「あー…すまんかった」
「…水上くん…」
「ん?」
「…女主人公ちゃんはおこです」
「…そうやろな」
ぷんぷん、という効果音が付きそうな女主人公の表情に、思わず笑いそうになる水上だったが咳ばらいをしてごまかす。
「…さっきの子って、水上くんの元カノなの?」
「んなわけないやろ」
「随分親しげな感じだったけど?」
「それは…」
水上は頭を掻きながら「昔…中学ん時に告白されただけや」と言った。
「やっぱり!絶対あの子、水上くんのこと好きなんだと思ったよ!」
「もう好きやないと思うけどな」
「まだ好きでしょ!じゃなきゃわざわざ関西からこっちまで来ないよ」
「…」
そんな2人の会話を聞いていた隠岐が「水上先輩が反論できへんの珍しいなー」と言った。
「図星だからだろ」
「そりゃあなんも言えねーな!」
「そこ、外野は黙っとれ」
好き勝手言う3人にツッコミを入れる水上。
「ただ、もうこれで本当に終わったやろ。俺のためにあんなん言うてくれる超かわええ彼女がおるんやからな」
水上は、そう言いながら女主人公の頭を撫でる。
「そ、そんなんで誤魔化されないからね!」
「誤魔化そうとはしとらんで」
「わたしという立派な彼女がいるのに、他の女の子に連れ去られちゃだめだよ!」
「それは、ホンマにすまんかった。そこはめっちゃ反省しとる」
「そこは…?」
「女主人公がどんな反応するんやろか、って少し思ってしもうたわ」
「そ、そうなの?」
「おん。普段ぜーんぜん嫉妬する素振り見せへんからなー、ウチのかわいい彼女さんは」
そう言われた女主人公は「だ、だって…いつも水上くんがいっぱい愛情表現してくれるから」と言った。
「へー。水上先輩ってちゃんと愛情表現されるんですねー」
「意外だな」
「心配してそんしたなー」
「なんで急に爆弾投下するん?」
「女主人公先輩はたっくさん愛されてますねー」
「そうなの!だから毎日幸せだよ!」
「女主人公ちゃん、ちょっとストップ」
水上は後ろから女主人公の口を押さえようとした。
『さあ、今年もミスター&ミスコンを開催していますが、今年はミスター&ミスを発表する前に新企画!ベストカップルコンテストの結果発表をします!』
ステージから声が聞こえてきたので、5人は一斉にステージの方を見る。
「ベストカップル?」
「そんなんやってたか?」
「たしかうちのクラスでも話題になってなー」
「そんなのあったんだね?」
「興味ないな」
「文化祭の1か月前から投票しとったやん」
「知らねーな!」
「わたしも気付かなかったよ」
「ホンマに同じ学校通っとります?」
女主人公は水上の手を掴むと「ねえねえ、面白そうだから見ていこうよ!」と言った。
「おもろそうか?」
「うん!」
女主人公にそう言われ、5人はステージの方に近づいていく。
『ベストカップルコンテストは他薦のみで、文化祭の1か月前から生徒会室の前で投票箱を設置していました!さあ、どのカップルが第一回三門第一公認ベストカップルに輝くのか!』
司会の生徒会役員がそう言うと、3人の生徒が大きめのパネルを持ってステージに上がる。
『ここにベストカップルに選ばれたカップルの写真があります!3位から発表していきたいと思います!』
3位のカップルの名前が呼ばれると、ステージの周りにいる生徒たちが盛り上がる。
『3位は初々しい1年生カップルでした!もしご本人たちがいたら、ステージに上がってきてくださーい!』
司会にそう呼びかけられると、本人たちがいたようでステージに上がっていく。
「わー!素敵!」
「1位は誰になるんでしょうね」
「気になるー!」
3位のカップルのインタビューが終わり、次は2位のカップルの名前が呼ばれた。
2位のカップルはその場にいなかったようで、1位のカップルの発表に移る。
『ざあ!みなさん!お待たせしました、1位の発表です!』
司会がそう言うと、BGMが流れる。
『第一回、三門市立第一高等学校ベストカップルの1位はー…3年C組水上敏志&犬飼女主人公カップルです!』
その言葉と同時に、パネルが表になる。
そこにはまさしく女主人公と水上の写真が貼ってあった。
「えー!?」
「…どっから流出したんやあの写真…」
「水上先輩、最初の一言目がそれですか」
隠岐は苦笑しながらそう言う。
「女主人公!やったじゃねーか!」
「ほ、本当にわたしたち!?」
「本当におまえたちだろ!認められてるってことじゃねーか!」
『水上くん、犬飼さん!そこにいるのはわかってるので、ステージの上に上がってきてくださーい!』
司会にそう言われ、女主人公は水上の方を見る。
「み、水上くん…嫌なら上がらなくて大丈夫だよ?」
「…別に嫌やないで。せっかく認めてもらったんやから上がらな失礼やろ」
水上は女主人公の手を取ると、そのままステージの上に上がった。
『ベストカップル賞おめでとうございます!』
『ありがとうございます!』
『おおきに』
司会は2人にマイクを渡すと『それでは一人ずつコメントを頂けますか?』と言った。
水上は『記念すべき第一回目の賞を頂けて感無量ですわ。おおきにー』と、当たり障りのないコメントを言った。
『ありがとうございます!では、次に犬飼さんお願いします』
女主人公は少し考える素振りを見せるが、すぐに前を向いて話し出す。
『わたしは…水上くんと出会って、本当の恋を知って、毎日幸せです!周りが何を言おうとわたしたちはわたしたち、って思ってたけど、こうやって認められるって嬉しいことだなって実感しました。わたしたちをベストカップルに推薦してくれて、選んでくれてありがとうございました!』
女主人公は一礼をすると、水上の方を向き「水上くん、大好きだよ」とマイクを通さず言った。
「俺もやで」
水上がそう答えると、女主人公は嬉しそうに笑う。
『もう素敵なカップルですね!今回ベストカップルに選ばれたお二人には、生徒会から景品として1泊2日の宿泊券をプレゼントさせていただきます!』
「温泉!」
『ある人からすごい額のカンパを頂きまして、景品が豪華になりました〜!』
司会の言葉に、生徒会主催のコンテストということで水上は「(…あのメガネやろな…)」と思った。
「えー、誰だろう?」
「ま、誰でもええやん。ありがたくもらおうや」
「そうだね!ふふふ、温泉嬉しいな〜」
嬉しそうな顔の女主人公を見て、水上はフッと笑って頭を撫でる。
『いやー!見せつけてくれますね!いつまでも末永くお幸せに〜!』
女主人公と水上はそのままステージを降りて、隠岐たちの元へと戻った。
「おめでとうございますー」
「ありがとう!」
「おい、そろそろ俺たちの当番の時間だろ」
「お、そうだな!そんじゃあアタシたちはクラスに戻るな!」
「うん!あとで遊びに行くね」
「おー!」
三輪と仁礼は自分たちのクラスに戻って行った。
「おれもそろそろ交代の時間なんで戻りますわ」
「うん!真織ちゃんにもよろしくね!」
「了解ですー」
そう言って、隠岐も自分のクラスに戻った。
「いやー!みんな、今日は本当にお疲れ様!」
あの後、女主人公と水上がクラスに戻ると、3年C組の和カフェは大好評で、人で溢れていた。
そして、夕方になると売り切れの商品が増えて、そのまま店仕舞いとなった。
「これは喫茶店部門の売り上げ1位獲れるんじゃない?」
「確かに!やっぱり大正ロマンをテーマにして正解だったね!」
「接客するメンバーの顔が良かったのもあるわね!」
「明日も頑張ろうねー」
文化祭初日が終わり、片づけを終えるとそのまま解散となる。
「今日はさすがに行かねーだろ?」
「さすがにな。動き回って疲れたな」
「感謝しかないな、オレたちの代わりに防衛任務に出てもらってることに」
この二日間は、三門第一のメンバーは防衛任務から外されていた。
高校の行事を楽しめるよう、ボーダー上層部からの配慮だった。
「ほんなら帰るか」
「おめーらは2人で帰れよ」
「そうだな!せっかく防衛任務のないんだから、2人で過ごしたらどうだ?」
「え?」
影浦と村上にそう言われ、水上は「せやったらありがたく。女主人公、今日は2人で帰ろうや」と言った。
「あ、うん!みんなありがとう!」
「さっさと帰れ」
「また明日な!」
「うん!また明日ねー!」
水上と女主人公は教室を出て、下駄箱に向かう。
「水上くん」
「ん?」
「水上くんって、わたしと付き合う前に誰かと付き合ってたことってある?」
「なんや急に?」
靴を履き替えながら質問をし返す水上。
「わたし、水上くんのこと全然知らなかったんだなーって思って…」
「…過去の話も知りたいん?」
「水上くんのことなら全部知りたいよ」
「熱烈やなー」
「もう!そうやって誤魔化すならもういいもん!」
女主人公はそう言うと靴を履き替えて歩き出そうとする。
そんな女主人公を、水上は後ろから抱きしめると「誰とも付き合っとらん。好きになったんも、付き合うのも女主人公が初めてやで」と言った。
その言葉に「…わ、わたしも水上くんが全部初めてだもん!」と顔を赤くしながら答える。
「知っとる」
水上はそう言うと、珍しく声を出して笑った。