NO THANK YOU

「影浦先輩、好きです!!付き合ってください!!」

C級ブースで私と雅人くん、鋼くん、空閑くんでソロランク戦の組み合わせを決めようとしていた時、初めて見たC級隊員の女の子がやって来て、大きな声でそう言った。
言われた雅人くんは、ポカンとした表情をしていた。

「…はあ?」
「おい…カゲ」

やっと女の子の言葉を理解した雅人くんは、「誰だてめー…」と言った。
告白をしてくれた女の子に対して、そんな言い方はないでしょう。

「わたし、三門第一の1年の田中と言います。アタッカー志望で入隊して、影浦先輩の姿を見て一目ぼれしました!」

一目ぼれだから雅人くんはこの子からの感情に気づかなかったのかな。
キラキラとした目で雅人くんを見ている女の子は、私から見ても可愛らしいなと思った。

「…わりーけど、付き合ってるやつがいる」
「そうなんですか!?」

雅人くんはため息をつくと、ハッキリとそう答えた。

「かげ先輩、モテモテですな」
「本当にね」
「な…女主人公はそれでいいのか?」
「ちゃんと断ってるし」

私たちが面白がっていると、雅人くんがこちらを睨む。

「で、でも、ここ最近ずっと見てましたけど、そんな相手いましたか?」
「ここにいんだろ」

そう言うと、雅人くんは私の腕を引っ張った。

「…え…苗字さんですか…?」
「そうだよ」
「苗字さんって、影浦先輩の幼なじみさんですよね?荒船さんと付き合ってるって聞きました」
「荒船とは付き合ってねー。女主人公は俺と付き合ってんだよ」

雅人くんがそう言うと、女の子はうつむいた。
そんなハッキリ言わなくても…と少しだけ心が痛んだ。

「…嘘です!」

女の子は伏せていた顔を上げると、私のことを睨む。

「だって!どう考えてもただの幼なじみって感じじゃないですか!それに、本当に付き合ってるなら、荒船さんとの噂話が出てくるはずありません!」
「…うぜえ…」
「雅人くん」

私は女の子と目線を合わせると「私たち、本当に付き合ってるんだ。だからごめんね」と言った。

「わ…わたしは絶対認めませんし諦めません!」

女の子は、私に宣戦布告をしてC級ブースを去って行った。

「…なんだったのかしら…」
「女主人公、大丈夫か?」
「うん」
「かげ先輩さすがだね」
「何がだよ、迷惑な話だぜ」

そう言うと、雅人くんは「女主人公、おめーは気にすんなよ」と言った。

「雅人くんが告白されるって珍しいね」
「ああ!?喧嘩売ってんのか!」
「違うよ」

雅人くんのことを好きになるのは、遠くから見ていれば満足なタイプの子が多くて、あまり告白をしてこない。
告白をしなくても、雅人くんのサイドエフェクトで好意を持っていることが雅人くんにはわかってしまうし、好意がわかるとそこから徹底的にその相手を避けるから、大体の子が告白をする前にあきらめる。
私、という存在がいるのも大きいんだろうなと思ってた。
だからこそ、こんな風に面と向かって告白をされているのを見たのは初めてだ。

「…どうなることやら…」







次の日から、女の子は学校でも雅人くんにアプローチをしているらしい。
私は学校が違うから直接見たわけではないけど、鋼くんや水上くんが教えてくれた。

「女主人公…気にするなよ」
「カゲは無視か、しつこい時は怒鳴って遠ざけとるからな」

2人が必死にフォローしてくれるのを見て、ちょっと申し訳ない気持ちになる。

「うん、気にしてないから大丈夫だよ。実際、見てるわけじゃないから」
「さよか」
「カゲは女主人公のことが大好きだから心配いらないな」
「ところで、雅人くんは?」
「…」
「…」

私が聞くと、2人はなぜか黙ってしまった。

「…?」
「あー…カゲは…」
「…追いかけまわされとる…」
「え?」

どういう意味だろう、そう思っているとラウンジの入り口の方が騒がしくなってきたのでそちらを見る。
すると、雅人くんがあの女の子に腕を掴まれて、引っ付かれている。

「学校出るときから追っかけられとって…必死に走り回っとったんやけど、捕まったな…」
「ふーん…」
「瞬発力はあるけど、持久力がないから追いつかれたか…」
「へー…」
「苗字ちゃん…ちょっとお顔が怖いで?」
「…ほー…」

雅人くんは腕を掴んでいる女の子から距離をとろうとしているが、女の子は余計にくっついていた。

「クソが!離せボケ!!」
「イヤですー!影浦先輩一緒にソロランク戦しましょうよ!」
「おめーC級だろうが!!」
「指導してください!ついでにわたしの師匠になってください!」
「ならねーよ!!つーか、まじで離せ!!」
「いーやーでーすー!」

周りの隊員たちも、不思議そうな顔で2人を見ている。

「苗字ちゃん…?」
「女主人公…?」
「…」
「こ、こわっ!美人の真顔、めっちゃ怖いんやけど!」
「…完全に怒ってるな…」

と、そこに迅さんと嵐山さんがやって来た。

「よお、苗字!村上と水上も、お疲れ様!」
「迅さん、嵐山さん」
「お疲れ様です」
「…苗字ちゃん?」
「…こんにちは」
「苗字?どうしたんだ、そんな怖い顔して」
「…なんでもありません」

迅さんと嵐山さんが不思議そうな顔をして私を見ているけど、私はそれよりも雅人くんたちのことが気になっていた。

「あれです…」
「あれは…影浦か?」
「へー、影浦もモテモテだね」
「あれが原因で苗字ちゃんがおこです」
「なるほどね」
「そりゃあ自分の恋人があんな風にされてたら誰だって怒るだろう」

迅さんは私を見ると、一瞬驚いた表情をして、すぐに笑顔になった。

「苗字ちゃん」
「…はい」

迅さんは私に近づくと、「耳貸して」と言った。

「今視えたんだけどね、」

迅さんの言葉に、今度は私が驚いた。

「な!」
「やってみたら?大丈夫だよ、きっとうまくいく。おれのサイドエフェクトがそう言ってる」

迅さんはそう言うと、ニコッと笑った。

「〜っ…わかりました」
「頑張れ!女は度胸だよ!」

私は、雅人くんと女の子のいる方に歩いていく。

「…迅、おまえ何を言ったんだ?」
「んー、内緒。多分すぐわかるよ」



「だー!!もう離れろ!!」
「影浦先輩が良いって言うまで離れません!」

まだやってるのか…。
いい加減、私もそろそろ怒ってしまいそうだ。

「雅人くん」
「!女主人公!」
「…苗字さん…」

私を見て、女の子が組んでいる腕に余計力を入れたのがわかった。

「なんですか?」
「…それはこっちのセリフだと思うんだよね」
「…女主人公?」

私がそう言うと、女の子はキッと私を睨む。
最近、この子から睨まれてばっかりだな。

「苗字さんって、本当に影浦先輩の彼女なんですか?全然嫉妬してなさそうですし、本当に好きなんですか?」
「…それを聞いて、あなたはどうしたいの?」
「…苗字さんなら誰とだって付き合えるじゃないですか…それこそ荒船さんとか、あそこにいる村上先輩とか水上先輩とか…影浦先輩一人くらい譲ってくださいよ」

この子はなんてことを言うんだろう。
雅人くんを物扱いしているとしか思えない発言に、私は頭にきた。

「…あのね、私は雅人くんと生まれる前から一緒にいて、一緒に生きてきて、これからも一緒に年を取っていきたいと思っているの。だから雅人くんの代わりなんていないの」

そう言って、私は雅人くんの腕を引っ張った。
女の子は、私のセリフに驚いたようで組んでいた腕が簡単に離れた。

「あぶねーぞ!」

雅人くんを抱きしめると、雅人くんの首に腕を回して軽く背伸びをする。
そして、雅人くんの唇にチュッと軽く触れるだけの口づけをして、女の子を見る。

「これでわかってくれたかな?私は、雅人くんのことを愛してるのよ」
「〜〜っ!女主人公!」

私が人前で口づけをするとは思っていなかった雅人くんは、顔を真っ赤にして照れながら怒鳴っている。

「…はい…すみませんでした…」

ようやくわかってくれたようで、女の子は一度お辞儀をするとラウンジから走り去っていった。

「女主人公!!」
「ごめんね」

顔を赤くしながら怒っている雅人くんは、全然怖くない。

「でも、こうするのが一番伝わるでしょ」
「だからって、おめー何考えてんだよ!」
「私の雅人くんにベタベタしすぎでさすがに頭にきてたの」
「っ!」



「苗字もやるなー!」
「迅さん…あの未来視えてました?」
「うん。いやー大胆だねー苗字ちゃんも」
「カゲ顔真っ赤やん、おもろ」

迅さんの言ってた通り、自分の思ったように行動して正解だったね。



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