さよか…」

女主人公は水上の言葉に安心したが、逆に水上は女主人公の言葉に顔を余計しかめた。

「水上くん…わたしのことどう思ってる?」
「…なんでそんなこと聞くん?」
「…なんとなくだけど…水上くんって、わたしのことあんまり好きじゃないのかなって思って…」
「なんやそれ…」

水上は「ホンマに嫌いなやつと話したりせえへん」と言った。

「そっか」
「犬飼ちゃんは何を伝えたいん?ホンマは三輪が好きやったーとか、そういう話なん?」
「え、違うよ…」
「ずいぶん三輪に相談しとるみたいやけど、なんでなん?」
「そ…それは…」
「それは?」

水上が女主人公との距離を詰める。

「み…水上くん…ちょっと…近い?」
「いつもの犬飼ちゃんの距離やん」
「そ…そっか…」
「ほんで、それは?なんなん?」
「あ…あの…三輪くんの目元が水上くんに似てて…無意識に水上くんを重ねてました…」
「…なんやそれ」

女主人公の理由を聞くと、水上はあきれたような声を出した。

「アホか。てか、それって犬飼ちゃんが俺のことめっちゃ好きってことやん」
「…だから…ずっとそう言ってるじゃん…」
「そら独り言みたいに言ってたり、俺やない別の人間に言ってるんは知っとったけど、直接俺に向けての言葉は今まで一回も言ったことないやろ」
「…たしかに!」

水上が好き、という言葉を日常的に言っている女主人公だが、実際に本人に面と向かって言ったことはない。
そのことに、女主人公は今更ながら気づいた。

「周りからはめっちゃからかわれるのに、肝心の俺は犬飼ちゃんの気持ち聞いてませんからーって言うの、めっちゃはずない?」
「もう伝えているものだとばっかり…」
「好きならまずは本人に伝えてから騒いでや」
「はい…」

水上にそう言われて、女主人公はもう一度深呼吸をして水上の目を見る。

「わたし、水上くんのことが好きです。最初はひとめぼれだったけど、ちゃんと話すようになって、どんどん水上くんに惹かれてます」
「…犬飼ちゃんって面食いやん。俺にひとめぼれするっておかしな話やな」
「そんなことないよ!あの時、水上くんはわたしのヒーローだったもん。誰よりもかっこいいって思ったの!」

女主人公の真っすぐな言葉に水上は驚いて、少しだけ赤くなった顔を隠すように、後を向いた。

「俺ら…一緒にいるとなんて言われてるか知っとる?」
「え?」
「釣り合わへんって。俺と犬飼ちゃんじゃあ…正直俺もそう思っとる」
「何それ!」

水上の言葉を聞いて、女主人公はすぐに否定する。

「釣り合うとか釣り合わないとか、他人が決めることなの?そもそも、釣り合うって何?わたしたちの何を見てそう言ってるの?」
「…そら、外見やろな。まず一番最初に目につくんが、そこやから」
「…わたし…水上くんのこと、世界で一番かっこいいって思ってるよ…」
「そらどうも。でも、俺と付き合うとそういうこと言われるで?犬飼ちゃんは、ホンマにそれでええんか?」
「…わたしは…正直そんなこと言われてるなんて気づかなかった…。だから気にならないけど、…み…水上くんが傷つく可能性をわたしが作るのはイヤ…」

そう言うと、女主人公の目からは涙が流れ出した。

「大好きな人を、わたしが傷つけちゃうかもしれないのはヤダよ…ううっ…」

泣いている女主人公を、水上は抱き寄せる。

「…ほんなら、周りが何も言えへんくらい、ラブラブしようや」
「!!」

水上の言葉を、女主人公は理解できなかった。

「え…?っと…」
「意地悪言うてごめんな。俺も好きやで、女主人公」
「ふあ〜!」
「なんやそれ」

女主人公が言葉にならない言葉を発すると、水上は笑った。

「み!水上くんが笑ってる!」
「うっさいわ」
「ほ…本当に好き?」
「好きやって言うてるやん」
「…夢じゃない…」
「夢やないで。女主人公」
「な…名前で呼んでくれてる〜!」
「テンション高いな」

まさか、水上も自分と同じ気持ちでいてくれたとは思ってもいなかった女主人公は、水上の言葉を理解はしたが、まだ疑っていた。

「本当に本当?」
「疑り深いやっちゃな」

水上の言葉をいまいち信用できていない女主人公に、水上は「どうしたら信じるん?」と聞いた。

「…あの…」
「ん?」
「…ちゅーして」
「…小悪魔やな」

水上は女主人公の顎を持ち上げると、そのまま唇を重ねた。



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