02

「え?嵐山に告白された?」
「しー!!声が大きい!」
「おれよりもおまえの声のが大きいでしょ」

男主人公は、ここ最近本部によく顔を出す迅を捉まえると、ラウンジの隅に引っ張ってきた。

「男主人公は気づいてなかったの?」
「何が?」
「嵐山の気持ち」
「…まったく…」
「鈍いねー」
「う、うるさい!」

あれだけ周りを牽制しながらアプローチをしていた嵐山の気持ちに気づいていないなんて、と迅は驚いた。

「とっくに気づいてるんだと思ってたよ」
「だって、嵐山はあんなに女の子たちにモテるんだよ?まさか男が好きだなんて思わないじゃん」
「男じゃなくて、男主人公のことが好きなんでしょ」
「うっ…」

迅にそう言われて、男主人公は顔を赤くする。

「お、顔が赤い。脈ありなの?」
「ちが!告白されたことがないから驚いてるの」
「…へ?」

男主人公の言葉にさらに驚く迅。
嵐山ほどではないが、男主人公も顔が整っていてボーダー内でも人気の隊員だ。
男主人公を好きだと言っている女の子たちがいることも、迅は知っていたので告白をされたことがないことに驚いた。

「男主人公もモテるのに?」
「は?喧嘩売ってる?モテないよ」
「いやいやいや。だって…」

そこで迅は気づいた。
男主人公のことが好きな女の子たちは、告白しなかったんじゃなくて、告白できなかったのだ。
嵐山という存在のせいで。

「大丈夫。男主人公、おまえはモテるよ」
「まだ言うか」
「男主人公がそう思うのは、嵐山のせいだよ」
「嵐山?…やっぱりいつも一緒にいるから?」
「そう」
「そりゃあ嵐山の横にいたらおれなんかミジンコだよな」
「うーん…そういう意味じゃないんだよね」

「なんの話してるんだ?」

男主人公と迅がこそこそ2人で話していると、後ろから声をかけられた。

「あ、嵐山」
「よお、迅!久しぶりだな!」

顔は笑顔の嵐山だが、いつもと少しだけ雰囲気が違う。
これは嫉妬している、そう悟った迅は「じゃあ、おれは城戸さんに呼ばれてるから行くね」と、その場を後にした。

「あ、迅!」

男主人公の呼びかけを無視して、そそくさと逃げる迅。

「男主人公」
「…どうしたの?」
「いや、男主人公と迅が仲良さそうにしてたから…」
「いつも通りじゃん」
「そうだな…」
「で、何か用事?」
「…いや」

嵐山は、男主人公と迅が近い距離で話していたのを見て焦って声をかけただけで、特に用事があるわけではなかった。

「用事がないなら自主練行くから」
「ついていく」
「なんで?」
「少しでも一緒にいたいからだな」
「…嵐山」
「ん?」

男主人公が歩き出すと、嵐山も一緒に歩き出す。

「すぐそこだけど」
「それでも、少しでも男主人公と一緒にいられるなら嬉しい」
「露骨になってきてない?」
「回りくどいアプローチは男主人公には向いていないって気づいたからな」
「そうですか」

男主人公はそのままスナイパーの訓練場に向かう。

「じゃあな。おまえも早く戻れよ」
「何時ごろになる?」
「決めてないよ」
「一緒に帰ろう」
「今日はいいよ。一緒に帰ると嵐山ん家に寄る流れになりそうだし」
「毎日来てもいいんだぞ?」
「それは悪いから大丈夫」
「もう少し甘えてくれ」
「甘えるときは甘えてるよ。今日は大丈夫」
「男主人公」
「あー!もうしつこいよ!」

なかなか引かない嵐山に、男主人公は大きな声を出した。
男主人公の声に気づいた荒船隊の3人と奈良坂が入り口にいる男主人公と嵐山の方を見た。

「ちょっと一人で考えたいんだよ!だからしばらくは嵐山とは話さない!」
「なっ…!」

ショックを受けている嵐山を無視して、男主人公は訓練場の中に入る。
すると、荒船たちが話しかけてきた。

「男主人公さん?どうしました?」
「どうもしないよ」
「固まってますよ、嵐山さん」
「ほっといていいよ」
「何かありました?」
「…何もない!」
「男主人公さんが怒ってる…」

男主人公はそのまま空いているブースに入ると、イーグレットを起動させた。
そんな様子を見て荒船たちは、嵐山と何かあったんだなと思い、そっとしておくことにした。







男主人公が嵐山に話をしない宣言をしてから今日で一週間が経った。

「…嵐山先輩、元気なくないですか?」
「日に日に元気がなくなっていくね」
「何かあったのかな?」
「最近は苗字先輩も来ないですし」

「男主人公…」

木虎が男主人公の名前を出すと、嵐山が反応をした。

「嵐山さん、何かあったんですか?」
「…綾辻…」
「はい?」
「…好きな相手に好かれるにはどうすればいいんだ…」
「苗字さんですか?」
「…」

嵐山は答えなかったが、嵐山が男主人公のことを好きなのは誰もが知っている事実なので、綾辻はそのまま話を続けた。

「苗字さんにやっと告白されたんですか?」
「…ああ」
「それで?」
「…特に…断られもしなかったからわかりやすく好意を伝えているところだ」
「それで?」
「…一人でしばらく考えたいから話しかけてくるな…」
「って、言われちゃったんですね」

嵐山隊のメンバーは、嵐山が男主人公に告白したことに驚いたが、それ以上に男主人公が嵐山から距離を取ってることに驚いた。

「わ、私たちから見たら、苗字先輩も嵐山先輩のこと好意的に見てると思いますよ!」
「そうですよ!じゃなきゃこんなに一緒にいないですって!」
「…それは、友達として…だろ?」
「うっ…」
「そ、それは…」

男主人公に好かれている。
それは事実ではあるが、嵐山と同じ意味での”好き”ではないことに嵐山も気づいていた。

「それはわかってたことだから大丈夫だ。これから意識してもらればと思っていたからな…」
「なるほど」
「だが…話しかけてくるなと言われてしまったら、何もできない…」

そう言って落ち込む嵐山に、綾辻は「なら、苗字さんの気持ちの整理が終わるまで待つしかないですね」と言った。

「そ、そうですよ!多分、苗字さんは急に言われてびっくりしちゃっただけですよ!」
「それもそうですね。嵐山先輩だって、告白されてもすぐに返事できなかったりしませんか?」
「…俺は、男主人公しか好きじゃないからすぐに断ってるよ」
「一般的に、ってことですよ。自分の気持ちがハッキリしてなかったら、なかなかすぐに返事はできないと思いますよ」
「そうか…」

時枝の言葉を聞いて、嵐山はポジティブに考えることにした。

「ということは、男主人公は戸惑ってるってことだな!」
「だと思います」
「わかった。とりあえず、男主人公の気持ちの整理が終わるまで大人しく待ってることにするよ。これ以上男主人公から距離を置かれたくないからな」
「それがいいと思います」

嵐山にさらっとアドバイスする時枝を尊敬のまなざしで見つめる佐鳥。

「とっきーかっこいい!」
「ありがとう」

嵐山が普段通りに戻ったことを確認した綾辻は「それじゃあ嵐山さん。一週間分の仕事、ちゃんと片付けてくださいね」と言いながら、資料を嵐山に手渡した。

「みんな、悪かったな!」
「全然ですよー!嵐山さんも恋愛に悩むんだなって思ったら親近感がわきました!」
「佐鳥先輩!」
「男主人公には、嫌われたくないからな」

そう言って微笑む嵐山は、とても優しい顔をしていた。



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