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「ユズル、今日も自主練?」
「そう。鳩原先輩に見てもらう」
「鳩原さんによろしくね」

ユズルくんの師匠の鳩原さんは、私と同い年。
学校が違うから、ランク戦の前にあいさつをする程度であまり話したことはないのだけれど。

「射撃の腕は一番すごいと思ってる。人が撃てないけど、その分相手の武器を壊したりしてポイントに貢献してるし」
とユズルくんがいつも褒めている。

「ゾエくんは何するの?」
「ゾエさんは犬飼くんたちガンナーで集まろうって話してるから行ってくるね」
「そっか。いってらっしゃい」

今日はヒカリちゃんもオペの集まりがあるらしいのでいない。
影浦隊の作戦室には、私と雅人くんの二人きりになった。

「なんだか久しぶりね」
「そうか?」
「みんなでワイワイするのも楽しいけど、雅人くんと二人でいる静かな時間も好きよ」
「何言ってんだよ」

こたつに入って寝転んでいる雅人くんの隣に座る。

「せめーだろ」
「寒いんだもの」
「トリオン体だろうが」
「雅人くんにくっついていたいの」
「なら昼寝に付き合え」
「はーい」

私たちは、仲良くこたつに入って目を閉じだ。







「あらら、寝てるよ」
「叩き起こせ」
「ちょまちょま、荒船くん乱暴だよ〜」
「仲良く寝てんだろ、そのまま寝かせてやれよー」
「このままにしておくか、カゲと苗字」
「こたつで寝てて、風邪ひかないか?」
「トリオン体だし、大丈夫だろ」
「俺は腹減ってんだよ!さっさと起こせ」

うーん…なにやらうるさい。
目を開けると、ゾエくん、ヒカリちゃん、荒船くん、鋼くん、穂刈くんがいた。

「…何してるの?」
「腹減ったからメシ。かげうら行こうって連絡入れたのに、お前らが未読無視だったから迎えにきたんだよ」
「そうだったのね。ごめん、寝ちゃってた」
「見りゃ分かる」

身体を起こそうとしたら、身動きが取れなかった。

「雅人くん」
「…ん…」

雅人くんが私の腰にまとわりついている。

「雅人くん起きて」
少し雅人くんの身体を揺らすと、余計力が入った。
「うーん。雅人くんって結構寝起き悪いから」
「想像通りだ、オレたちの」
「とりあえず叩き起こすぞ!」

荒船くんが近づいてきて、雅人くんに触れようとした瞬間。

「おいこら、やれるもんならやってみろ」
「あ、起きた」
「おめーの感情が刺さってきたんだよ」

荒船くんたら、いったいどんな感情を刺していたのかしら。

「雅人くん、みんなかげうらに行きたいんだって」
「あ?勝手に行け」
「お前も来るんだよ」
「もうこんな時間。お昼寝って時間じゃなかったね」

雅人くんはこたつから出ると体を伸ばした。

「たく、しゃーねーな。行くぞ」
私たちはみんなでかげうらに向かった。


一つのテーブルだと座りきれなかったので、私とヒカリちゃんは隣のテーブルに座った。

「カゲー!アタシたちの分まで焼け!」
「自分で焼け!」
「雅人くんの焼いたお好み焼きが食べたいな」
「しかたねーな」
「ちょ!アタシとの扱いの差!」

ヒカリちゃんと雅人くんがワイワイしている姿を見るのは楽しい。
結局、雅人くんが私とヒカリちゃんの分まで焼いてくれたのでありがたく頂く。

「鋼、おめーポイントどんくらいだ?」
「もうすぐマスターになる。7000ちょっとくらいだったかな」
「オレもなるぞ、そろそろ6000ポイントに」
「すごいな穂刈」

男子のテーブルは、ポイントの話になっている。

「女主人公だってすごいのにな!」
「あっちのメンバーと比べたらまだまだだよ」
「スコーピオンも、もうすぐ5000だろ?」
「まだまだ先は長いよ」

サイドエフェクトのおかげもあってか、スコーピオンは扱いやすくて順調にポイントをゲットしている。
オールラウンダーまだあと少し。

「鋼くんは、すぐマスタークラスになりそうだね」
「荒船のおかげだな」
「当たり前だろ。俺が教えてるんだからな」
「ま、そしたらまたポイントぶん取ってやるよ!」

楽しそうで何より。

「そういえば女主人公。烏丸と付き合ってるって本当か?」
「!?」

危ない。
危うく飲んでいたオレンジジュースを吹き出すところだった。

「な、なにそのデマ…」
「あれ違うのか?なんか烏丸が女主人公とのツーショット写真を携帯の待ち受けにしてるって噂になってたぞ」
「え…」

ツーショット写真?
そんなもの撮ったっけ?と記憶をたどっていくと、確かに撮った。
烏丸くんが玉狛支部に異動するって話を聞いた時に、太刀川隊の隊服を着た烏丸くんと、確かにツーショットを撮った。
だけど、それを待ち受けにしてるって、そんな話知らない。

「確かに写真は撮ったけど」
「じゃぁやっぱ付き合ってるのか?」
「付き合ってないよ」

私はキッパリと否定した。

「まじか。なら烏丸のファンが怖い顔して聞きにきたから、アタシがちゃんと否定しとくな!」
「恐ろしい…」

今度烏丸くんに連絡をして聞いておかないと。



さっきまで静かにしていた穂刈くんが「オレも聞かれたな、この前」と言った。

「あ?女主人公関係のことか?」
「あぁ。付き合ってるのか、荒船と、と」
「俺かよ」
「そこはカゲじゃないんだな」

学校で荒船くんとのことを聞かれることはあっても、ボーダーで聞かれたことは今までなかったのに、なぜだろう。

「なんだかんだ苗字と一緒にいる機会が多いだろう、荒船は」
「まぁ学校も同じだからな」
「C級の訓練生だったかな」
「くだらねーこと聞いてくるやつはどこにでもいんだな」
「みんな気になってるんじゃないのか、女主人公が誰と付き合っているのか」

そう言うと、雅人くんが笑いながら「誰と付き合ってんだ?」と問いかけてきた。
知ってるくせに、こういう時は意地悪だ。

「誰とも付き合ってないよ」
「こんなに揃っているのにな、いい男が」
「は!ちげーねー」

雅人くんが、こういった話にノッってくるのは珍しい。
いつもなら、私に関する恋愛の話はしたがらないのに。
という感情を刺していたら、雅人くんに気づかれた。

「こいつらはちゃんとおめーのこと見てんだろ」
「…そうだね」

私の外見じゃなくて、中身も知って仲良くしてくれている貴重のメンバーだから、雅人くんも嫌いなわけないか。

「カゲはいいのか?」
「あ?」
「誰かと付き合っても、苗字が」

「…別に。俺よりも女主人公のことを大事にするなら任せてもいい」
と言って、荒船くんのことをチラッと見た雅人くん。

「お前よりって、ハードル高いな」
「だろ」
「ま、あと一年はボディーガード役、任された」
「…頼りにしてんぜ」


この春、私たちは高校3年生になる。
後一年で高校を卒業して、大学に進学する人、ボーダーに就職する人、それ以外の人、と別々の道を進むことになる。
こうしてみんなで過ごせる時間も後少し。
今はただ、みんなと過ごせることに感謝して毎日を楽しんで過ごしていきたいな。



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