08

初めて犬飼ちゃんを見たときは、髪の毛がキラキラに輝いてて、同じくらい顔もキラキラしていて、キャラやないけど「天使みたいな子やなー」と思った。
ただ、同期の話や犬飼ちゃんの周りの話を聞いていると、どうも彼女は面食いらしい。
そやったら、俺は一番縁のない人間やなと思って、忘れることにしたんや。
だから、急に犬飼が妹と話してと言ってきた時は、なんの冗談やと思った。







「なんでやねん」
「えー…まさかの反応…」

犬飼に呼び止められたのは、ちょうど犬飼ちゃんを図書館で助けた次の日やった。
たまたま図書館で本を探しとる時に、犬飼ちゃんが小さい背えで本棚の上の方にある本を取ろうとしてバランスを崩した。
俺は、とっさに犬飼ちゃんのもとに走って、あの小さい体を受け止めたんや。

ほんで、一言二言言葉を交わして、俺はそのまま本棚でお目当ての本を取って、席に戻った。

「もう一度言おうか?」
「言葉の意味は理解しとるわ」
「ならいいでしょ?少しだけでいいから時間作ってほしいんだけど」
「だから、なんでやねん。俺やないやろ?」
「いや、水上くんなんだよ!」

だから、なんでやねん。
俺かて、昨日のことがきっかけで犬飼ちゃんと話たりできるかもしれへんなーって期待したけど、実際に犬飼ちゃんが話しとったんは隠岐やった。
犬飼と隠岐、そしてなんでか荒船と4人でラウンジにいる姿を見て、やっぱ面食いなんやなって感じた。
ほんで、俺は眼中にないんやなと、改めて再確認した。
別にわかっとったからええねんけど。

「なんでそんなイヤそうなの!女主人公と話してって言ってるだけじゃん!」
「だから、なんで俺が犬飼の妹と話さなあかんねん。そんな仲良くもない」
「仲良くなりたいって言ってるの!おれの妹なのに、何が不満なの!?」
「おまえの妹やからや」
「水上くんまでカゲみたいなこと言う!」

そう、おまえの妹やからや。
無駄にキラキラしとって、面食いって公言しても誰も何も言えない顔面で、誰とでも仲良く距離が近いおまえの妹やからや。
俺を利用して隠岐と仲良くなりたいだけやろ。
俺はひねくれた考え方しかできへん。



何度断っても折れない犬飼に負けて、犬飼ちゃんと話すことになったんはええけど、実際に会ったら犬飼ちゃんはほとんど喋らん。
なんでや。
俺以外の人間やったら、楽しく話すのに、なんで俺といるとだんまりやねん。

「もうええ?」
「あ…っ」

なんも言わへん犬飼ちゃんにしびれを切らして、席を立とうとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ水上くん!」
「なんも言わんやん…」
「そ…それは…」
「女主人公だって緊張してるんだよ。少しはわかんないかなー女の子の気持ち」
「…すまんかったなー俺にはわからんわ」

緊張するって、なんやねん。
あまりにもイラっときたんで、俺はいらんことを言ってしもうた。

「俺も暇やないねん。なんかあるなら言ってや」
「あ…ごめんね…」
「…俺は隠岐ちゃうで?媚売る相手間違えてるやろ」
「っ!!」

俺がそう言うと、犬飼ちゃんは泣きそうな顔になって、そのまま走って行ってしもうた。
泣きたいのは俺のほうやん。

「み、水上くん!何てこと言うの!媚売ってるわけないでしょ!ただ、水上くんと仲良くなりたいから時間作ってって言ったのに!」
「イケメンにキャーキャー言うてる犬飼妹が俺になんの用やねん?誰とでも話してるくせにだんまりやし」
「それは、女の子にも色々あるでしょ!」
「何があんねん」
「だーかーらー!テレビとか舞台で見る芸能人と好きな人とじゃ違うでしょ!」
「…は?」
「あ…」

この男、今なんて言うた?
犬飼ちゃんが俺のことを好き?
アホなん?
どう考えても隠岐のことが好きで、隠岐と同じ隊の俺に媚売って仲ようなって、隠岐にええ人アピールしたいんやろ。

そう思ってたら、口に出ていたようで犬飼に「ねぇ水上くん、一回殴っていいかな」と言われた。

「ちょっと待て。それで言うたら、なんや、犬飼妹は俺のことが好きなん?」
「それは本人に聞いて!おれからは言えません!」
「…」
「盛大な勘違いでよくもおれのかわいい双子の妹を傷つけたね」
「…すまんかった…」

完全なやらかしや。
無意味に犬飼ちゃんを傷つけてもうた。

「女主人公に謝ってよね!」
「…」
「聞いてるの!?」
「…謝ったとことで許してくれへんやろ」
「謝る気はあるのね?じゃあ大丈夫だよ、女主人公は話せばわかる子だから」
「…誰目線やねん」
「お兄ちゃん目線だよ!」

犬飼はそう言っとるけど、実際に本人から聞いたわけやない。
いまいち、というか全く信じられへん。
あの、アイドルや俳優が好きで、ボーダーでは嵐山さんにキャーキャー言うてる犬飼ちゃんが、俺のことを好きやと…?
何かの間違いやろ。



せやけど、それは間違いやなかったようで、最近の犬飼ちゃんの行動や言動を見てると、ホンマに俺のこと好きなんやなと感じた。
本人はハッキリ言わんけど、もう好き好きオーラが出まくっとってわかりやすい。
せやから俺らの周りだけやなくて、知らんC級隊員たちにも犬飼ちゃんの気持ちが公になっとった。

「女主人公先輩って、水上先輩が好きらしいよ」
「え、水上先輩って生駒隊のだよな?」
「そう」
「嘘だろ?女主人公先輩ならもっとイケメン狙うだろ?」
「それが本当っぽいんだよなー」

そんな風に話とるC級隊員が増える増える。
俺かて信じられへんのに、周りはそら信じられへんわな。

「…女主人公先輩って面食いだろ」
「水上先輩がいけんなら、おれだっていけるだろ!」
「いけねーよ!」

釣り合わへん。
犬飼ちゃんとじゃ、やっぱり釣り合わへんなー。
周りの反応を見てると、嫌でもそう思わされるわ。


せやけど…俺を見つけたときに笑顔で駆け寄ってくる犬飼ちゃんの姿、顔を赤くしながらクリスマスの予定を聞いてくる犬飼ちゃんの姿、そんなかわええ姿ばっかり見せられてたら、俺かて本気になるやん。

俺のことがほんまに好きなんやなーって伝わってくる。



やから、屋上で話があるって言われた時は、ホンマ期待した。

「水上くん!」
「!」
「びっくりしたわー。驚かせんといてや、心臓止まるで」
「わー!ごめん!大丈夫?」
「いや…そんな冷静な返しやめてや…ボケが台無しやで…」
「あ、ごめん!」

犬飼ちゃんのボケ殺し、そんなとこも可愛いんやけどな。
ほんで、本題に入っるんかなぁ思ったらマリオのことが好きなんか聞かれたんやけど、なんなん?
どう考えてもただのチームメイトやろ。

「どういうことやねん」
「この前、水上くんは好きな子しか名前で呼ばないって言ってたから…」
「…マリオはあだ名やろ」
「そっか…やっぱりそうなんだね」
「どう考えてもそうやん。それに俺だけやなくて、生駒隊みんなそう呼んどるやろ」

この前話した時に、俺が言ったことを気にしとったんや。
なんやねん、ホンマに俺のこと好きやん。
知っとったけど。

「うん…そっかそっか…良かった!三輪くんの言った通りだ」
「…三輪?」
「うん。水上くんがそう言ってたこと、三輪くんに相談したんだけど、ちゃんと聞いてみないとわからないって言われて。ちゃんと聞いてよかった」
「…さよか…」

で、ここで三輪の名前が出てくるんやな。
ずっと思っとったけど、犬飼ちゃんはホンマに顔の良い男と仲がええな。
あの三輪とも仲がええってなんなん。
やっと本題に入ったと思ったら今度は犬飼ちゃんのことどう思っとるって聞いてくるんか。
まずは自分の気持ちをちゃんと俺に伝えてくれや。

思っとった通り、犬飼ちゃんはまっすぐ俺のこと見て好きやって伝えてくれたんやけど、俺は正直自信がない。
犬飼ちゃんの気持ちが信じられへんとか、そういうんやなくて、周りからのイメージの問題やな。
犬飼ちゃんが正直に伝えてくれたんやから、俺も伝えなあかんと思って、正直に俺の気持ちを伝えた。

「…わたしは…正直そんなこと言われてるなんて気づかなかった…。だから気にならないけど、…み…水上くんが傷つく可能性をわたしが作るのはイヤ…」

そしたらこんなこと言いながら泣いてくれるんやで?
ホンマ、心の綺麗な子すぎるやろ。
ますます俺やない方がええんちゃうかって思うわ。
そらもう落ちますわ。
もう落ちとったけど、ホンマの意味で犬飼ちゃんに落ちたわ。

俺が犬飼ちゃんのことを抱きしめると、固まった。
ガチガチやん、おもろ。

「え…?っと…」
「意地悪言うてごめんな。俺も好きやで、女主人公」
「ふあ〜!」
「なんやそれ」

周りが何も言えへんくらい、ラブラブカップルになろうや。



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