「ねぇ…最近B級の可愛い子からすごく睨まれてるんだけど…」
「はあ??」
女主人公は困っていた。
ここ最近、面識があまりないはずの、香取からめちゃくちゃ見られている。
「私、香取さんとは話したことないはずなんだけど、何かしちゃったのかな?」
「オレが聞いてくるか?」
「鋼くん…ありがとう。でも私の勘違いかもしれないし」
そう言って、チラッと後ろを見ると、やはり香取が女主人公のことを見ていた。
「今度B級の隊長会議があるから、その時聞いといてやるよ」
「荒船くん」
「女主人公、おめー何したんだよ」
「何かした覚えがないから困ってるのよ」
その様子を見ていた香取は「烏丸くんというものがありながら、あんなに男に囲まれて…」とぐぬぬしていた。
「ヨーコちゃん、あんまり見ると失礼だよ」
「これが見ずにいられるか!」
「一個上の先輩たちは女の人がオペばっかなんだろ。周りが男の人ばっかりなのは仕方ねーだろ」
「そうだけど!そうじゃないの!って!あああ!!」
香取の声に驚いて若村と三浦が女主人公たちの方を見ると、影浦が女主人公の頭を撫でていた。
正確には頭をぐしゃぐしゃにされていただけなのだが、香取からするとただの男女のいちゃつきにしか見えなかった。
「烏丸くん!荒船さん!さらに影浦先輩まで!!」
「確か、苗字さんと影浦さんは幼なじみじゃなかったかな?」
「そういう問題!?ただの幼なじみの距離じゃないでしょ!」
さらにがるがるしている香取。
そんな香取を若干引いた目で見ている香取隊のメンバー。
「葉子が気になるなら、本人に言ってきたら」
「華さん!なんてことを…!」
「…それもそうね!ちょっと行ってくる!」
「ヨーコ!」
そう言うと、香取は女主人公たちのいるテーブルに向かっていった。
そのあとを、若村と三浦は慌てて追う。
「苗字さん!」
「はい…」
香取はテーブルに着くと、即行動で女主人公の名前を呼んだ。
「ああ?なんだおめー」
「雅人くんは少し黙ってて」
香取の態度が気に入らないのか、影浦は少しイライラしていた。
「香取さんだよね?私に何か用かな?」
「あ、あの…」
「うん?」
「か…烏丸くんと付き合ってるのなら烏丸くんのことを大切にしてください!」
「…え?」
香取の大きな声で、周りの視線が一気に集まった。
「か、香取さん??落ち着いて」
「香取、お前何言ってんだ」
「荒船さんは黙っててください!烏丸くんと付き合ってるんですよね?なら烏丸くんが悲しむようなことはしないでください!」
香取の言葉に、周りの隊員たちも騒ぎ出した。
「烏丸くん彼女いたの?」
「え、苗字さん?」
「ショックー。でも苗字さんなら仕方ないって思える」
「あのね!」
騒いでいる周りの隊員にも聞こえるように、女主人公はいつもは出さないような大きな声を出した。
「誰から聞いたのかわからないけど、烏丸くんと付き合ってないよ」
女主人公はハッキリと否定した。
「嘘!だって烏丸くんとの写真も見たし」
「あれは烏丸くんが太刀川隊を辞めるって話をしてる時に、記念に撮っただけだよ」
「でも!烏丸くんが言ったんです」
「私と付き合ってるって?」
「…正確には…覚えてないけど…」
そこで、三浦が助け舟を出した。
「ごめんなさい!あの時烏丸くんは心に決めた人がいるって言ったんです。しかもそのあと嘘だって」
「嘘!?そんなこと言ってた?!」
「言ってたよー!何度も説明したよ!」
「ヨーコが聞いてなかっただけだろ!」
香取は驚いた顔をした。
「でも!だって烏丸くんが写真を待ち受けにしてて、それでそのあとそのセリフで」
「香取さん、勘違いしちゃったんだね」
女主人公は席を立つと、香取の手を取った。
「香取さん、安心して。私と烏丸くんは付き合ってないよ」
「…ごめんなさい」
「わかってくれてよかった」
そう言うと、香取は女主人公から顔を逸らした。
「お騒がせしました」
「別にいいけどよー。もっと考えて行動しろよ」
「ちょっとびっくりしちゃったね」
と、ここまで黙っていた雅人くんが「ざけんなよ…」と低い声で言った。
「もとはと言えば、あのもさもさのせいだろうが!」
そう言うと「あいつを呼べ!ぶっ殺す!」と叫んだ。
「カゲ、落ち着け」
「落ち着いてられるか!とりあえずブースに入れてボコボコにしてやる!」
その話は、あっという間にボーダー内に広まり、烏丸の身を心配した佐鳥が「とりまる、お前はほとぼりが冷めるまで本部に来るの禁止!」と伝えた。
にも関わらず、烏丸が本部にやってきて、影浦に捕まり、ソロランク戦に連れていかれそうになった。
「俺、玉狛のトリガーなんでランク戦できないんす」
「今すぐ本部のトリガー持ってこい!」
「俺のを貸してやるよ」
荒船が烏丸にトリガーを貸して、烏丸はブースに。
「烏丸くん大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。なんだかんだ、あいつも元A級1位の太刀川隊だろ」
玉狛に異動して、本部のランク戦に参加できなくなった烏丸なので、久しぶりに見る人も多く、ギャラリーがどんどん増えていった。
「荒船くんがトリガー貸すとは思わなかったよ」
「カゲほとじゃないけど、俺も怒ってるからな」
「なんで?」
「女主人公と付き合ってるって否定せずに面白がってただろ」
「確かにね」
「女主人公の彼氏(仮)は俺だからな」
「…まったく、適当なことを言う」
自分のトリガーではない烏丸が負けたようだ。
烏丸に勝って落ち着いたのか、ブースから出てきた影浦はスッキリとした顔をしていた。
「これに懲りたら変な噂流すなよ!」
「流した覚えはないんすけど、気を付けます」
「あたりめーだ!」
二人が女主人公たちのもとに着くと「お疲れ様」と女主人公は声をかけた。
「女主人公さん、ありがとうございます。変なことに巻き込んですみませんでした」
「いいよ。烏丸くんもわざとじゃないのは分かってるし」
「はい」
「これからは面白がらずにちゃんと否定してね」
「分かりました」
「今度は俺も相手になるからな!」
「荒船さんも…。女主人公さんの周りには優秀なボディーガードが多いすね」
「本当にね」