教室の扉の前で立ち止まって笑っていると、後ろから頭を叩かれた。
「いたっ!」
「何突っ立ってんだよ」
「カ、カゲくん!それに鋼くんと穂刈くんも!」
女主人公の頭を叩いたのは影浦だった。
「みんなおはよう!」
「おはよう。女主人公、久しぶりだな」
「本当だね!」
「大丈夫なのか、体調は?」
「もう全然大丈夫だよ〜!心配してくれたの?」
女主人公がそう聞くと、村上が「そりゃあ心配してたよ。水上も犬飼も元気がなかったからな」と答える。
「そ、そっかー。なんだかごめんね」
「元気が一番だな、おまえは」
「ケッ、唯一の取り柄なんだから、何も考えずにギャーギャー騒いでろよ」
「カゲくんの愛のムチ…!」
「そんなこと言って、カゲが一番心配してただろ」
村上がそう言うと、影浦は「はあ!?別に心配なんざしてねーよ!ただ、いつもみたいにうるせーのがいないなって思ってただけだボケ!」と否定した。
「あれはカゲくんの照れ隠しだね」
「さすがにわかるな、あのカゲの態度じゃ」
「ねー!」
「うるせー!」
影浦は一人で教室の中に入ると、自分の席に座った。
「でも、本当に良かったよ。今日からボーダーにも行くんだろ?」
「うん!完全復活だよ!またランク戦も始まるし、頑張るよ!」
「さみしいな、今日は水上が防衛任務だから」
「水上くんは、一昨日お家に来てくれたんだ!それに、みんながいるからさみしくないよ!」
女主人公が笑ってそう言うと、村上と穂刈も安心したように笑った。
ボーダー本部のラウンジ。
「B級ランク戦始まりましたねー!」
女主人公は諏訪隊のメンバーと一緒に、ラウンジで今度のB級ランク戦ROUND2の作戦会議をしていた。
「次、どこだ?」
「たしか、荒船隊と玉狛第2ですね」
笹森が答えると「玉狛第2ってあれだろ?あの白いチビがいるとこだろ?」と諏訪が言う。
「風間さんと引き分けたメガネくんがいる部隊です」
「あの記者会見に出てた三雲くんですね!」
「ああ。女主人公はなんだか嬉しそうだな?」
女主人公がキラキラした顔をしていることに気づいた堤がそう聞くと、女主人公は「はい!三雲くんはわたしの憧れなんです!」と答えた。
「憧れ?あの白いチビじゃなくて、あのメガネにか?」
「あの記者会見で、ヒーローにはなれなくてもできることを精一杯やることの教えてもらったので!」
そう言ってニコニコしている女主人公を見て、小佐野は「女主人公がかわいい」と言いながら女主人公の頭を撫でる。
「そうかよ。だからって勝負で手を抜くなよ」
「抜きませんよ!それとこれとは話が別です」
「それならいいけどよ。んで、どんな戦い方すんだ?」
「昨日の試合見てないんですか!?スナイパーの子がヤバいんですよ!」
「全員知ら〜ん」
「それじゃあ試合のログ見ましょうよ!」
笹森は携帯を取り出すと、昨日の玉狛第2の試合を流した。
「おお!!?」
「おおお〜!!」
4人は画面を覗き込みながら大きな声を出す。
「なんだこりゃ、大砲じゃねーか!!」
「白い子もやっぱ動きいいですね」
「白い子くるって回ってほいって感じですね!」
「女主人公の残念な語彙力…」
「どっちもちっちゃい」
笹森は「スナイパーの子、レイジさんの弟子らしいですよ」と補足する。
「なにィ!?身長差がおかしなことになんだろ!!何考えてんだ、あの筋肉ゴリラ!!」
「レイジさんは頭いい筋肉だよ?」
「頭悪い筋肉もいるの?」
「女主人公先輩、おサノ先輩、脱線してます」
堤が「レイジさんが師匠ってことは、基本がしっかりしてそうですね。白い子のほうも、ソロで緑川に勝ったらしいです。たしか8-2」と言うと、諏訪が驚いた。
「8-2!?」
それを聞いた諏訪は「日佐人、おまえ緑川と10本ならいくつ引ける」と聞いた。
「一回だけ、まぐれで4本取れました」
笹森が答えると、諏訪は一瞬黙り「よし日佐人、白チビを2秒止めろ。俺たちが吹っ飛ばす」と言う。
「それ、オレも吹っ飛ぶやつですよね?」
「さ、さすがに日佐人くん一人を吹っ飛ばすことはしないよ!わたしも一緒に吹っ飛ばされるよ!」
女主人公はフォローをしようとするが「それ、フォローになってないですよ」と笹森に冷静にツッコみを入れられる。
「まあ、スナイパーの方は1発撃ってくれりゃあ、2発目撃つ前に捕捉できんだろ」
「たしかにそうですね」
「白チビが緑川とソロ戦してるログ、見返しておくか」
「わたしも見たいです!」
堤は「作戦はどうします?いつも通り、俺たち二人で近づいて行って、カメレオンで姿を消した女主人公と日佐人に奇襲させる形にしますか?」と聞く。
「そうだな…。白チビは刺し違えてでもって感じだろうな。1対1でやるには分が悪い…」
「メガネくんは、見ている限り発展途上って感じなので、1対1に持ちこめれば逆に落としやすいと思います」
「だな。後はスナイパーは、もうどうにでもなれって感じだな」
「捕捉したら女主人公が張り付いてくれ」
「隙を見て落としますね!」
女主人公は「あとは、荒船隊ですよねー」と言った。
「正直、玉狛第2よりも荒船隊の方がめんどくせーだろ」
「全員スナイパーですもんね」
「まあ、全員スナイパーの荒船隊がいる以上、高台の多いマップは選ばないだろうけどよ」
「だといいんですけど。メガネくんは、こっちが考えつかないようなアッと驚く手を使ってくるイメージがありますよね。風間さんとのソロ戦を見る限りですけど」
堤の言葉を聞いて「そんなにすごかったんですか?三雲くんと風間さんのソロ戦?」と女主人公が質問する。
「最初は、誰にでも思いつくことをやるんだけど、最後の一手に驚かされたよ」
「へー!わたしも見たかったです!」
「あれは非公式だったからログも残ってねえな」
「わー、残念」
諏訪は「うっし!」と言って気合を入れた。
「とりあえず、あとは当日、どこのマップを選んで来るかで最終詰めるぞ」
「わかりました!」
「了解〜」
諏訪隊の作戦会議が終わったタイミングで、水上がラウンジにやって来た。
「あ!水上くん!」
「お疲れさん」
「おー、水上」
「みなさんおそろいで」
水上は女主人公の後ろに立つと「作戦会議?」と聞く。
「うん!来週の水曜日の、ROUND2の作戦会議してたよ」
「ほーん。次は、たしか荒船隊と玉狛第2とやったっけ?」
「そう!あの三雲くんがいる部隊だよ!」
そう言ってニコニコしている女主人公に、水上は「アホ面」と言いながら軽くデコピンをした。
「うへ!」
「他の男の話をアホ面でするんわ浮気やで」
「う、浮気じゃないもん!」
「それじゃあその緩んだ顔をどうにかせい」
「はーい」
女主人公は両手で両頬を持ち上げた。
「物理的に上げてますね」
「イチャイチャすんなら家でやれ」
「諏訪さん、男の嫉妬は醜いよ〜」
「いやー、二人は相変わらず仲が良いね」
女主人公は顔を赤くしながら「はい!ありがたいことです、本当に」と言った。
「そら、もちろん。なんてったって、将来を誓い合った仲ですから」
「み、水上くん!」
「水上ー、おまえ最近開き直ってねえか」
正々堂々と惚気る水上に、諏訪はあきれた顔をした。
「そうですか?元々こんなんですよ」
「んなわけあってたまるか!」
「まあまあ諏訪さん。いいじゃないですか、微笑ましい」
水上は「作戦会議は終わったんですか?」と聞く。
「おう。女主人公のことは好きにしていいぞ」
「もう帰るん?」
「うーん、どうしようかな。一週間来れてなかったから、ソロランク戦でもしてこようかな」
「ほんならブース行こか?」
「うん!」
女主人公は立ち上がると「それじゃあ、わたしたちはC級ブースに行ってきます!」と諏訪達に伝える。
「おー。あんまり無理すんなよ」
「はい!ありがとうございます」
「女主人公先輩、ランク戦頑張りましょう!」
「うん!」
「またね〜」
ラウンジを出て行く女主人公と水上の後ろ姿を見守りながら「いやー、良かった良かった」と小佐野が呟く。
「あんなことがあって、一時はどうなるかと思ったけどな」
「あのことがあったからこそ、前よりも仲が良くなってる気がしますね」
「本当ですね!良かったです」
女主人公と水上の関係が変わってしまうのではないかと心配していた諏訪隊は、今まで以上に仲の良い二人の姿を見て安心した。