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お出かけをした日の帰り道。
雅人くんが照れくさそうにしながら「今日の恰好、いいんじゃねーか」と褒めてくれた。

「ありがとう!雅人くんもかっこいいよ」
と褒め返したら、照れ隠しで怒られてしまったけど。

「コレ、やる」
「これは?」
「いいから開けてみろ」

そう言って、雅人くんからもらった小さな箱を開けてみると、中には可愛いネックレスが入っていた。
誕生石が付いた、シンプルなネックレスでとても可愛い。

「少しはえーけど、クリスマスプレゼント」
「雅人くん…ありがとう。嬉しい」
毎年、誕生日はプレゼントをもらったりご飯に行ったりしているけど、クリスマスはうちの家族と雅人くんの家族の合同パーティをしていたから、プレゼントはなかった。

「クリスマスは初めてだね」
「まぁ…高校離れて過ごす時間が減ったからな」
「私がさみしくないように?」
「そーゆーこった」

雅人くんが少し赤くなった顔を隠すように、マスクを上にあげた。

「大切にするね」
「おー」

そう言って先を行こうとする雅人くんに駆け寄って、手を握った。

「雅人くん大好き」
「へーへー」







雅人くんからもらったネックレスをして制服を着る。
制服を着てしまえば、少しチェーンが見える程度なので、これなら校則も厳しくないし大丈夫だろう。
私のことを想いながら選んでくれたプレゼントだから、できる限りつけておきたい。
普段、こんなサプライズをする人ではないから余計に嬉しくなった。
私も雅人くんへのクリスマスプレゼントを買いに行こう。


「苗字さん、なんだか今日はご機嫌だね!」

学校に着くと、体育祭をきっかけに仲良くなった鈴木さんが話しかけてきた。

「おはよう。そうかな?」
「うん!」
「昨日良いことがあったからかな」
「そうなんだ!彼氏?」
「違うよ」
「そっかー。苗字さんって本当に荒船と付き合ってないの?」
「付き合ってないよー」

荒船くんの名誉のためにも、直接聞いてくれる人には付き合っていないことを説明している。
ただ、信じてくれる人と照れ隠しだと思ってる人が半々くらいだけど。

「二人はお似合いだと思うんだけどなー。荒船だって、好きじゃなきゃボディーガード役やらなくない?」
「荒船くんは私の幼なじみに頼まれてるから、仕方なくだと思うよ。あとは単純に優しい」
「えー、でも荒船って、意外と冷たいよね?苗字さんだから優しくしてる可能性もありそう」

そんなことないと思う。
荒船くんは、ボーダーでも年下の子たちに優しいし、冷たいというよりも物事をハッキリというからオブラートがないだけ。

「おう、人がいないところで勝手な話してんな」

と、そこに荒船くんがやってきた。

「おはよう荒船くん」
「荒船ー。本当に苗字さんのことなんとも思ってないわけ?」
「朝っぱらから元気だな。友達の大切な幼なじみって感じか」
「間違いない」
「あんたらも友達でしょうが」
「まぁな」
「でも私の幼なじみと仲良くならなかったら、私とは友達にならなかったでしょ?」
「いや、そんなことはない。女主人公とは普通に友達になってただろ」
「可愛いから?」
「可愛いから」
「適当な返しをしないで荒船くん」

私があきれながら言うと
「ま、普通に女主人公は好みだぜ。お前に溺愛する幼なじみがいなければ、の話だけどな」
「はいはい」
「そんなに幼なじみと仲良いんだね」
「普通だよ」
「お前らは普通じゃねーくらい仲良いだろ」

そうなのか。
私はこれが普通だと思っていたけれど、世の中の幼なじみさんたちの様子が知りたい。

「それでもその幼なじみの言う通り、ボディーガードする荒船も愛だね〜」
「友愛な」
「荒船くんには本当迷惑をかけてると思うから、今度お礼するね」
「そんじゃ、とりあえず今日の昼メシ奢れ」
「了解」


お昼休み、私は荒船くんのお昼をご馳走するために食堂に来ていた。

「今日はA定食にするかな」
「美味しそう」

荒船くんが列に並んでいる間に、私は空いている席を探して座った。

「ちょっと相談なんだけどよ」

A定食のから揚げを食べながら、荒船くんが口を開いた。

「相談?私でいいの?」
「おー」
「何?恋愛系?」
「んなわけあるか」

なんだ、ちょっと残念。
荒船くんの恋愛話が聞けると思ったのに。

「じゃぁボーダー関係?」
「あぁ」
「なんだろ、ますます私でいいの?」
「お前がいいんだよ」
「はーい」

ボーダーでは荒船くんの方がポイントも高いし、周りにも好かれているし、私で役に立てるだろうか。

「もうすぐ弧月がマスターになるんだけどよ」
「そうだよね」
「まぁ太刀川さんとかカゲ、鋼とやったらまたポイントが足りなくなりそうだけどな」
「あの三人とやってたら、なかなか大変だよね」
「それはそれで面白いからいいんだけどな」

荒船くんは本当に楽しそうに笑った。

「で、俺さ。マスターになったらアタッカー辞めようと思ってるんだ」
「…え!?」
「声がでけぇ!」

おっと。
あまり大きな声を出さない私の声に驚いたのか、荒船くんもつられて大きな声を出した。
周りが一瞬こちら見たが、ガヤガヤしている食堂のおかげで、あまり目立ちはしなかった。

「なんで??」
「アタッカーからスナイパーに転向しようかと思ってる」
「そうなんだ」
「木崎さんいるだろ」
「うん。玉狛支部の人だよね?荒船くんが目標にしてる人」
「あぁ。あの人、パーフェクトオールラウンダーなんだよ」
「ぱ…ぱーふぇくとおーるらうんだー…」
「あぁ。木崎さん以外にパーフェクトオールラウンダーがいない」
「パーフェクトってことは、全部でマスタークラスってことだよね」
「おう。これからのことを考えると、パーフェクトオールラウンダーは何人いてもいい。だけど現状、まだ一人しかいない。だったらパーフェクトオールラウンダーになれるようなメソッドを理論で一般化させれば量産できるんじゃないかって思ってる」
「大きな夢だ」

荒船くんは、ボーダーのこれからのことを考えている。

「まずは俺自身がパーフェクトオールラウンダーになって、誰でもなれるってことを証明しようと思ってる」
「なるほどね。だから次はスナイパーなんだ」
「そうだ。ただ、まだアタッカーでマスターいってないから誰にも言うなよ」
「うん」
「でも、本当にできるかどうか心配ってのもある」

「大丈夫だよ」

自分自身のことだけじゃない、ボーダーの未来のことを考えて動こうとしている荒船くんのことを、単純にすごいと思った。

「荒船くんがしっかり考えて、できると思ってできた計画だもの。絶対大丈夫」
「…ありがとな」
「何かあれば手伝うし。私もオールラウンダーは目指してるから、荒船くんのメソッドで助けてね」
「おう。女主人公ならそう言ってくれると思ってたぜ」
「そしたら、まずは弧月のマスターまで頑張ってね」
「来年の頭くらいにはスナイパーに転向できるようにやってみるわ」
「うん!」

お昼も食べ終わり、私たちは教室に戻った。

ん?
でも、今の荒船隊って、穂刈くんも半崎くんもスナイパーだけど、荒船くんまでスナイパーになったら、スナイパー3人部隊になるけどいいのかな?
それはそれでも面白い、って思ってそうだけど。



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