「みんながよければ、夏休みにぼくの別荘に遊びに来ないかい?」
来馬の言葉に、鈴鳴の3人は目を丸くした。
「べ、別荘ですか?」
「来馬先輩、別荘なんて持ってたんですね!」
「正確に言うとぼくのじゃないけど、好きに使っていいって言われてる別荘があるんだ。ちょうど、近くに海水浴場もあるから、昼間は海で遊んで、夜はうちでBBQでもしながらお泊りしようよ」
「いいですね」
「でも、迷惑じゃないですか?」
「全然。むしろ、鋼や今ちゃんは今年が高校最後の夏だし、みんなで思い出作りたいなって思ってたんだ」
「それならぜひ」
「他に呼びたい子がいたら誘ってね」
来馬にそう言われた次の日、村上と今はそれぞれ学校で目当ての人に声をかけた。
「ねえ、今度来馬先輩の別荘に行かない?」
「別荘!?」
「来馬先輩って、別荘持ってるの??」
今は、一緒にお昼を食べていた国近と女主人公を誘った。
「そうみたい。お金持ちだとは知ってたけど、まさか別荘まで持ってるとは思わなかったわ」
「スケールがちがうね〜」
「行きたい!結花ちゃんと柚宇ちゃんとお泊りしたい!」
「じゃあ決まりね」
「楽しみだね〜」
同じころ、C組でも村上がいつものメンバーを誘っていた。
「別荘?」
「ああ。来馬先輩からの誘いだ」
「始まるのか、オレたちの夏が」
「ガリガリ組には嫌なイベントやなー」
「こっち見んな」
「せっかくなら荒船も呼ぼうと思ってるんだ」
「あいつ来るか?水はやべーだろ」
「来るだろう、鋼が誘えば」
「鋼くんの誘いは断らんやろ」
村上が荒船に連絡を入れると『検討する』とだけ返信が返ってきた。
「来るな」
「来る」
「絶対来るやろ」
「今が女主人公を誘うって言ってたから、犬飼も呼んでおいた方がいいよな」
村上の言葉に影浦は顔をしかめて「ほっとけよクソ犬のことなんざ」と言った。
「誘わんかったら後が怖いで?」
「シスコンだからな、犬飼は」
「めんどくせー」
「それに、オレたちが誘わなくても女主人公から聞いたらついてくるだろ」
「せやな」
村上が犬飼に連絡を入れる前に、荒船から聞いたらしい犬飼から逆に連絡がきた。
『ちょっと!!おれも行くからね!!女主人公が行くなら絶対行くからね!!』
「思ってた通りだな」
思っていた通りの反応の犬飼に、村上は笑った。
夏休みに入り、無事にシフトの調整ができたメンバーたちは、来馬の別荘の近くにある海水浴場に向かった。
「来馬くんからのお誘いだなんて、嬉しいわ」
「なんで俺が…」
「いいじゃねーか。なかなかこのメンツで集まんねーだろ」
「集まる必要性を感じない」
「みんなが来てくれて嬉しいよ」
「そろそろ着くころか」
来馬が誘ったのは20歳組のメンバー4人。
加古、二宮、太刀川、そして堤だ。
海水浴場の駐車場に車を停めて外に出ると、18歳組が待っていた。
「来馬先輩!」
「鋼、今ちゃん、それにみんなも。無事に着いてよかったよ」
「運転手さん、さすがでした」
「送ってもらってすみません」
「いいんだよ。ぼくたちの運転よりも安全かなって思ったから」
結局、村上は荒船、犬飼、影浦、穂刈、水上の5人を呼び、今は国近と女主人公の2人を呼んだ。
「だいぶ集まりましたね」
「だね。今回は太一は来なかったけど、今度はまたみんなで来ようね」
「そうですね!」
別役は補習の日程と被ってしまったため来られなくなってしまった。
「それにしても、カゲと国近と女主人公も補習回避したんだな」
荒船がそう言うと、3人は首を横に振り「いやー、補習の日程が変更になってなかったらヤバかったね!」と言った。
「回避してるわけねーだろ」
「それ、威張って言うことじゃないから」
「うっせーな!」
「わたしは後3点で赤点回避だったのにー…」
女主人公がそう言うと、荒船は驚いた顔をした。
「マジかよ。おまえが後3点って…奇跡だろ」
「ひ、ひどい!」
「水上、おまえ頑張ってんな」
「せやろ?もっと褒めてや」
「み、水上くんまで!?」
水上は、ショックを受けた顔をした女主人公の頭に手を乗せると「嘘やって、女主人公が頑張ってる証拠やな」と言いながら撫でる。
「でしょでしょ〜!水上くんに教えてもらってるんだからね!」
「おれの前でイチャイチャしないで!」
犬飼は、女主人公と水上の間に入ると女主人公を抱きしめた。
「す、すみくん苦しい!」
「おれの女主人公なのにー!」
「俺のや」
そんな3人を無視して二宮は海水浴場の入り口へと歩き出す。
「あ、二宮!ほら、みんなもそろそろ行くぞ」
「ほら、犬飼たちも行くぞ」
「はーい!すみくんそろそろ離して」
女子と男子で別れて、それぞれ更衣室に向かう。
「加古さんって、本当スタイルいいですね」
「そうかしら?」
加古のモデルばりのスタイルに驚く今。
「わかる!わかるよ結花ちゃん!わたしも加古さんみたいに長身美人になりたかったよ!」
「あら、女主人公ちゃんはそのままで十分かわいいわ」
「ま、まぶしい〜!」
今は「柚宇も身長高いしね」と言いながら、身長ではないところを見ていた。
「柚宇ちゃんおっぱい大きいよねー。本当うらやましい!」
「そうかな〜肩凝るし、いいことばっかりじゃないよ〜」
「い、言ってみたいそんなセリフ…」
「女主人公ちゃんはかわいいんだし、少しくらい欠点があったほうがいいよ?」
そう言って、国近はにっこりと笑う。
「け、欠点!?」
「言うほど小さくないでしょう」
「ごめんごめん、嘘だよ〜!女主人公ちゃんの欠点は頭悪いところくらいだよ〜」
「ゆ、柚宇ちゃんに頭悪いって言われた!?」
「どんぐりの背比べね」
「ふふふ、本当に仲が良いわね、あなたたち」
3人のやり取りを聞いて、加古は面白そうに笑った。
その頃男性陣は、すでに着替えを終えて、パラソルを立てたりレジャーシートを敷いたりと、準備をしていた。
「あいつら遅いな」
「大丈夫かな!?絡まれてたりしないかな?」
「大丈夫だろ。ここまでそんな距離なかっただろ」
そんな荒船の言葉に犬飼は「わかんないじゃん!?女主人公はかわいいから、隙あらば声をかけようとしてくる男がいるかもしれないじゃん!?」と言った。
「女主人公だけじゃねーんだから大丈夫だろ」
「犬飼、おまえは心配しすぎなんじゃないか?女主人公は子どもじゃないんだぞ」
「鋼くんわかってないなー!女主人公はね、昔から人の多いところでは色んな人から声をかけられるんだよ!毎回おれが守ってたの!」
「その役目はもうおまえのじゃねーだろ」
「俺やな」
「水上くんも、女主人公のことが心配じゃないの!?」
「まあ、心配やけど大丈夫やろ。1人やないんやし」
「そ、それはそうだけど」
「ええ加減妹離れせな」
「おれから妹を奪った張本人が何言ってるのさ!」
そんな2人のやり取りを聞いていた太刀川は「なあ、二宮。おまえんとこの犬飼って、女主人公絡むとやべえな?」と言った。
「…大事なんだろ」
「まあ、悪いことじゃないよね。ただ、犬飼くんの場合は愛が重ためというか…」
「兄妹愛っていいなー!」
そんな話をしていると、影浦が何かに気づいた。
「…あいつ…」
「ん?カゲ、どうした?」
「多分絡まれてんな」
「なんでわかった?」
「刺さってきた。あのバカ、こういう使い方すんじゃねーよ」
「え!?カゲ本当!?」
水上と犬飼は、更衣室の方を見た。
「どこにおるん?」
「どこ!?」
「あそこだな」
背の高い穂刈が指をさした方向を見ると、4人が3人の男たちに話しかけられているのが見える。
「…イケメン三銃士の出番やな」
「イケメン三銃士?」
水上の言葉に影浦は眉間にしわを寄せる。
「顔に自信のあるタイプの男たちっぽいから、こっちもイケメンで応戦や」
「誰だよ」
「二宮さん、荒船、犬飼やな」
そう言うと、水上は二宮と荒船を呼んだ。