2学期の一番のイベントと言えば、そう、文化祭である。
「ということで、今年は最後の文化祭!気合入れていくからよろしく!」
学級委員長の言葉で、3年C組のメンバーは盛り上がっていた。
「すごい気合だな」
「高校の文化祭って、こんな盛り上がるもんなん?」
「異常だな、ウチのクラスは」
「んなこと言うて、めっちゃやる気やん」
「血が騒ぐな、祭りごとは」
いつもよりも輝いて見える穂刈の顔を見て、水上は面倒くさそうな顔をした。
「委員長やる気だね〜」
「めんどくせー…」
「わたしたち防衛任務であんまり準備に参加できないよね」
「それもそうだな。めんどくせーから助かるな」
「えー!わたしはもっとちゃんと参加したかったよ!」
「どーせ準備手伝えねーなら当日働けって言われんだからいいだろ」
「うー…まぁ仕方ないか。カゲくん、当日はクラスに貢献できるように頑張ろうね!」
「だるい」
「もう!」
やる気のない影浦を見て、女主人公は呆れていた。
文化祭当日。
「はあ〜〜〜〜!!犬飼さんかわいい〜!!」
「めっちゃ似合うね!」
「え、えへへ。そうかな?」
「…」
「み、水上くん…?」
「…なんや?」
今年の3年C組の文化祭は、大正ロマンをテーマにした和カフェ。
接客する男子はシャツにサスペンダー、そしてループタイを付けた服装で、女子は膝丈のローウエストのワンピースにツバの浅い帽子をかぶったモダンガールな服装に身を包んでいた。
ボーダー隊員は文化祭までの準備にほとんど参加することができなかったので、委員長の「強制接客!!」の一言で、あまりやりたがらない接客担当になっていた。
と言っても、接客担当のボーダー隊員は女主人公と村上、そして水上の3人だ。
「水上も犬飼さんかわいいって思ってるでしょ!」
「かわいくない時なんかないやん」
「はいはい惚気おつ」
「水上くん…」
「ん?」
女主人公は、おずおずと水上のシャツを掴むと「あ…あの…、わたし、かわいくない…?」と恥ずかしそうに聞いた。
「むっちゃかわいいに決まっとるやん」
女主人公の問いに間髪入れずに答える水上。
そんな水上に、女主人公はホッとした様子で「よ、良かった〜!水上くん、ずっと怖い顔してたから似合ってないのかと思って心配だったよ」と言った。
「アホなん?」
「え!?」
「かわいすぎるから人前に立たせとうなくて不機嫌なんやで」
「へ?」
水上の言葉に女主人公は顔を赤くする。
「も、もう!」
「ホンマのことやん」
「う〜!!嬉しいけど、みんなの前で恥ずかしいよ!」
「こんなかわいい生き物表舞台に立たせたらアカンやろ?」
「水上、あんたそんなキャラだったっけ?」
「犬飼さんへの愛が重い」
「いいから、あんたもさっさと着替えてきてよね。時間ないんだから!」
「犬飼さんは仕上げにメイクしよ〜」
「アカン!これ以上かわいくせんといて!」
「ハイハイ、うるさい!」
いつまでも騒いでいる水上を教室から追い出したクラスメイトたちは「よし、そしたら犬飼さんはこっちに座って」と女主人公を椅子に座らせた。
「はーい!」
「さらにかわいくしてあげるね!」
「腕が鳴るわー!」
女主人公のメイクが終わると同時に、着替えが終わった水上と村上が教室に戻って来た。
「お、女主人公も準備が終わったんだな」
「村上くん!終わったよー!」
そう言って女主人公は村上と水上の方を向いた。
「!!」
「ん?」
女主人公は水上を見ると固まった。
「女主人公?」
「か…」
「か?」
「か…」
「か?」
「か…かっこよすぎる…」
「…はあ?」
女主人公は水上に近づくと「水上くんその恰好が似合いすぎててかっこいいよ〜!!」と興奮しながらそう言った。
「いつもの服装と大して変わらんやろ?」
「変わるよ!!このサスペンダー、そしてループタイ!水上くんのスタイルの良さが際立って、本当に素敵!」
「そう言えば、前に犬飼から女主人公はこういう世界観の舞台が好きだったって聞いたな」
「そういうことかい」
「水上くんの優勝だよ!写真撮ろう!」
「めっちゃ興奮しとるやん」
「水上くんがかっこよすぎるのが悪い!」
「頭も大丈夫やろか?」
「今日の女主人公はいつもより楽しそうだな!」
「…鋼くんのそういう感じ、俺は嫌いやないで」
楽しそうな女主人公を見て、水上は呆れながらもかわいい恋人に褒めてもらえて少しテンションが上がっていた。
「ほんならどうやって写真撮ろか?お姫様抱っこでもしたろか?」
「そ、そんなことされたら心臓がもたないから普通のツーショットでお願いします」
「アホやん」
そう言いながらも水上は女主人公の携帯を受け取ると、インカメラにして写真を撮る。
「ホイ」
「ありがとう〜!待ち受けにしてもいい?」
「それはちょっと待とか」
「えー!」
そんな話をしていると、委員長がやって来た。
「ハイハイ、そろそろ時間だよ!一般のお客さんも来るから、粗相のないようにね!」
女主人公と水上は、宣伝のためにプラカードを持って校内を歩き回っていた。
「水上先輩と女主人公先輩や〜」
「隠岐」
「隠岐くんだー!それに真織ちゃんもいるー!」
そんな2人に声をかけたのは隠岐だった。
「水上先輩、女主人公先輩こんにちは!衣装めっちゃかわいいですー!」
「こんにちは!ありがとう〜!真織ちゃんたちのところは何やってるの?」
「ウチはお化け屋敷です!女主人公先輩たちも後で遊びに来てくださいよー!」
「行きたい!水上くん、午後の時間に行こうよ!」
「べ、別にええけど」
そういえば、女主人公はお化け屋敷が好きだったな、と水上は思い出した。
「女主人公先輩ってお化け屋敷好きなんですね〜」
「うん!大好き!」
「意外や」
4人で話をしていると、後ろから水上の名前が呼ばれた。
「あっれー、水上やんな?」
「ん?」
名前を呼ばれた水上が後ろを振り返る。
そこに立っていたのは、3人組の女子だった。
「おー、なんや久しぶりやな。なんでおるん?」
「たまたま学校休みやってん。調べたら今日三門第一の文化祭やったから、旅行がてら遊びに来てん。会えてよかったわ!」
水上と親しそうに話をしている女の子たちを見て、女主人公は心の中で「(だ、誰!?)」と思っていた。
そんな女主人公に気付いた水上は、女主人公の方を見ると「小中一緒やった同級生や」と紹介した。
「そうなんだ!」
「大阪からわざわざ来られたんですか?」
「せやで。自分らも関西の子やろ?ボーダーの推薦?」
「はい。水上先輩にはお世話になってます」
3人の中の1人が水上の腕を掴むと「なあ!せっかく久々に会えたんやし、学校ん中案内してや!」と言った。
「今、宣伝係やっとるから無理やって」
「えー!ええやん!こっちの子、めっちゃかわいいんやから1人でも十分宣伝効果あるやろ。久しぶりに再会した同級生見捨てるん?」
「そういうことやないけど、てか掴むんやめてや」
「何固いこと言うてんねん!ほら、行くで!じゃあ、クラスメイトさん、ちょっと水上借りますねー!」
「…え!?」
「ちょ、ホンマ勘弁してや」
女主人公が止める前に3人は水上を連れて歩いて行ってしまった。
「…な、なんやあれ!?」
「わー、水上先輩連れてかれてもうた」
「そんなん言うてる場合か!?女主人公先輩!追いかけましょう!」
「あー…でも、せっかく大阪から来てくれた同級生だし…」
「そ、それはどうですけど…嫌やないんですか!?」
「…めっちゃやだー!わたしの水上くんなのにー!」
細井の質問に女主人公は素直に答えた。
「せやったら行きましょう!」
「でも、今はクラスの宣伝やらないとだから…」
「女主人公先輩…」
「ほんならおれ、ちょうど空き時間なんで水上先輩探してきますね」
「隠岐くん…ごめんね、ありがとう」
「見つけたら何か言うとくことありますか?」
隠岐にそう聞かれ、女主人公は少し考える。
「…女主人公ちゃんはおこです、って伝えておいて」
「了解です」
隠岐はフッと笑ってそう言うと、水上を探しに行った。