04

ここはボーダーのラウンジ。
嵐山と男主人公は2人で大学の課題をしていて、迅はそれを横で見ていた。

「こんな感じでいいかな」
「いいんじゃないか?」
「大変だなー大学生は」
「まあ、それなりに」
「おれは迅とも一緒に大学生したかったよ」
「ごめんね」

課題が終わり、3人は雑談を始めた。

「そういえば、最近玉狛に新人が入ったんだって?」
「そうだよ」
「次の入隊式が楽しみだなー。おれも手伝い頼まれてるんだよね」
「そうなの?」
「楽しみだな!」

「そういえばさ」と迅が話題を変えた。

「嵐山って、男主人公のどこが好きなの?」
「ぶっ!」

そんな迅の言葉に、男主人公は飲んでいた水を吹き出した。

「ちょっ、迅さん!?急に何!?」
「いやー、好きなのはずっと前から知ってたけど、好きになったきっかけって知らなかったなーって思って」
「おまえが知る必要ないだろ!」
「でも、男主人公だって気にならない?嵐山が、自分のどこを好きになったのか」
「う…それは…」

図星だった男主人公は、恐る恐る嵐山の方を見た。

「気になるか?」
「まあ…それなりに」
「男主人公は覚えてるか?あの広報イベントの後…」







約4年前の大規模侵攻後、ボーダー基地が完成するタイミングで、新しい隊員の募集が始まった。
まだ中学生だった嵐山は大規模侵攻で、従兄妹である小南桐絵があの場所で戦っていたことを知り、自分もボーダーに入りたいと思うようになった。

「男主人公、俺はボーダーに入るよ」
「ボーダーって、あのどでかい基地を拠点にしてる組織だよね?」
「ああ」

自分に力があれば、もっとたくさんの人を守れたかもしれない。
嵐山は、そう思っていた。

「年下の従兄妹が戦ってたんだ。それなのに、俺は何もしないでただ安全な場所で守られるだけだった。今後も同じようなことが起こらないとは限らないからな。家族を…大切な人を守る力を手に入れたい」
「…そっか」
「男主人公はどうする?」
「そうだなー。興味はあるけど、一応親にも聞いてみないとだからな」
「危険が伴うからな、無理はしないでくれ」
「それはおれのセリフだよ」

その後、ボーダーの基地が完成して正式にボーダーが設立した後、嵐山はボーダーに入隊した。
ボーダー基地が完成したことで、新しい隊員を募集するために広報はイベントを開くことになった。
そのイベントには、新しく入隊した隊員も参加することになり、若い隊員を集めたいということもあって嵐山と、同じ日に入隊した同い年の柿崎が呼ばれた。

「2人は笑顔で立っていてくれればいい。記者から嫌な質問が出てくるかもしれんがね、無理して答える必要はないよ」
「わかりました」
「はい」

広報イベントが始まる。
根付がボーダーの説明をして、その後質疑応答の時間という流れだった。

『ボーダー本部基地完成から3ヶ月。このたび、新しく正隊員に加わった若者たちです!』
「街と市民の皆さんを精一杯守ります!」

柿崎がそう言うと、記者からは様々な質問が飛び交った。

「今の気分は?」
「ご家族の反対はありましたか?」
「学校では普段どんなことを?」
「彼女はいますか?」

そして、一人の記者が手を挙げた。

『次に大規模なネイバーの襲撃があったら、街の人と自分の家族、どっちを守りますか?』
「う…それは…」

柿崎は記者からの質問に言葉を詰まらせたが、嵐山が答えた。

「それは、もちろん家族です。家族を守るためにボーダーに入ったので」

その言葉に記者たちはざわついた。

「じゃあ、いざって時は街は守らないってことかい?」
「先の侵攻で親や兄弟を亡くした人もいる。そういう言い方は良くないんじゃないかな?」

記者の言葉に、嵐山は「家族が大丈夫だと確認できたら、戦場に引き返して戦います。家族を亡くされた方も、そうでない方も、ここにいる皆さんの家族、この身がある限り、全力で守ります」と答えた。

そしてニッコリと笑って続ける。

「家族が無事なら何の心配もないので、最後まで思いっきり戦えると思います」
「…!」

その言葉に、記者たちも言葉を失った。

「その時に仲間がいると心強いので、たくさんの人にボーダーを応援してもらえるとうれしいです。ご支援よろしくお願いします!」

広報イベントの後は、嵐山たちは一度ボーダーの基地に戻り、今後のスケジュールを確認して解散となった。
嵐山は家に帰りながら、色々と考えていた。
ボーダー隊員になり、これから訓練が始まる。
大変なことも危険なこともあるかもしれないけれど、それでも自分の選んだ道を進んでいこうと決心した。
そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に家の近くまでついた。

「ん?」

あと少しで家につくというところで、嵐山は家の前に誰かが立っていることに気づく。

「男主人公!?」
「よーっす」

そこにいたのは男主人公だった。

「どうしたんだ?」

嵐山は駆け寄ると、男主人公がくしゃみをした。

「どのくらい待ってた?もう11月も後半なんだから、寒いだろ?」
「ん、大丈夫」

嵐山は男主人公の頬を手で触る。

「冷たい」
「ごめんって。どうしても、今日、嵐山に言っておきたいことがあったんだよ」
「とりあえず、中に入ろう」
「ここでいい」

男主人公の手を掴んで家の中に入ろうとするが、男主人公はそれを拒んだ。

「どうした?」
「…見たよ」
「?」
「広報イベント」
「ああ、さっきの」
「うん」

特に思い当たることはないけれど、さきほどのイベントで何かしてしまっただろうか?と嵐山は思った。

「嵐山さ、そんな一人で背負いこむ必要はないんだよ」
「ん?」
「ボーダーには、多分たくさんの隊員たちがいて、これからみんなで力を合わせて戦うんだよ」
「男主人公…」
「だから、嵐山が全部を自分でやろうと思わなくていいんだよ」
「…」
「おまえが最後まで戦うっていうなら、おれも横で一緒に戦うよ」
「…男主人公」
「おまえの背負ってるもの、おれにも半分分けて」





男主人公は恥ずかしくなって机に突っ伏した。

「わーお、それってもうプロポーズじゃん」
「だろ!あの時俺は、男主人公とずっと一緒にいようと決めたんだ」
「…もうやめて…」
「まあ、男主人公にとってはなんてことない一言だったんだろうけどな。俺は本当に嬉しかったんだ」
「そりゃあ惚れるわ」

男主人公はそのままの体勢で両手を挙げた。

「もう降参です。やめてください」
「元々男主人公は、俺と対等な関係でいてくれたからそもそもが良い印象だったんだ。そこにこれだからな。好きになるだろ」
「男主人公、これは仕方ないよ。責任を取って、ちゃんと嵐山と最後まで一緒にいなよ」
「迅うるさい!」

あのイベントの後、男主人公はすぐに両親に確認をしてボーダーに入隊した。
最初のころはチームという概念がなかったので嵐山、柿崎、太刀川、風間、三輪などと一緒に訓練をしながら力をつけていった。
1年ほど経ったころ、ゆくゆくはチームランク戦を始めたいというボーダー側の意向でチームを組むことになった。
最初は嵐山、柿崎、男主人公の3人チームだったが、数か月後には男主人公がチームを抜けて、時枝と佐鳥が嵐山のチームに入ることになった。

「あの時は、男主人公は最後まで俺の横で一緒に戦ってくれるんじゃないのかって言いそうになったよ」
「後輩育てなきゃなんだから仕方ないだろ…」
「わかってるよ。それでも俺の傍にいてほしいと思ったよ」
「今もいるじゃん」
「そういう意味じゃない」
「はいはい」
「そういうのは2人きりのときにやってよ」

迅は、男主人公と嵐山のやり取りを止めた。

「それで、結局男主人公は好きなの?」
「は?」
「嵐山のこと。今どう思ってるの?」
「べ、別に…!」
「もういい加減認めなよ。2人がラブラブの未来が視えてるんだから」
「本当か!?」
「やめろバカ!視んな!!」

男主人公は迅の顔面を手でつかんだ。

「男主人公ー、トリオン体だけど絵面がまずいから離してね」

男主人公はしぶしぶ手を離した。

「男主人公って、おれに未来視てほしいって言わないよね」
「何?」

ふっと疑問に思ったことを迅は聞く。

「嵐山とどうなるかとか、普通気にならない?嵐山に告白されたって言ってきたときも、どうなるか視てって言ってくるかと思ったのに何も聞かないしさ」
「…聞けるかバーカ」
「え!ひどくない?」

男主人公は眉間にしわを寄せた。

「…良い未来も悪い未来も、視たくもないのに視せられて、したくもないのに取捨選択を迫られて苦しんできた迅の姿を見てきてるんだけど。そんなおまえに未来視てなんて言えるわけないでしょ」
「男主人公…」

迅は少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻ると「…嵐山が男主人公のこと好きな理由がわかったよ」と言った。

「はあ?」

その言葉を聞いた嵐山は、男主人公のことを抱きしめる。

「ちょ!嵐山!」
「さすがの迅にも、男主人公は渡せない!」
「おれは物じゃない!」
「わかってるよー。嵐山の男主人公は取らないよ」
「だから、聞け!」

嵐山の腕の中で暴れる男主人公だが、トリオン体なのでビクともしない嵐山。

「男主人公!」
「何!?」
「これからも、俺の傍で一緒に戦ってくれ!」
「言われなくても!」



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