21

「なあ、あれ女主人公だよなァ?」

仁礼に言われた三輪が顔を上げると、そこには”3年C組大正浪漫喫茶”と書かれたプラカードを持ってボーッと歩いている女主人公がいた。

「…なぜ1人なんだ?」
「なぜって、1人だからだろ?」
「この前会った時に、文化祭で水上先輩と2人で宣伝係をやると報告してきたんだ」
「そうなのか?」
「…」

嫌な予感がする。
そう思いながらも女主人公の傍へと向かう三輪と仁礼。
そんな2人に気付いた女主人公が「三輪くんとヒカリちゃんだー!」と、笑顔を見せる。

「宣伝係やってんのか?」
「うん!ヒカリちゃんたちのクラスは?」
「アタシらのとこは展示だからやることねーんだよ」
「そっかそっか」
「ま、暇でいいけどなー」

三輪は「なぜ1人なんですか?水上先輩は?」と女主人公に聞く。

「それがね…」

そう言って女主人公は顔を伏せる。

「な、泣くならせめて人が少ないところに移動しましょう」
「泣かないよ!せっかくメイクしてもらったのに落ちちゃうもん!」

三輪にそう言われ、女主人公は慌てて顔を上げた。

「なんだよ三輪ー。おまえ女主人公のこと泣かしたのか?」
「誤解を生むような発言はするな。女主人公先輩が泣くのは水上先輩が関係している時だけだ」
「そ、それはそうなんだけど、ハッキリ言われると恥ずかしいね」
「女主人公も乙女だなー!」

女主人公は眉毛を下げながら「水上くん…小中の時の同級生に連れてかれちゃった」と2人に説明する。

「小中?ということは関西の方ですか?」
「そう。たまたま学校が休みだったから、旅行がてらうちの高校の文化祭に遊びに来たんだって」
「たまたま休みで、わざわざ関西から三門市まで来るかァ?」
「ヒカリちゃんもそう思う!?」

仁礼の言葉に女主人公は反応する。

「3人で来てたんだけど、その中の1人が、多分水上くんのこと好きなんだろうなって感じの雰囲気出してて…過去に何かあったのかなー?元カノとかだったらどうしよう…」
「それはねーだろ」
「なんでよ!水上くんなら昔からかっこいいはずだもん!」
「それはともかく、確かに水上先輩なら彼女がいてもおかしくないとは思ますけど、それは確認したんですか?」
「…過去の恋愛の話って、聞いたことないの」
「なら勘違いかもしれないじゃないですか。早く水上先輩と合流して聞いてみましょう」
「三輪…おまえなんでそんなノリノリなんだよ。意外と恋バナできんのかよ!」
「俺への被害を最小限に抑えるための先回りだ」
「あーん?」

三輪の言葉に仁礼は頭にはてなマークを浮かべた。

「とにかく、早く水上先輩と合流しましょう。女主人公先輩を1人にしておくと、色々面倒なので」
「それどういう意味ー!?」

女主人公がそう言うのと同時に携帯が鳴る。
メッセージを確認すると、隠岐からだった。

「隠岐くんから、水上くんの居場所がわかったって連絡きたよ!」
「それじゃあそちらに向かいましょう」
「しかたねー。アタシも一緒にいってやるか!」
「2人は好きに回っていいんだよ?」
「いえ、あなたを水上先輩の元に送り届けるのが最優先事項です」
「三輪は女主人公の母ちゃんか?」







中庭のミスター&ミスコンステージの傍にいる水上たちの姿を見つけた隠岐は、女主人公に連絡を入れる。

「見つけました。中庭のミスコンステージの近くのベンチです、と」

女主人公に連絡を入れた後、もう一度水上たちの方を見る隠岐。
明らかに1人、水上との距離が近い女子がいることに気付いていた。

「あれは絶対水上先輩のこと好きなんやろなー…修羅場になるんちゃう?」

そう思いながら隠岐は女主人公の到着を待った。



隠岐が連絡を入れてから十数分後、ようやく女主人公が中庭にやって来た。

「女主人公先輩こっちです!」
「隠岐くん!」

女主人公に気付いた隠岐が名前を呼ぶ。

「あれ?三輪と仁礼ちゃんも一緒ですか?」
「うん!たまたま会って、一緒に来てくれたんだ!」
「三輪は女主人公先輩のことになると過保護やねー」
「この人が悪い」
「アタシは面白そうだったからついてきた!」
「仁礼ちゃんは正直ものやねー」

女主人公はステージ近くのベンチを見る。

「あ、水上くん本当にいた」
「さっきまで4人やったんですけど、2人どっか行きました」
「あの女の子…多分水上くんのこと好きだよね…」
「…」

何も答えない隠岐の代わりに三輪が「まあ、あれは確実に好きですね」と答えた。

「三輪ー…」
「やっぱりそう思うよね…」

水上と元同級生の女の子は、立って話をしている。
女子の方が水上との物理的な距離を縮めようと近づくが、水上はさりげなく距離を取って一定の距離感で話をしていた。

「…わたしが間に入って邪魔じゃないかな?」
「何言うてるんですか!水上先輩の彼女は女主人公先輩なんですから、間に入る権利ありますよ」
「そうですよ」
「アタシんだー!ってあの女に言ってこいよ」
「うー…。でも、そういうの水上くんが嫌がりそうじゃない?」
「ならここで話が終わるのを見てますか?」
「…それは…やだ…」
「なら行きましょう」

三輪にそう言われた女主人公は、ベンチの近くで話をしている2人に向かって歩き出した。



「それにしてもさっきの子、めっちゃかわいかったなー!」
「なんやねん急に」
「あんたがさっき一緒におった子やん。同じクラスなんやろ?ええなー、あんなかわええ子が一緒のクラスにおったらやる気でるやろ?」
「せやな」

元同級生の女の子の言葉に、水上は適当に返事をする。

「やっぱさっき一緒におった泣きぼくろの子が彼氏なんやろか?」
「あれはただの後輩やな」
「え!そうなん?美男美女でめっちゃお似合いなのになー!」

女の子はそう言うと「あんたは相変わらず将棋と落語ばっかで彼女おらんのやろ?」と聞いた。

「関係ないやろ」
「告って振られとる身やから少しは関係あるやろ!」
「そんなこともあったな。てかもうええ?そろそろクラス戻らなアカンねんけど」
「えー!もう少し一緒におってくれてもええやん!」
「彼女に悪いから嫌やねん」
「…は?彼女?」

女の子は水上の言葉に驚くと「なんやそれ!あんた彼女おったん!?」と水上に詰め寄る。

「そうやで。ちなみにさっき一緒におったかわええ女子が彼女や」
「…あー、なるほど。そういう設定な」
「は?」
「あーんなかわええ子があんたの彼女なわけないやろ」
「なんでそうなんねん」
「あんなかわええ子があんたと付き合うわけないやろ?弱みでも握ったん?」
「失礼な奴やな」
「ああいう子は、さっきの泣きぼくろみたいなイケメンと付き合うのが一番やん!あんたみたいなのはウチくらいでええねん!釣り合わん」

その言葉を聞いた水上は「(…ま、こういう奴には何言うても無駄やな…)」と思い、言い返すのをやめた。

すると、急に周りの音が聞こえにくくなった。

「あの…なんでそういうこと言うんですか?」

水上の後ろから、女主人公が両手で水上の耳をふさいでいた。

「あんたさっきの…」
「水上くんのこと、好きなんですよね?なんで好きな人を傷つけるようなことが言えるんですか?」
「ほ、本当のことやん!あんただって、何かメリットあって水上と付き合うてるんやろ?」
「メリットって…わたしは、ただ水上くんのことが好きだから一緒にいるんです!メリットとかデメリットとか、釣り合う合わないとか、そういうので付き合ってるわけじゃないです!」

水上は女主人公の両手を持つと「もうええよ」と言った。
女主人公は手を離すと「水上くん、探したよ!」と言って、後ろにいる隠岐、三輪、仁礼の方を見た。

「心配してくれた3人も一緒です!」
「わざわざすまんの」
「本当ですよ」
「水上ー、おまえ女主人公のこと1人にすんなよな」
「女主人公先輩を無事に送り届けられて良かったですわ」

女の子は「あ、あんたたちだって本当にこの2人が釣り合っとるって思っとる!?」と大きな声で聞いた。

「おまえ知らねーのか?女主人公と水上は学校一ラブラブカップルなんだぞ?」
「ボーダーでも憧れカップルって言ってる子たち多いですよー」
「他人を傷つけることをしないので、少なくともあなたよりはマシですね」
「三輪くん、それ褒めてる?」

そんな4人を見た水上は、フッと笑うと「残念やけど、こういうことや。だからすまんねんけどもうええか?俺も彼女と一緒におりたいねん」と女の子に言う。

「か、帰るわ!!」

女の子はそう言うと、その場から走り去っていった。



>> dream top <<