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三門第一にいた水上、影浦、北添、王子は、隠岐、細井、仁礼、南沢と合流して本部を目指していた。
B級部隊はチーム全員が揃わないと戦闘に参加してはいけないと指示が出ていたので、水上たちは生駒と、影浦たちは絵馬と、王子は蔵内、樫尾、橘高との合流を目指す。

「あー…あかんわ。イコさん電車止まっとるって」

細井は生駒からの連絡を見てそう言った。

「ということは羽矢さんもってことだね」
「せやな」
「ぼくたちが合流するには連絡通路を使って本部集合になると思うんだけど、この状況でちゃんと連絡通路が使えるのかな?」
「ユズルと合流もそうだな…」
「そもそもトリオンは回復してんのかぁ?」
「半分くらいかなー?とりあえず換装はできたから、省エネだね」
「だな」

水上は、冷静を装っているが内心焦っていた。
今、諏訪隊が防衛任務に出ているということは、女主人公がこの大規模侵攻の中で戦っているということだ。
B級中位、ソロポイントもそこそこ高い女主人公だから、簡単にはやられないとは思っているが、それでも心配だった。

「みずかみんぐ、大丈夫だよ」
「なんやねん。何も言うてへんやろ」
「言わなくても見てればわかるよ。女主人公ちゃんは大丈夫」
「…わかっとるわ」

本部に向かう途中、忍田からの通信で新型のトリオン兵が出現したことと、その新型はトリオン使いを攫おうとすることが伝わると、水上はますます心配になった。

「新型か…やっかいだね」
「水上先輩、あんまり心配しすぎないでくださいね」
「わかっとる…」

走って本部に向かっている途中、イルガーが本部に2体突っ込んだ。
その後、焦った様子の沢村から全隊員に通信が入る。

『こちら本部、諏訪隊の…た、…ザッザッ…捕獲され…ザッ』
「あ?なんて?」
「本部?」

通信が乱れて肝心なところが聞き取れない。

「切れたね」
「はあ!?なんやねん!」
「イルガーが本部に突っ込んだせいで、一時的に通信が乱れてるみたいだね」
「諏訪隊の誰やねん!!捕獲って、捕まったっちゅーことやん!」
「水上先輩!落ち着いてください」
「落ち着いとるわ!!」
「全然落ち着いてないね」

諏訪隊、捕獲、という断片的な言葉しか聞き取ることができず、水上は女主人公が捕まったのではないかと焦る。

「水上!!」

そんな水上を見て、影浦が水上の胸ぐらを掴む。

「落ち着けボケ!おめーがそんなんでどーすんだよ!おめーがこの先の指揮取るんだろ!」
「まあ、それが妥当だよね」
「女主人公が心配なら、さっさと合流して俺たちが戦えるように考えろ!」
「…っ!!」

水上は影浦に言い返そうとしたが、たしかにその通りだと思った。

「水上先輩…、指示ください」

隠岐にそう言われた水上は、頭を掻きながら「せやな…冷静やなかった…。ほんなら、どうするか決めんで」と言った。

「水上先輩!」
「ほんま女主人公先輩のことになると、周りが見えんくなるんやから」
「当たり前やろ」

水上はふぅと息を吐くと、「まずは合流や。死ぬ気で本部目指して、他の隊員たちと合流してから暴れんで」と言う。

「了解!」

この大規模侵攻が始まるのが後数時間遅かったら、戦っていたのは女主人公ではなく自分だったのに。
水上はそう思うと、ネイバーに対して強い憎しみを覚えた。

「無事やろうな…」
「大丈夫ですよー。女主人公先輩も、なんだかんだ強いやないですか」
「…せやな」

無事でいてくれ、そう思いながら水上は本部を目指した。







エネドラが本部に侵入したことで、連絡通路が使えなくなり、水上たちは結局本部で他のチームメイトと合流することができなくなった。
チーム全員と合流できない影浦隊、生駒隊、王子隊は結局そのまま待機となってしまい、大規模侵攻が終わるまで何もできずに終わった。
時間にして約2時間ほどの戦闘時間だったが、水上は今までに一番長い2時間だったと思った。

『残ったトリオン兵を片付けたら本部に戻ってきてくれ』

忍田からの指示で、残ったトリオン兵を排除してから本部に戻る水上たち。
本部に戻ると、防衛に出ていたA級とB級の隊員たちが続々と戻ってきていた。

「諏訪さん!」
「おう水上か、おつかれ」
「お疲れ様です」

水上は、諏訪を見つけると駆け寄った。
諏訪、堤、笹森はいるが、女主人公が見当たらない。

「あ、あの諏訪さん、女主人公は…?」
「あー…あいつは」
「まさか連れてかれたとかやないですよね!?」
「大丈夫だから落ち着け!」

水上に詰め寄られて、諏訪は焦りながらもそう言った。

「ほんなら、どこに?」
「…トイレだよ」
「トイレ?」
「…人型と戦った時に、あいつ…生身の人型が殺されるところを目の前で見ちまったんだよ」
「…は?」
「だから吐いてる」
「な、なんやそれ…なんでそんなことになってんねん…」
「敵さん同士の仲間割れだよ」

女主人公が人が殺されたところを見た。
たとえ、敵とはいえ相当なショックを受けたのだろうと水上は思った。

「あと…水上先輩…怒らないであげてほしいんですけど…」
「日佐人、それはいいだろ」
「なんですか?」
「それは本人に聞け。あっちのトイレで、おサノが付き添ってる」

諏訪が指さしたトイレに向かう水上。
入り口から、トイレの様子を伺うと中で女主人公が吐いている姿が見えた。

「っ…うぅ…」
「女主人公…大丈夫?」
「ゲッホ…ん、大丈夫…」

女主人公は吐いた後に、水で口元を洗った。
最初は口をゆすいでいるだけだったが、今度は唇をゴシゴシと力を入れて洗う。

「女主人公…そんなに擦ると血が出るよ…」
「…だって、気持ち悪いんだもん…」
「トリオン体だからノーカンだよ」
「やだ…気持ち悪い…水上くんごめんなさい…」

女主人公はエネドラが触れた自分の唇を、赤くなるまで洗う。
水上は、女主人公お小佐野の会話で全てを察した。
小佐野は女主人公の気の済むまで洗わせると、「そろそろ行こうか。すわさんたちが待ってるよ」と言って、女主人公の手を取ってトイレを出た。

「水上先輩…」
「え?」

女主人公が顔を上げると、そこには水上がいた。

「女主人公…大丈夫なん?」
「…うん」

女主人公はエネドラとのことがあり、罪悪感からか顔を伏せてしまう。

「大変やったな。女主人公が無事でほんま良かった…」
「ありがとう」
「こっち来てや」

水上は手を広げて女主人公を呼ぶが、女主人公は躊躇ってしまった。

「あ…」
「どないしたん?」
「…あの…」
「女主人公?」
「あの…あのね…」
「水上先輩、女主人公が人型にキスされたの」
「おサノちゃん!!」
「…」
「無理やりだよ。キスされながら体の中からガスブレードで攻撃されてズタズタにされたの」
「な、なんで言うの…」
「いつか知られることなら、早めに言ったほうがよくない?」
「だけど…」

女主人公は恐る恐る水上を見ると、勢いよく頭を下げた。

「み、水上くん、ごめんなさい!わたし…避けられなくて…」

そう言うと、女主人公の目からは涙が溢れてきた。

「わたし…本当にごめんなさい…」
「女主人公は悪くないから、許してあげて」
「…あんなぁ…」

水上は女主人公の腕を引っ張ると自分の方に引き寄せて、女主人公の顎を持って上を向かせる。

「み、水上く…」

そして、女主人公の唇に自分の唇を重ねる。

「んっ…」

角度を変えながら、優しく口づけをする水上。

「っ…ふ…ん」

唇を離すと、水上は女主人公を抱きしめる。

「…女主人公はしとらん。俺以外の男とキスなんかしとらん」
「水上くん…」
「女主人公は、これからも俺しか知らん…だから大丈夫や」
「み、水上くん…!」

女主人公は水上の背中に腕を回すと、そのまま声を上げて泣いた。

「…今日はもう解散でええんかな?」
「ん、多分大丈夫」
「さよか。ほんなら女主人公送っていくから、諏訪さんたちにも伝えといてや」
「了解」

小佐野にそう言うと、水上は女主人公のことを横抱きにして諏訪隊の作戦室に向かう。



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