私は、あまり運動神経が良くないので、あんまり好きではないのだけれど、クラスの運動神経良い組はだいぶ盛り上がっていた。
六頴館では、A組とC組が紅組、B組とD組が白組で分かれることになっている。
今年も私たちは犬飼くんと同じ組で、辻くんや氷見さんは別の組になっていた。
「一つ下の学年は、ボーダーに入ってるやつ多いよな」
「そうなの?」
「あぁ。この前、部活対抗リレーの練習してるときに見た。スナイパーのやつと、オペの女子が何人かいたな」
「そうなんだ。この学年、私以外みんな男の子だからうらやましい」
「確か白組のやつもいたから、当日会えるだろ」
「楽しみ」
荒船くんも運動神経が良い組だからとても楽しそう。
「そしたら今年もリレーに出る人と、借り人・物競争に出る人を選びます」
学級委員長がそう言うと、クラスの中でも足の速い人たちの名前が飛び交った。
その中には、もちろん荒船くんの名前もあった。
「借り人・物競争は、毎年男子がやばいお題を引くことになるので、名前が出た人たちの中からじゃんけんをしてもらいます」
去年もすごかったけど、今年もやっぱりあるのね。
隣の荒船くんが青い顔をしている。
「荒船くんファイトー」
「心にもないことを言うな」
今年も無事にじゃんけんに負けた荒船くんは、借り人・物競争に出ることが決定した。どんまい。
体育祭当日。
「苗字さん!ねーねー!髪の毛やっていい?いいよね??」
「圧がすごいね」
クラスの中でもおしゃれさんな鈴木さんに、髪の毛をいじらせてほしいと頼まれた。
「髪の毛の長い女子は、みんなでおそろいにしようと思うの!」
「体育祭っぽくていいね」
「メイクもかるーくしたいと思うの!」
「ほどほどにね」
テンションの高い鈴木さんに、私は黙ってお任せすることにした。
「あ、荒船!ハチマキ貸して!」
「は?なんでだよ」
鈴木さんは、隣にいる荒船くんのハチマキを奪い取った。
「でーきた!苗字さん可愛い〜!!編みおろしが似合う!」
はい!と鏡を渡されて見てみると、いつもとは違う髪の毛がくるくるに巻かれて、編みおろしスタイルになった私がいた。
なぜか荒船くんのハチマキも一緒に使われているのだけど。
「鈴木さん、とっても上手」
「やっぱり元が良いとなんでも似合うねー!」
軽くメイクをしただけでも、結構変わるものなんだな、と感心してしまった。
「勝手に俺のハチマキを使ったな」
「だって、荒船は苗字さんのボディーガードなんでしょ?なら荒船のハチマキをアレンジに加えておいた方が安心じゃない?」
確かに、体育祭で男女がハチマキを交換していたら、それは目立つ。
いろんな意味で目立つ。
「でも、これじゃぁ荒船くんに迷惑がかかっちゃう」
「ま、虫よけにはなるな」
そう言うと、荒船くんは私のハチマキをつけた。
「どんどん荒船くんから恋愛の機会を奪ってる気がする」
「お互い様だな」
校庭に出て、紅白に分かれて自分の席に座ると、体育祭が始まった。
綱引き、玉入れ、障害物競走など、定番の種目がどんどん終わっていく。
お昼前の最後の種目は、午前中のメイン種目の部活対抗リレー。
ボーダーも部活としてカウントしてもらったので、荒船くんたちがスタート位置に並んでいた。
出る人数は4人で、荒船くん、犬飼くん、辻くん、そして3年生の先輩が準備をしていた。
「位置について。よーい、ドン!」
一斉に走り出すと、応援席からも大歓声。
やっぱり陸上部や野球部、サッカー部などの運動部が早い。
ただ、我らがボーダーも負けていない。
「苗字さん!荒船めっちゃ早いね!運動部にも全然負けてないじゃん!」
「ね。去年もすごかったけど、本当早いね」
第一走者の荒船くんが、他の運動部といい勝負をしていたけれど、第二走者の犬飼くんで、ボーダーは3位に。
辻くんが一人抜き返すと、アンカーの3年生の先輩にバトンが渡った。
「弓場さん頼みます!」
「弓場さん頑張れー!」
走り終わった荒船くんと犬飼くんが、3年生の先輩に声援を送っていた。
あの人は弓場さんと言うのか。
「おっしゃー!!」
最後まで競っていたけれど、あと一歩届かずボーダーは2位でフィニッシュ。
『いやー!白熱の展開でしたね!ボーダーも陸上部もいい勝負でした。午前の部はこれにて終了です。各自、お昼にしてください』
実況係の放送部の人がそう言うと、みんなが一斉に動き出した。
「お疲れ様」
「おう女主人公。飯にするか」
「苗字ちゃんもおつかれ〜!」
「おめェーが苗字か」
「はい。あなたは」
「3年の弓場だ。よろしく頼むぜェ」
「こちらこそよろしくお願いします。弓場さんも一緒にご飯食べますか?」
「俺はクラスのやつらと食うから気にすんな」
「そうなんですね」
「弓場さん、またあとで!」
そう言って、私たちは弓場さんを見送った。
「どうしようか?教室で食べる?」
「そうだな。犬飼も俺たちの教室に来るか?」
「え、いいの?そしたらおれもお邪魔しちゃおうかなー!」
あっという間にお昼の時間は終わり、午後の部が始まった。
『さぁ皆さんお待ちかね。午後の部の目玉種目!借り人・物競争のお時間です!今年のお題はどんな物があるのか。選手の皆さんはスタート位置に集まってください』
「はぁ〜〜〜行きたくねー」
「荒船くんの行きたくない気持ちがとっても伝わってくるよ」
「荒船くんじゃんけんに負けたんだね。去年も出てなかった?」
「出てた。だから余計行きたくない」
「頑張ってね!」
「他人事だと思いやがって!」
ぶつぶつ文句を言いながら、荒船くんはスタート位置に向かっていった。
「いやー、楽しみだね!荒船くんのお題」
「だね」