「ユズルを欲しがるやつが多かったから大変だったぜ!さすが、アタシの強運!」
ヒカリちゃんは、じゃんけんでユズルくんを勧誘する権利を得て、見事にユズルくんを説得してくれた。
「いいよ。入るよ。どうせどこかに入ろうと思ってたし」
「よく来たなーユズル!歓迎するぜ」
「こんにちはユズルくん。よろしくね」
「よろしくねーユズル!」
「しっかりやれよ!」
みんなに歓迎されて、少し照れているユズルくん。
まだ中学1年生なのにしっかりしていてえらいな。
ユズルくんは入隊してからすぐ、鳩原さんという師匠さんのもとで技術を学んでいた。
鳩原さんは、雅人くんたちと同じ学年の女の子で、二宮隊のメンバー。
前に、ちらっと見かけたけど、ユズルくんの師匠さんだし、同い年の戦闘員だから、ぜひお知り合いになりたい。
私の代は、オペの子はたくさんいるのに、戦闘員をしている子がいない。
だから余計、鳩原さんとは仲良くなりたいと思っている。
今度、ユズルくんか雅人くんに頼んでみよう。
「あーもう、この組織には普通のシューターはおらんのかいな」
聞きなれない関西弁が聞こえてきて、私は声のする方に顔を向けた。
ここはC級ブース。
いつものように、雅人くん、荒船くん、鋼くんがソロランク戦をしているので、それを見学している。
やっぱり強い人の動きを見るのは、勉強になる。
そんなブースのロビーに、オレンジの髪の毛のけだるそうな男の子が座っていた。
「シューターにはクセの強い人しかおらん。参考になるかい」
「わかる」
「!?」
「あ、思わず」
あまりにもこの男の子の言っていることに共感できすぎて、思わず声に出てしまっていた。
「びっくりしたわ。俺、声に出とった?」
「それはもうばっちり」
「あかんな、無意識やったわ」
「全然。私もシューターだから、その気持ちよく分かるよ」
たしかに、このボーダーにはクセの強いシューターが多い。
アタッカーやスナイパーにもクセの強い人はいるけれど、分母が多いのであまり気にならない。
だけど、シューターはもともとなる人の数が少ない。
それは、シューターの上位陣のクセがあまりにも強すぎるから、普通のシューター希望の人たちが萎縮してしまうからだと勝手に思っている。
二宮さん。
トリオンお化けで火力ゴリ押し。
向かってくる敵は、火力でねじ伏せるタイプ。
もちろん技術もあるけど、それ以上に火力がえぐい。
加古先輩。
火力はもちろんあるけれど、トリッキーな技も使ってくるタイプ。
時間差攻撃や、突然攻撃が来たりととにかく攻撃が読めない。
雅人くんもやりにくそうにしている。
出水くん。
トリオンお化けその2。
だけど合成弾を生み出した天才でもある。
圧倒的な火力とコントロールで右に出るものはいない。
こんな感じで、この3人を見ていると、シューターには向いてないかな、と思ってしまう人も多そうだ。
「もしかして、関西からのスカウト組?」
「せや。水上敏志な」
「私は苗字女主人公。影浦隊所属です」
「苗字ちゃんな。よろしゅう頼んます」
ポンポン、と水上くんがソファーを叩いて、隣に座るよう促した。
「ありがとう。水上くんも迷ってるの?」
「せやな。シューターにするか、アタッカーにするか。スナイパーは性に合わん」
「最初は迷うよね」
「俺の他に二人、関西からのスカウト組がおんねんけど、多分その人たちとチーム組むことになんねん」
「そうなんだね」
「ほんで、一人はアタッカー、一人はスナイパーで決めてもうたみたいやから、チーム単位で考えると俺はシューターにした方がええんちゃうかなーって思っててんけど」
「シューターはトリオン強者で火力ゴリ押しの人たちばっかだから迷ってた?」
「そんなとこやな」
水上くんは、お手上げといったポーズをした。
「俺はトリオンは多ないねん。そんな俺でもシューターができるんかなーって心配になっててん」
「なるほどね。私も実際はそこまでトリオン多くないけど、シューターできてるよ」
「せやかて苗字ちゃんも6以上はあるやろ?」
「まぁね」
「俺、トリオン5しかないねん」
トリオンの数値が5なのに、スカウトされるということは、トリオン能力以外のところで水上くんはスカウトをされているはず。
「水上くんの得意なことって何?好きなことでもいいよ?」
「せやなー…落語とか将棋やな」
「渋いね。でもそっか、なんとなくだけど水上くんの求められていることが分かったかもしれない」
「ほんま?」
「うん。水上くんが一緒にチームを組む人たちの中で、司令塔になれそうな人っている?」
「うーん、そう聞かれるとおらんなぁ」
「水上くんの話を聞いてると、みんな自由奔放って感じだよね」
「まさにやな」
「水上くんがまとめ役になって、みんなをフォローしたりできるんじゃないかな」
そう言うと、水上くんは「なるほど」と言って少し考えているようだった。
「シューターって、どっちかっていうと本来は火力でゴリ押すんじゃなくて、味方の連携とか援護する感じで動くのが正解なのかなって思ってるんだ。そりゃぁ自分で点が取れたらかっこいいけどね」
「せやな」
「だけど、私は二宮さんたちみたいに圧倒的な火力で敵をねじ伏せる、っていうやり方はできないから。自分にできるやり方で、チームのために動ければいいなって思ってるよ」
「…そうやな。なんだか腑に落ちたわ。苗字ちゃんおおきに」
「全然。少しでも参考になればよかった」
「シューターの先輩として、色々教えてな」
「私で力になれることがあれば、気軽に聞いてね」
「ほんならトリガーセット変えてくるわ」
「うん」
水上くんは、そう言うと席を立った。
「これ、もしかして迅さんの言ってた悩める男の子?」
迅さんが言ってたのは、水上くんのことだったのかな?
同じシューターとして、一緒に頑張れたらいいな。