「ん?」
「あの、すみくんに報告してもいい?」
「…めんどいことになりそうやなー…」
「多分、言わない方がもっとめんどくさいと思うよ?」
「…そうやな。女主人公のが犬飼のことよお知っとるな」
「…うふふ」
「なんやねん」
「ん、水上くんに名前を呼んでもらうと、本当に付き合ってるんだなって実感するの」
「アホやん」
「照れてる?」
「うっさいわ」
水上は顔を隠しながらそう言ったが、照れ隠しということがすでに女主人公にはバレている。
「水上くん、照れ屋だね」
「誰のせいやねん」
そう言うと、水上は女主人公の頭を軽く叩く。
屋上の階段を降りて、二人はエレベーターに乗る。
B級チームの作戦室のあるフロアについて扉が開くと、二宮隊のメンバーがいた。
「な!なんで水上くんが女主人公と一緒にいるの!?」
「うっさいのに見つかったわ」
「何それ!」
「犬飼、うるさいぞ」
「二宮さーん」
水上がそう言うと、二宮も同じように犬飼を注意する。
「二宮さん、こんにちは!辻くんも、今から防衛任務?」
「はい。女主人公先輩はどうしたんですか?」
「わたしは今から作戦室に戻るとこだよー!防衛任務頑張ってね!」
「ありがとうございます」
「…え、辻ちゃんって女主人公と普通に喋れるん?」
女主人公と辻のやり取りを聞いて、水上は驚いた。
「はい」
「なんでなん?めっちゃ女子やん。女子の中の女子って感じやん」
「女主人公先輩は女子ですけど、こう、薄目で見ると、犬飼先輩に見えなくもないのでなんとなかってます」
「んなアホなことあるんか…」
そんな話をしていると、犬飼が水上の肩を後ろから掴む。
「なんやねん」
「それ、おれのセリフね」
水上は、犬飼の手を肩からどかそうとするが、逆に力を入れる犬飼。
「痛いって」
「水上くん、なんで女主人公のこと名前で呼んでるの?」
「そういえばそうですね」
犬飼がそう聞くと、水上は女主人公を見る。
女主人公がうなずいたのを見ると、水上は「付き合うことになってん」と言った。
「そうなんですね。おめでとうございます、女主人公先輩良かったですね」
「うん!辻くんありがとう!」
「これで少しは落ち着くか」
「そんなにうるさかったですか?」
「何度も騒ぎながらうちの作戦室に来ていただろう」
「そうでしたっけ?」
本当に分かっていない様子の女主人公に、二宮はあきれていた。
「痛い痛い痛い」
未だに何も言わない犬飼だったが、水上の肩を掴んでいる手にはどんどん力が入る。
「すみくん」
「…」
「すみくーん?」
「…」
呼んでも返事をしない犬飼に後ろから近づくと、ギュッと抱きついた女主人公。
「すみくん、わたし幸せだよ?」
女主人公のその言葉に、犬飼は手を離す。
「女主人公…」
「ん?」
犬飼に名前を呼ばれ、女主人公は犬飼の腰に抱きついたまま返事をする。
「女主人公が本当に幸せなら、おれはそれでいいけどさ」
「すみくん、ありがとう!」
そう言うと、女主人公は手を離して犬飼の前に回る。
「幸せだよ!」
「…もー!お兄ちゃんはさみしいよ!」
犬飼は、女主人公をギューッと抱きしめた。
「す、すみくん、苦しい〜!」
「女主人公が誰かのものになっちゃうなんて、やだやだー!」
「犬飼、いい加減にしろ」
「犬飼先輩…」
水上は犬飼の様子に少しあきれながら「俺の彼女やぞ」と言って、犬飼から女主人公を奪おうとする。
「ダメー!水上くんにはまだ早いです!」
「さっき言っとったことと真逆やん」
「女主人公はおれの妹なのー!かわいい、かわいい妹なの!また女主人公のこと泣かせたらすぐに別れさせるからね!!」
「はいはい」
「真剣に聞いて!」
「わかっとるっちゅーの」
めんどくさそうに返事をしているようにしか見えない水上の態度を見て、犬飼は「ねぇ女主人公!本当にいいの!?」と聞いた。
「うん。だって、あれ、照れ隠しだもん」
「女主人公ー」
「水上くんって、意外と照れ屋さんなんだよ」
「ホンマあかん」
そう言って、水上は女主人公の口を後ろから押さえる。
「これ以上変なこと言うたら怒るで?」
「ふぁーい!」
「おれの前でいちゃつかないで!!」
二宮はエレベーターのボタンを押すと「そろそろ時間だ。行くぞ」と犬飼と辻に声をかける。
「すみくん、防衛任務行ってらっしゃい!」
「ううー、女主人公と離れたくない…」
「はよ行け、シスコン」
「水上くんはうるさいよ!」
「犬飼先輩、行きますよ」
エレベーターが来たので、二宮隊の3人はエレベーターに乗って下に下がっていった。
「予想以上にめんどかったな」
「でも、これで一番のビックイベントは終わったね!」
そう言って、女主人公は水上に向かって親指を立てた。
「ホンマやな。これで一安心や」
2人はそう言いながら諏訪隊の作戦室の前まで歩く。
「今日はこの後何するん?」
「諏訪さんと訓練して、その後は帰るよ」
「なら帰る時に連絡してや」
「え?」
「付き合った初日やで?もう少し一緒にいたいやん」
「〜〜〜っ!!」
水上の言葉に女主人公は嬉しくなり、水上に勢いよく抱きついた。
「水上くーん!」
「うわっ!危ないて」
「好き好き!大好き!」
「わかったから、少しは落ち着こか」
女主人公が1人で騒いでいると、諏訪隊の作戦室の扉が開いた。
「女主人公!さっきからうるせーぞ!」
「!!」
「諏訪さーん!」
「…女主人公、さすがに女のお前から襲うのはナシだな…」
「襲ってませんよ!」
女主人公は顔を赤くしながら諏訪の言葉を否定した。
「正攻法が通じないからって、今度は色仕掛けか?」
「諏訪さんひどい!ちゃんと付き合ってるもん!」
「…はあ?夢でも見てんのか?現実見ろ」
「ひどくないですか!今日こそ想いを伝えてくるって言ったじゃないですか!」
「そうだったな」
諏訪は、女主人公と水上の様子を見ると「てことは、うまくいったんだな?」と聞いた。
「はい!」
女主人公は満面の笑みで答える。
「水上、本当だな?」
「ホンマです」
「おめーも苦労すんな」
「承知の上ですよー。とりあえず、最難関のブラコン兄貴には報告済ですわ」
「そりゃあ良かったな」
諏訪は女主人公の頭をくしゃくしゃと撫でながら「良かったじゃねーか!捨てられねえようにな!」と言った。
「そ、そうですね!捨てられないように気を付けます!」
「いや、マジになんなよ」
「諏訪さん、女主人公は冗談通じへんので、そういうこと言うのやめてくださいよー」
「悪い」
女主人公は諏訪にくしゃくしゃにされた髪の毛を撫でつけながら「ボサボサだー!」と涙目になっていた。
「いつも通り、かわいいやん」
水上が女主人公の髪の毛を撫でながらそう言うと、女主人公は顔を真っ赤にした。
「うっわ、ゲロ甘」
「水上先輩って…付き合うとそういう感じになるんですね」
「やるなぁ」
いつの間にか諏訪隊の作戦室のドアが開いており、そこから堤、笹森、小佐野の3人が女主人公たちのことを見ていた。
「おサノちゃん!」
「女主人公ー。付き合うことになったんだね」
「うん!」
「女主人公先輩、おめでとうございます!」
「日佐人くんもありがとう!」
「女主人公、良かったな」
「はい!堤さんも、応援ありがとうございました!」
諏訪隊のメンバーにも報告ができて、嬉しそうにしている女主人公。
反対に、水上は恥ずかしくなってきたので、早く生駒隊の作戦室に戻りたそうにしている。
「ほんならまた帰る時迎えに来るから、連絡入れてな」
「うん!またね」
「あ、水上」
諏訪の言葉を無視して、水上は生駒隊の作戦室に戻る。
「良かったな」
「はい!」
女主人公は満面の笑みで諏訪にそう答えた。