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水上と付き合い始めた女主人公は、顔が緩みっぱなしだった。

「女主人公ちゃん、顔がだらしないよー」
「え?本当!?」

国近に指摘されて、女主人公は両手で顔の頬を上げる。
が、すぐに「えへへ〜」と言いながら顔が緩む。

「幸せそうで、何よりだよ」
「ありがとう〜幸せだよ!」

女主人公の満面の笑みを見て、国近も同じように笑う。

「良かったわね」
「結花ちゃん、ありがとう〜!」
「まさか女主人公ちゃんが水上くんと付き合うことになるとは思わなかったよー」
「意外!?わたしと水上くんじゃあ釣り合わない!?」
「女主人公ちゃん面食いって公言してたから、水上くんかーって思っただけ」
「倫ちゃん、好きになるのに顔は関係ないんだよ!」
「嵐山さんのことは遊びだったんだねー」

加賀美がそう言うと、女主人公は「そういうんじゃないよー!」と言った。


「俺のことは遊びだったのか?」


女主人公が後ろを振り返ると、嵐山隊の嵐山と時枝が立っていた。

「!?」
「嵐山さんじゃーん」
「時枝くんも、こんにちは」
「こんにちは」

嵐山と時枝は、女主人公たちの座っているテーブルの横に座ると「なんてな、冗談だ」と言った。

「あ、嵐山さん、びっくりさせないでくださいよー!」
「悪い、面白そうな話が聞こえてきてつい、な」
「嵐山さーん、周りが変な誤解するようなこと言っちゃダメだよー」

国近が周りの隊員たちを見ながらそう言った。

「確かにそうだな。悪かった、女主人公」
「いえいえ、嵐山さんは、今も変わらず私の推しですよー!」
「それは良かった」

そう言うと、嵐山はニコッと笑った。

嵐山の笑顔を見て、女主人公は少しだけ顔を赤くする。
しかし、嵐山を見ていたはずの女主人公の視界が真っ暗になり、女主人公は「え!?」と声を上げた。

「付き合って早々、浮気するのやめてや」
「み、水上くん!?」

女主人公は目元に手をやると、誰かの手で自分の目が隠されているのがわかった。
そして、聞こえてきた声からして、自分の目を隠しているのは水上だということに気づき、その手を掴む。

「水上くんだ!」

手を掴んで目元から離すと、女主人公は後ろを振り返った。

「わーい!会えたの嬉しい!」

女主人公は椅子から立ち上がると、水上の横に立つ。

「何言うてんねん浮気者」
「え!?浮気なんてしていないよ!」
「嵐山さんに見惚れとったやん」
「見惚れてないよ!わたしが好きなのは水上くんだけだもん!」
「っ…あー、俺がアホやった…」

女主人公と水上のやり取りを聞いていた今は、「何を見せられてるの…」とつぶやいた。

「女主人公は本当に水上のことが好きだな」
「はい!大好きです!」
「女主人公、もうちょい声のボリューム落とそうか」
「?」
「大きい声で恥ずかしいこと言わんといてや」
「なんで?恥ずかしくないよ?」
「水上くん、あきらめなー。女主人公ちゃんの愛情だよ」
「…そうやな…」
「水上くんが振り回されてる姿も珍しいわね」
「本当だよねー」

よくわかっていない女主人公は、「えへへ」と言って笑う。

「それで、どうしたの?」
「別に…女主人公が嵐山さんにデレデレしとるのが見えたから止めにきてん」
「あらまー!デレデレしてないけど、水上くんに会えてラッキーだったね!」
「帰りに会うやろ」
「早く会えて嬉しいの!」

そんな、女主人公たちのやり取りを微笑ましそうに見ている国近と嵐山。

「うんうん、女主人公ちゃんかわいいー」
「水上くんがこんな感じになるとは思わなかったな」
「本当よね」
「人って変わるんですね」
「水上も女主人公も、お互い良い変化だな」
「嵐山さん、お父さんみたーい」
「な!一つしか変わらないだろう!」

水上は加賀美たちの会話はスルーして、女主人公に「ほんならそろそろ行くわ。これ以上イコさん待たせたらアカンから」と言った。

「うん!わざわざありがとう!」
「帰り、連絡してな」
「了解です!」

女主人公はビシッと敬礼をすると、水上は少しだけ口角を上げて女主人公の頭を撫でる。

「ほな、また」
「後でね!」

そんなやり取りをした後に、女主人公が椅子に座り直すと視線を感じて顔を上げる。

「ん?どうしたの?」
「いやー、女主人公ちゃん愛されてるねー」
「え?そう?」
「水上くんがあんな風に笑うの、初めて見た」
「どんな風だった?」
「愛おしいものを見るような表情で笑ってたよ」
「本当?ふふふ〜嬉しいな」

本当に嬉しそうに笑う女主人公を、思わず今は抱きしめた。

「かわいすぎるー!」
「結花ちゃん、苦しい〜!」
「こんなかわいい子が彼女だなんて、水上くんがうらやましいわ」
「えへへ」

国近、今、加賀美が女主人公を可愛がっていると、「本当におまえたち世代は仲が良いな」と嵐山が言う。

「本当ですよね」

それに、時枝も同意する。

「そうですか?」
「嵐山さんたちだって、仲良いでしょ?」
「学校でたまに見かけますけど、いつも騒いでますよね」
「そうか?」
「特にイコさん」
「まあ、あいつは賑やかだからな」
「迅さんと一緒にいると双子みたいですよね!」
「なんだかんだ、いつも一緒にいますよねー」

三門第一には、どのクラスにもボーダー関係者が在籍しており、いつボーダーから緊急の呼び出しがくるかわからないため、ほとんどの行事で同じ班やチームにされる。
なので、必然的に学校でもボーダー隊員同士で一緒にいることが多くなる。

「まあ、そうなるよねー」
「でも、そろそろ卒業式だから、学校で嵐山さんたちが見られなくなっちゃうのかー」
「たしかに。あっという間に卒業式ですね」

今がそう言うと、女主人公は「さみしくなりますねー」と言った。

「そうだな。でも、次は充たちが高校生になるから、頼んだぞ」
「よろしくお願いします」
「ウエルカムだよー!」



6人でまったりお喋りをしていると、水上の用事が終わったらしく女主人公の携帯が鳴った。

「あ!水上くん、終わったって!」
「良かったね」
「返事返すねー」

ポチポチと携帯で返事を打ち込んでいると、女主人公の顔がにやけていく。

「本当に、好きだね〜」
「うん!」

そんな女主人公を見て、国近が微笑ましそうに言う。

「イケメンにキャーキャー言ってた女主人公ちゃんもかわいかったけど、こんな風に一人の人に恋してる女主人公ちゃんはもっとかわいいわね」
「本当だよ」

女主人公が返事を送って待つこと10分、水上が影浦と荒船、村上を連れてラウンジに現れた。

「まだここにおったんか」
「水上くん!」
「なんか増えてる」
「C級ブースで捕まったわ」
「おつかれ」
「鋼くん、お疲れ様」

水上は女主人公を見ると「今からカゲんとこ行ってメシ食おうかって話になってん。女主人公も来るやろ?」と聞いた。

「わたしも行ってもいいの?」
「当たり前やん」
「男同士の友情を邪魔しちゃダメかなって」
「アホやん」
「行ってもいいなら行きたい!カゲくん家のお好み焼き食べたい!」
「来いよ。うめーの食わしてやる」
「わーい!」
「今たちも来るか?」
「どうする?」
「行きたいー!」
「じゃあみんなで行こ!」

そう言うと、4人は席を立つ。

「そしたら嵐山さん、時枝くん、また!」
「おう!あんまり遅くなるなよ」
「やっぱりお父さんみたい!」

嵐山と時枝に挨拶をすると、8人は仲良くかげうらに向かった。



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