「そっか!」
「多分、足手まといになっちゃうと思うけど…でも、俺頑張るね」
「うん!きっと新ちゃんなら大丈夫だよ!」
二宮隊に入ることを決めた辻、そして、その数か月後には犬飼と鳩原、オペレーターの氷見がボーダーに入隊し、二宮隊は5人部隊になった。
「新ちゃん、最近調子はどう?」
女主人公はラウンジで休憩をしている辻を見つけると、声をかける。
「女主人公ちゃん。まあ、ボチボチかな」
「そっか。ここ、座ってもいい?」
「いいよ」
辻の座っている向かいに座ると、女主人公は持っていた資料とタブレットを机に置く。
「すごいね」
「そう?」
「女主人公ちゃんって、どこのチームに入るの?」
「私?」
「うん。てっきり、二宮隊のオペレーターをしてくれるんだと思ってた」
辻にそう言われると、女主人公は少し困った顔をしながら「だって、身内が同じチームにいるとやりにくいでしょ?」と言った。
「…俺は別にそんなことないけど…」
「本当、新ちゃんはまっすぐ育ったよね。思春期の男子中学生とは思えないくらい素直」
そう言って、女主人公は辻の頭を撫でる。
「子ども扱いしないでよ」
「私にとって新ちゃんは、ずっとかわいい小さな新ちゃんだよ」
嬉しそうな顔で自分の頭を撫でている女主人公を見て、辻は少し顔を赤くした。
「女主人公ねぇと歳、そんな変わらないじゃん」
「懐かしい呼び方だ」
「女主人公、それに辻くんじゃない」
ほのぼのとした空気を醸し出している2人のテーブルに来たのは加古だった。
「望ちゃん!」
「あ…う、あ、こ、…んにちは…」
「ふふふ、真っ赤になっちゃってかわいいわね、辻くん」
「望ちゃん、あんまりからかっちゃダメだよ」
「わかってるわ」
そう言いながら、加古は女主人公の隣に座った。
辻は顔を赤くしながら下を向く。
「2人は従姉弟なのに、あまり外見は似ていないわよね」
「そう?」
「ええ。辻くんはクールな感じだけど、あなた真逆じゃない?」
「望ちゃんのクールビューティーな感じが少しでも私にあれば!」
「あら、私はそのままの女主人公が好きよ」
「ありがとう」
加古が来たことによって辻は、どうすればこの場から抜け出させるかと考えていた。
「辻くん、私ともお話しましょう」
「望ちゃんったら…」
「あ、…は、はい…」
そう返事はしたものの、辻は下を向いたままだった。
「少しは慣れていかないとね」
「そうなんだけど、いきなり望ちゃんはハードルが高いというか」
「あら?そうかしら?」
「ザ、女性!の望ちゃんは、新ちゃんにとって一番大きな壁だと思うよ」
女主人公と加古がそんな話をしていると、「辻」と辻の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「「はい?」」
女主人公と辻が同時に声のする方を見ると、そこには二宮と太刀川がいた。
「…おまえじゃない」
二宮は女主人公にそう言う。
「あ、そっか。同じ苗字なんだっけ?」
「うん。太刀川くんだよね。名前は知ってたけど、ちゃんと話すのは初めてだね」
「おー。よろしくな」
「こんなやつとよろしくする必要はない」
「ひでーな」
二宮は、女主人公と太刀川の会話に加わった。
「どっちも辻だからややこしいな。女主人公って呼んでいい?」
「いいよ」
「な!」
太刀川の名前呼びに二宮は珍しく表情を崩した。
「ん?」
「二宮くん、珍しく驚いた顔をしてるわね」
そんな二宮を見て、加古は面白そうに笑った。
「うるせえ」
「なんだよー二宮も同じように呼べばいいだろ」
「おまえは距離感がバグってんだよ。初対面だろうが」
「えー、いいじゃん。さっきも辻呼びで2人とも振り返ったんだから、どっちか名前で呼ばないとわからなくなるだろ」
太刀川はそう言うと、女主人公に「な?」と同意を求めた。
「そうだね。もしよければ、二宮くんも名前で呼んで?」
「…ああ」
「あ、それとも新ちゃんのこと名前で呼ぶ?」
「え!?」
「…いや、おまえでいい」
「了解!」
そう言って女主人公はフフッと笑った。
「それで、二宮くんと太刀川くんは何してるの?2人が一緒にいるなんて、珍しいじゃない」
「辻を誘いに来たんだよ」
「俺ですか?」
「そ!ランク戦しようぜー」
「辻、いちいちこいつの誘いを受ける必要はない」
「なんでだよー。俺とやるの、勉強になんだろ?」
「はあ…まぁ、そうですね」
「だろ!そんじゃ、行こうぜ」
「わかりました。女主人公ちゃん、終わったら連絡するから一緒に帰ろう」
「うん。新ちゃんも頑張ってね!」
辻は席を立つと、太刀川と一緒にC級ブースに向かって行った。
「それで、二宮くんは?」
「あ?」
「何しに来たのよ?」
「別に、なんでもいいだろ」
「それはそうだけど」
「おまえには関係ねえだろ」
「かわいくないわねー」
そんな二宮と加古のやり取りを聞いていた女主人公は「2人は、仲が良いんだね」と言った。
「は?」
「そうね。仲は良いわね」
「ふざけんな、やめろ」
「二宮くんの口調が、私と話すときと比べると砕けてるから。太刀川くんともそうだけど、二宮くんって仲の良い人にはそんな風に喋るんだなって思って」
女主人公の言葉に二宮は頭を抱えた。
「どう見たら俺と太刀川とこいつが仲良く見えるんだ…」
「あら、失礼ね。同期で同い年じゃない」
「私とは少し距離があるよねー」
「そんなことはない」
二宮は女主人公の両肩を掴むと、顔を近づけてそう言った。
「勝手に勘違いするのはやめろ。俺はこいつらなんかよりもおまえと仲良くなりたいと思ってる」
「二宮くん…」
「あらあら、情熱的な告白ね。こんなところでやるわね、二宮くん」
女主人公は「それじゃあ、私にも同じように話してね」と言った。
「これが俺の普通だ」
「そうなの?望ちゃんと太刀川くんと話してる時の方が素の二宮くんって感じなのに」
「やめろ。そんなことなはい」
「そっか」
「二宮くん、あなたいつまでその体勢でいるつもり?」
二宮は、自分が女主人公の肩を持ってかなり近い距離で話していることに気が付くと「…悪い」と言って女主人公の肩を解放した。
「ううん、大丈夫だよ。二宮くんって、本当にきれいな顔してるよね」
「は?」
「彫刻みたいで、少しドキドキしちゃった」
「あら、女主人公も二宮くんの顔にときめくのね?」
「望ちゃんの顔もきれいだよー!二宮くんと2人でいると、オーラがすごい!」
「女主人公はかわいいわよね。掴まえておかないと、どこかに行ってしまいそうな感じ」
「そうかな?」
「二宮くんもそう思わない?」
「…」
加古の問いかけに、二宮は答えなかった。
「もー、望ちゃん。そんなこと二宮くんに聞かないでよ」
「いいじゃない」
「変な質問されて二宮くんびっくりして固まってるよ」
「そう?」
女主人公は二宮を見ると「ごめんね」と言った。
「いや…」
「あ、新ちゃんから連絡来た」
「終わったって?」
「うん。太刀川さんと10本勝負して、1本しか獲れなかったって」
「1本獲れただけでも大したものじゃない」
「本当だよねー。新ちゃん頑張ってるな」
慈愛に満ちた顔で女主人公が笑うと、二宮は無意識に女主人公の頬に手を伸ばした。
「?二宮くん?」
「っ…悪い」
「どうしたの?」
「なんでもない」
「そう?それじゃあ私はC級ブースに行って新ちゃんと合流するね!」
「ええ。また明日」
「2人ともまたね」
女主人公がラウンジを出ると、二宮も帰ろうとする。
が、その前に加古に話しかけられた。
「二宮くんたら、あんな風に女の子に触ったらだめよ」
「うるせえ…」
「無意識に手が伸びちゃったって感じね。何?女主人公に惚れちゃった?」
「寝言は寝て言え」
二宮はそう言うと、加古を無視してラウンジを出た。