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「それでよ、鋼のやつが」
「やっぱあいつつえーな!」
「当たり前だろ、俺の弟子だぞ」
「あっという間に追い越されるんじゃねーか?」
「うるせ」

雅人くんと荒船くんが、何やらとっても楽しそう。
最近二人の話題は、もっぱら新しく入ってきたコウくんという男の子のこと。
荒船くんが自分の考えた強くなるためのメソッドをコウくんに教えることにしたみたいで、二人は師弟関係になっていた。
雅人くんも、攻撃の感情が刺さってくるけれど身体能力が高いみたいで簡単には殺しきれないコウくんのことが大変気に入っている様子。

私はまだ会ったことがないけれど、二人がこんなに楽しそうに話しているコウくんのことが気になって仕方がない。

「楽しそうね」
「あ?なんだ女主人公はまだ鋼に会ったことなかったか?」
「ないわ」
「鋼は鈴鳴だから、タイミングが悪いと会えないよな」
「別にいいけど、二人がすごーく楽しそうに話してるから少ーし気になる」

そう言うと、二人は一瞬固まった。
すぐに笑い出すと、雅人くんが私の頭を乱暴に撫でた。

「女主人公がしらねー鋼の話で盛り上がって拗ねたか」
「なんだ、女主人公にも可愛いところがあるんだな」
「そんなんじゃないから」

私が顔をそらすと、二人はますます笑い出した。

「へいへい、悪かったな。今後鋼がこっちに来た時に会わせてやるから拗ねんな」

完全に面白がっている雅人くん。
本当にそんなんじゃないんだけど、二人だけで楽しそうにしてるから気になっただけ。







今日は、雅人くんが学校の用事で少し遅れていて、荒船くんも何やら呼び出しがあったので犬飼くんと一緒にボーダーまでやってきた。

「今日はおれが苗字ちゃんのボディーガードだね!」
なんて笑っている犬飼くん。

「犬飼くんにも迷惑かけてごめんね」
「いいよいいよ!美女と一緒に帰れるのは役得だからね」
冗談なのか本心なのか、分からない表情で変なことを言うのはやめてほしい。

ボーダーに着いたところで犬飼くんは辻くんに捕まって、二宮隊の作戦室に連れていかれた。

「犬飼先輩!今日は二宮隊でミーティングって言ったでしょ」
「あれーそうだったっけ」
「苗字さん!い…犬飼先輩お…お借りし…まふ!」
「うん、どうぞ。辻くんも、だいぶ私に慣れてくれたね」
「ひゃい!」
うーん、普通に話せるようになるには、まだまだ先は長そうだ。

ということで、一人になってしまったので私はラウンジで雅人くんたちが来るまで大人しく待つことにした。
本当は、影浦隊の作戦室で待っていてもいいのだけど、今日はまだゾエくんもヒカリちゃんも来ていないので、一人ぼっちは少し寂しい。

空いている席に座って勉強でもしていよう。
そうして教科書を広げていると、私の座る前の席のグループの人が慌てて立ち上がったのが見えた。

「やばいやばい!鋼さん!おれ、スナイパーの合同訓練忘れてました!」
「そうなのか?時間はまだ大丈夫か?」
「まだ大丈夫す!でも結構ギリギリなんで、ダッシュで行ってきます!」
「周りを見ろよ」
「はーい!じゃあ行ってきます!」

ん、コウさんって言った?

前の席に座っていた人がいなくなり、同じ席に座っていたもう一人の人の顔が良く見えるようになった。
さっき、走っていった人が彼のことをコウさんと呼んでいた。

「コウくん?」
「え、あ。はい」
しまった。
無意識に名前を呼んでしまった。

「…」
「…」
やっぱりこの人が、二人の言っていたコウくんなのかな?

「あ…あの…」
コウくん(仮)が少し顔を赤くして話しかけてきた。

「えっと…鋼はオレですけど、あなたは」
「あ、ごめんなさい。影浦隊所属の苗字女主人公です」
「影浦隊…ということは、あなたがカゲの幼なじみの女主人公さんですか?」
「私のこと知ってるの?」
「はい。カゲと荒船からよく話を聞いていて」
「そうなんだ。急にごめんなさい」
「いえ、こんな美人に知り合いはいないのにって、少し驚いただけなんで」

そう言うと、コウくんが席を立った。

「そっちに移動してもいいですか?」
「もちろん、どうぞ」

コウくんが私の座っている席に移動してきた。

「雅人くんと荒船くんから聞いてて、ずっと気になってたんだ」
「オレも同じ。話は聞いてたけど、タイミングが悪くてなかなか会えなかったから驚いたよ」
「まさか前の席に座ってるとは思わなかったね」

私は机に広げた教科書を鞄に戻した。

「そういえば女主人公さんは荒船と同じクラスだったな」
「うん。荒船くんよりすこーしだけ成績悪いけど、2年連続同じクラスだよ」
「学校での荒船はどんな感じなんだ?」

ほほう、師匠の様子が気になるのね。
なんだか可愛らしい。
今までにいないタイプの男の子で、ほほえましい。

「コウくんは荒船くんのことが気になるのね」
「まぁ師匠だからな」
「そういえば、コウくんって名前の漢字はどう書くの?」
「はがねだな」
「はがねで鋼か。かっこいいね」
「ありがとう。二人が名前で呼んでるから勝手に女主人公さんって呼んだけど、問題ないか?」
「うん。できればさん付けじゃなくしてほしいけど」
「わかった」

やっと噂の鋼くんと知り合うことができて、ラッキーだったな。
さっきの声の大きい人、ありがとう。

「女主人公はカゲと荒船待ちか?」
「うん。今日は二人とも用事があって遅いから、先に来てたんだ」
「ならオレとソロランク戦でもして待ってるか?」
「あの二人といい勝負する鋼くんとやって勝てるかなー」
「まぁまぁ」

まぁいっか。
鋼くんとも一度戦ってみたいと思っていたし。
二人でC級ブースに向かう途中で、雅人くんから連絡が入った。

「あ、雅人くんもそろそろ学校を出るって」
「じゃぁオレたちの10本勝負が終わるころには着いてるかな」
「だね」

お互いブースに入ると、通信をつないだ。

『じゃぁ10本で』
「私、二人と比べたら全然だから、あんまり期待しないでね。シューターだし」
『大丈夫。オレもまだまだ経験不足だからお手柔らかに頼む』
「はーい」

私たちの10本勝負は、5対5の引き分けで悔しい思いをした。
強いといってもまだC級の鋼くんに引き分け。
入隊したてでも、強い人は強いということを見せつけられた勝負だった。
真正面から挑んでも、勝てない相手はたくさんいるから、私ももっと工夫して戦わないと。
反省しながらブースを出ると、雅人くんと荒船くんがいた。

「おう、女主人公!鋼とやってたんだな!」
「うん。さっき知り合って」

「あぁカゲ、荒船」
鋼くんもブースから出てきた。

「いい勝負だったじゃねーか」
「女主人公もさすがに強いな。勝ち越せなかったよ」
「まだまだ負けないよ。と言いたいところだけど、次にやったときは多分負けそう」
「弱気になんな!」
「ま!俺が教えてるんだしな!」

荒船メソッド、恐るべし。



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