世界中の誰よりも君を愛す

「男主人公!」

今日もボーダー本部に行こうとする男主人公を呼び止めたのは、同じボーダーに所属する嵐山だった。
嵐山と男主人公は小学校からの同級生で、嵐山に誘われる形で同時期にボーダーに入隊した。

「お疲れ嵐山。今日は本部?」
「ああ、男主人公も今から本部だろ?」
「うん」
「それなら一緒に行こう」
「いいよー」

2人は、同じ三門市立第一高等学校を卒業し、大学も同じ三門市立大学に在籍していて、何もない時は常に一緒にいるほど仲が良い。

「あ、嵐山くんと苗字くんだ!」
「きゃー!やっぱり絵になる二人だね!」
「目の保養!」

嵐山はボーダーの顔としてテレビや雑誌などにも出ており、容姿端麗、温厚な性格で家族思いということもあり、女性に人気が高い。
そして、同じくらい苗字男主人公も人気の隊員だ。

「そういえば、この前迅がなんか企んでそうな顔してたよ」
「迅が?何か視えたか?」
「なんだろうね。すごーく嫌な予感がする」
「何かあったら相談にくるだろうから、とりあえずは大丈夫だろう」
「そうだね」







ボーダー本部に着くと、嵐山はそのまま自分の作戦室に向かい、男主人公はスナイパーの訓練場に向かった。

「今日は狙撃訓練かー。おれ、苦手なんだよなー」
「男主人公さんに苦手な訓練とかあるんですか?」
「わ!」

独り言のつもりが返事が返ってきて驚く男主人公。
声のする方を振り返ると、荒船と穂刈が立っていた。

「よー、荒船&穂刈」
「コンビみたいに呼ばないでください」
「コンビみたいじゃん」
「コンビだろ、荒船」
「違うだろ」

荒船は男主人公のいるブースの隣に荷物を置くと、「ここ、いいですか?」と聞いた。

「いいよー」

男主人公がそう言うと、荒船と穂刈はそれぞれブースに入り、訓練の準備に入る。



通常狙撃訓練が終わると、奈良坂が男主人公に話しかけてきた。

「男主人公さん、お疲れ様です」
「おー、奈良坂。お疲れ様。今日もぶっちぎりの1位だな」
「ありがとうございます。真面目にやらない人もいるからだと思いますけど」

そう言うと、奈良坂は当真に視線を送る。

「まぁ当真は感覚派だからなー。おれたちにはちょっと理解できないよね」
「なんだぁ男主人公さん。俺の話か?」

自分の話をしていることに気づいた当真が、2人のもとにやってきた。

「別に呼んでない」
「そんなこと言うなよー」
「まあまあ。2人はこの後どうすんの?」
「俺は防衛任務なので、時間まで自主練をしようかと思っています」
「俺もそろそろ遠征の準備しないといけないから行くわ」
「オッケー。二人とも頑張ってね」

男主人公は隣のブースにいた荒船たちにも声をかける。

「2人はどうすんだ?」
「俺たちはカゲたちとメシ行きます」
「かげうらか?」
「です」
「来ますか、男主人公さんも?」
「うーん、行きたいけど多分嵐山が待ってると思うから今日はいいや」
「本当、男主人公さんと嵐山さんって仲良いですよね」
「そうか?普通じゃね?」
「いやいや。普通以上に見えますよ」

荒船の言葉に少し考える素振りを見せる男主人公。

「そっかー。みんなのアイドル嵐山の大親友ってことだな」
「…嵐山さんかわいそう…」
「なんで?」
「…なんでもないです」
「?」

本人は気づいていないが、嵐山は男主人公のことが好きなのだ。
ボーダー内ではもちろん、学校の同級生たちにもバレている。
嵐山は分かりやすく男主人公に想いを伝えているつもりだが、男主人公は鈍感すぎるせいで嵐山の好意に気づいていなかった。

「嵐山さんも苦労するなー」
「仕方ないだろう、惚れた弱みだ」
「は?何言ってんの?」
「もういいですよ」

男主人公は携帯を確認すると嵐山から連絡が入っていることに気づく。

「っと、嵐山からだ」
「早く行ってあげてください」
「ん、ありがとー」

男主人公は軽く手を振ってスナイパーの訓練場を後にした。



「嵐山ー」

ノックもせず男主人公は嵐山隊の作戦室の扉を開けた。

「男主人公!」
「…苗字さん、ノックくらいしてください」
「えー、いいじゃん。おれだよ?」
「そうだぞ木虎!男主人公なんだからいいじゃないか」
「嵐山先輩が甘やかすから、苗字先輩がこんな感じなんですよ」
「怒られてんぞ、嵐山」
「俺のせいか!」
「はいはい、木虎。その辺にしておいて。苗字さん、こんにちは」
「よーっす、とっきー」

男主人公は嵐山隊の作戦室に入ると、ソファーに座った。
そして、嵐山も男主人公の隣に座る。

「どうした?」
「今日はもう終わりだから一緒に帰ろう」
「いいけど」
「どこかで夕飯でも食べていくか?」
「佐補たち待ってんだろ?久しぶりに早く帰れるんだから、一緒に夕飯食べてやれよ」
「じゃあ男主人公も一緒にうちに来るか!」
「おれの話聞いてる?家族水入らずを邪魔できないよ」
「男主人公も家族だろ!」

そんな嵐山の言葉に、木虎と時枝は飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。

「あ、嵐山先輩…?家族って…」
「ん?間違いじゃないだろう?」
「いえ…まあ…?」
「家族じゃなくて、家族みたいなもんだろってことだろ?」

男主人公がそう言うと、「いや、まあ…確かに今はそうなんだけどな。でも将来的には…」などと嵐山はブツブツと言う。

「まあいっか。どうせ帰る方向は一緒だし、おばさんに聞いて良いっていうならおれも行こうかな」
「決まりだな!」

嵐山は嬉しそうに母親に連絡を入れた。

「それじゃあ俺たちは帰るけど、おまえたちも遅くなる前に帰るんだぞ!」
「はい…」
「お疲れさまでした」
「おつかれー」



嵐山と男主人公が作戦室を出ると、木虎は「と、時枝先輩…嵐山先輩は苗字先輩に想いを伝えたんですか?」と聞いた。

「うーん、あの感じだとまだなんじゃないかな」
「もう恋人を通り越して家族になってますよ?」
「吹っ飛んでるよねー、嵐山さんも」
「確かに…どちらかと言うと、あそこまで言われて気づかない苗字先輩に驚きです」
「本当だよね。もう、誰がどう見ても苗字さんのことが好きなのにね」
「…なんだかんだ嵐山先輩に甘いので、丸め込まれていつの間にか結婚してそうですね、あの2人」
「そうなったら、それはそれで面白いけどね」





帰り道、嵐山は男主人公に携帯の画面を見せる。

「母さん、いいって。男主人公ならいつでも大歓迎って書いてあるぞ!」
「なんか申し訳ないなー」
「今更だろ?中学の時は、今よりももっと来てただろ」
「だから余計申し訳ないって言ってんの。やっぱお金入れるわ」
「受け取らないぞ」
「おれの分の食費くらい出させてよ」
「それはもうもらってるって言ってたから気にするな」

男主人公の両親は、中学のころから仕事の都合で海外にいる。
そのため、家の近い嵐山家に夕飯をご馳走になる機会が多かった。
だが、高校に上がってからは男主人公が自炊を始めたので、その頻度は昔よりも減っていた。

「俺は、もっと男主人公に頼ってほしいと思ってる」
「それってさ、嵐山のご両親のセリフじゃね?」
「そ、それはそうだな」
「でもありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」

男主人公は笑いながらそう言うと、嵐山の頭を軽く撫でた。

「男主人公!?」
「んー、なんか嵐山がかわいいなって思って」

その言葉を聞いて、嵐山は自分のことを撫でている男主人公の手を掴んだ。

「嵐山?どうした?」
「…俺は、かわいいよりかっこいいと思ってもらいたい」
「…お、男だし、そうだよな」

今まで見たことがない真剣な顔をして自分のことを見つめる嵐山に、男主人公は少し驚き目を反らした。

「男主人公…」
「な、なんだよ」
「男だからじゃない。好きな人にはかっこいいと思ってもらいたいだけだ」
「…は?」
「好きだ」

嵐山の言葉を理解して、男主人公は顔を赤くする。

「な、何言ってんだよ!おれは男だぞ!?」
「男とか女とか、関係あるのか?」
「おま、あるだろ!」
「好きになるのに男も女も関係ないと思ってる。というか、俺なりにアプローチしてるつもりだったんだが、男主人公には全然伝わってなかったんだな」

男主人公の驚きように、嵐山は少し苦笑いした。

「だ…だって、嵐山は…女の子に人気だし…」
「俺は男主人公にしか興味がない」
「で、でも…」
「否定しないってことは、少しは期待してもいいのか?」
「〜っ!考える!」
「良かった!」

男主人公の言葉に安心した嵐山は、男主人公の手を繋ぐと「意識してもらうことには成功したから、これからはもっとわかりやすく伝えていくからな!」と言った。

「やめろバカ!」



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