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3年生になった女主人公。
今日から新学期で、クラス替えがあるのでソワソワしながら学校に向かう。
校門を入ると、掲示板の前に人だかりができていた。
女主人公は、自分のクラスを確認しようと背伸びをするが、人が多くてクラス表を確認できない。
どうしようかと思っていると、後ろから声をかけられた。

「何してんだよ」
「あ!カゲくんおはよう〜!」

影浦はマスクをずらしながら「おう」と返事をした。

「クラス何組だったか見た?」
「まだ見てねー」
「わたしも。これだけ人が多いと見えないね」
「おめーがチビだからだろうが」
「チビじゃないよ!普通だよ!」

影浦はクラス表を確認すると、少しめんどくさそうな顔をした。

「見えた?」
「…見えた」
「わたしの名前は?」

その問いに影浦が答える前に、「女主人公ちゃん、おはよー!」と国近が声をかけてきた。

「柚宇ちゃん、おはよう!結花ちゃんも一緒だ!」
「おはよう」
「カゲくんもいる〜」
「おう」
「もうクラス見た?」
「まだだよー。クラス表見えなくて」
「カゲくん見てあげないの?」
「おめーらの来るタイミングが悪すぎだ」

前にいた人だかりが減ったので、女主人公と今、国近はクラス表の前まで進むことができた。
そして、3人は自分の名前がどこにあるか確認する。

「柚宇ちゃんと結花ちゃん同じクラスだ!」
「やった〜」
「未来ちゃんと当真くんもいるね!いいなー!」
「女主人公はどこなの?」
「んーっと…」

女主人公はA組から順番に見ていく。

「C」
「え!?」

影浦は女主人公にそう言うと、影浦はそのまま一人で自分の教室に向かった。

「あ、カゲくん!」
「C組?」
「そうみたい?」

女主人公がC組の欄を見ると、確かにそこには”犬飼女主人公”と、自分の名前が書かれていた。

「女主人公ちゃん、その下の方、見てみて!」
「え…わ〜!!」

国近にそう言われて下を見ると、そこには影浦の名前があり、真ん中より下を見ると水上の名前があることに気づく。

「み、水上くんと同じクラス!」
「やったね!」
「良かったじゃない」
「わーい!あ、でも同じクラスだとわたしの頭が悪いことがバレちゃう…!」
「もうバレてるから大丈夫だよ!」
「柚宇ちゃんひどい!」
「それよりも一緒のクラスの方が嬉しいでしょ?」
「うん!」







3人は3年生の教室のあるフロアまで来ると、「じゃあ私たちはこっちだから」と言ってA組の教室の前で別れる。

「またね!」

女主人公はニコニコしながらC組に向かう。
教室に入ると、すでに影浦、水上、村上、穂刈が4人でかたまって話をしていた。
女主人公が入ってきたことに気づいた影浦が、水上に「おい」と声をかける。

「ん?」
「あっち」

村上も女主人公に気づき、水上に教室の入り口を見るように言う。

「女主人公やん」
「水上くん!おはよう!」
「おはようさん」
「鋼くんも穂刈くんもおはよう!」
「同じだな、クラス」
「よろしくな」
「カゲくん同じクラスなら一緒に行こうよ〜」
「めんどくせえ」

女主人公はカバンを置きに、自分の席に向かう。
新学期ということで、席順は名前の順なので、右は壁で、左隣は影浦の席だ。

「い、犬飼さん!」
「おはよう」
「おはよう!犬飼さんと同じクラスなの、嬉しいな」
「本当?ありがとう!」

後の席の男子に声をかけられる女主人公。
それを見た影浦は「早速声かけられてんぞ」と水上に言う。

「クラスメイトのあいさつやろ?」
「どう考えても下心あんだろ」
「女主人公は全く気付いてなさそうだけどな」

顔を赤くしながら話しかけてくる男子と、そんなことに何も気づいていない女主人公を見て水上はため息をついた。

「え、俺、1年間こんな感じで過ごさなあかんの?」
「それが嫌なら言ってこい」
「なんて?」
「俺の女に手を出すな、だな」
「言えるか」

そんな話をしていると予鈴が鳴り、担任が教室に入っていた。

「はーい、自分の席に座りなさい」

影浦が席に戻ると、「カゲくん、お隣さんだね」と女主人公が声をかける。

「次の席替えまでだけどな」
「それでも、カゲくんが隣で良かったよー!よろしくね」
「…おめー、そういうこと他の男子に言うなよ…」
「ん?」

男が勘違いしそうなセリフをさらっと言ってくる女主人公に、影浦はあきれた。
狙ってやっているわけではないから余計たちが悪い。
水上に、心底同情する影浦だった。

「そしたら一人ずつ簡単でいいから自己紹介するか」

担任の言葉を合図に、出席番号順に自己紹介が始まり、女主人公の番はすぐに回ってきた。

「じゃあ、次は犬飼」
「はい!」

女主人公が席を立つと、周りが少しざわついた。

「犬飼さんだ〜」
「顔ちっちゃい」
「かわいいー!」
「アイドルみたい」

「犬飼女主人公です!去年はA組でした。ボーダーに所属してるので、特別早退などで抜けることもあると思いますが、仲良くしてください!最近は将棋を覚えたいなって思ってます。よろしくお願いします!」

女主人公がそう言うと、今度は別の理由で周りがざわついた。

「な!犬飼さんが将棋!?」
「あの、頭が悪いで有名な犬飼さんが!?」
「頭以外はパーフェクトの犬飼さん!?」

「おまえらー、失礼なこと言ってるぞー」

担任が注意するが、ざわつきはなかなか治まらない。

教室の反対側では、女主人公の言葉を聞いて、水上が頭を机にぶつけていた。

ゴンッ

「だ、大丈夫か?」

村上が前に座る水上に声をかける。

「(あ…あのアホ〜〜!なんでそんなかわええこと言っとんねん…)」

水上は、あきらかに自分の影響で将棋と言った女主人公がかわいくて仕方がなかった。
そんな水上を見て、影浦は「(バカ同士だな…)」と思った。

影浦の自己紹介は、とても完結だった。

「影浦、ボーダー隊員、以上」

とても新学期の自己紹介とは思えない3単語に、女主人公は隣の席から「ちゃんと自己紹介したら?」と小声で声をかけた。

「うるせーな。もう3年目だろ」

影浦は悪態をつきながら席に座る。

「影浦雅人、自己紹介0点な」
「はぁ!?自己紹介に点数もくそもねーだろ!」
「うるせー。だったら好きな物くらい言え」
「…寿司」
「はい、オッケー。じゃあ次」

今年の担任はめんどくさそうだ、と思う影浦だった。

どんどん自己紹介が進んでいき、次は水上の番になった。

「次は水上だな」
「はい」

ダラダラと席を立つ水上。

「水上敏志。大阪出身やけど、去年ボーダーにスカウトされてこっち来ました。好きなもんは、落語と将棋。よろしくお願いします」

水上がそう言って席に座ると、周りはまたざわついた。

「え…」
「将棋?」
「ん、どういうこと?」
「匂わせ?匂わせなの?」

水上の好きなものが将棋ということで、女主人公と何かしら関係があるのではないかと思ったクラスメイトだが、同じボーダー隊員同士、仲が良いのだなという結論に至り、そのまま3年C組の自己紹介は終わった。


昼休みになると、水上と村上の席に影浦と穂刈が移動して4人でお昼ご飯を食べようとしていた。

「水上、呼ばなくていいのか?」
「誰を?」
「女主人公に決まってるだろ」
「あー、別にええんちゃう?あっちも友達おるやろ」
「そうかもしれないけど」
「ほっとけよ」

そんな話をしていると、女主人公が水上の席に来た。

「水上くん」
「ん?」

女主人公は水上の耳元に近づくと、「あのね、たまにはわたしと2人でご飯食べようね」と言った。

「おん」
「ありがとう!」

水上の返事を聞くと、女主人公はにっこりと笑って教室を出た。
そんな2人のやり取りを見ていたクラスメイトたちが、心の中で「(どういうこと…!?)」とざわついていた。

「クラス中に女主人公と付き合ってるのがすぐバレそうだな」
「別に隠してるわけやないで?」
「そうなのか?」
「そりゃそーだろ。むしろ、隠すなんて無理だろ」
「すぐにバレるな、女主人公の態度で」
「俺のことホンマ好きやからなー」
「…惚気やめろ」



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