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「苗字さんって荒船くんと仲が良かったよね。荒船くんがどこにいるか知ってるかい?」
「荒船くんですか。ちょうど、今からラウンジで待ち合わせているのですが、来馬さんも一緒に来ますか?」
「本当かい?ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「それじゃぁ一緒に行きましょう」







荒船くんがスナイパーに転向してから、色々噂話をされているのは知っていたけど、まさか鋼くんにポイントを抜かされたせいでスナイパーに転向したという説が一番有力で、それを鋼くん本人も気にしてるとは思わなかった。

「来馬さん、どうしたんですか?」
「荒船くん、ごめんね。今大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「えっと…アタッカーをやめたことなんだけど…」

と言うと、来馬さんが私の方をチラッと見た。

「私は席を外そうかな」
そう言って立ち上がろうとすると、荒船くんが私を止めた。

「別にいていい。来馬さんも大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。荒船くんが気にしないなら大丈夫だよ」
「すみません」
「ううん。実はさ…」

鈴鳴支部で鋼くんが泣いていたらしい。
来馬さんたちが話を聞いてみると、荒船くんがアタッカーを急にやめたのは自分のせいだと思っているらしい。
やるべき苦労をしないで、サイドエフェクトでみんなの努力を盗んでいるから、みんながどんどん離れていく、と。

「荒船くんは、アタッカーをやめた理由を言ってなかったから鋼がそうなんじゃないかって気にしてて」
急にごめんね、と来馬さんは謝った。

「それは、あの馬鹿の考えすぎですね」
荒船くんは、ハッキリと否定した。

「元々8000点取れたらやめるつもりだったんですよ。言い訳くさいんで他人には言ってないですけど…」
そう言うと、荒船くんは私の方を見て
「女主人公には前もって相談してます。な?」
「うん。荒船くんには大きな野望がありまして」

「そうなんだ。じゃぁ鋼が原因ってことはないんだね」
来馬さんはほっとしたような顔をした。

「…まぁ点を抜かれたのはショックだったし、アタッカーはあいつにやらせとけばいいかとは思いましたよ」
荒船くんも少なからずショックだったんだな。
まぁ負けず嫌いのところがあるし、納得。

「俺の理論でマスタークラスまで来れることは証明できたんで、次はスナイパーでマスター狙うつもりなんです」
「その次はガンナーだよね」
「おう。木崎さん以来のパーフェクトオールラウンダーを目指します」

来馬さんは、荒船くんの話を聞くと、納得してくれたようだ。

「目指せ、パーフェクトオールラウンダーの量産」
「鋼とは方向性が違いますね」

「そうだったんだね。じゃぁ…それを鋼にも言ってやってもらえないかな?」
「…?」
「あぁ、携帯のムービーでも撮りますか?」
「うん」

そう言って、来馬さんは携帯を取り出した。
動画を撮り終わると、来馬さんは「二人ともありがとう。これで鋼も元気になると思う」と言って、鈴鳴支部に帰っていった。



「…だから近しい人にはちゃんと言ったらって言ったのに」
「まさか鋼がそう思ってるとは思わなかったな」
「もう。めんどくさがり屋なんだから」

この前C級ブースで声をかけられたとき、鋼くんの元気がなかった理由はこれだろうな。
とりあえず、誤解が解けそうでよかった。

「他にも勘違いしてる人いそうだけど」
「いちいち訂正するのもバカらしいだろ」
「荒船くんが気にしないならいいけどね」
「スナイパーでもさっさとマスターになればいいだけの話だろ」
「それもそうだね」

さすが、男・荒船。頼もしい。



「あの…」

そのまま荒船くんとご飯を食べていると、C級の女の子に声をかけられた。

「荒船さん」
「ん?」

その子は荒船くんに用事があるみたいだ。

「荒船さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「ここだとちょっと…」
「メシの後でもいいか?」
「分かりました。そしたらお待ちしてます」

そう言うと、その子は少し離れた席に座った。
私は小さい声で荒船くんに話かける。

「あんな態度じゃ怖いよ…」
「はぁ?怖くねーだろ。メシ食ってるときに話しかけてくるほうが悪い」
「もう…どう見ても荒船くんに好意を持ってる子なんだから、優しくしてあげなよ」
「…お前は俺が他の女に優しくしてもいいのかよ」
「子どもみたいなこと言わないでよ」
「うるせー。正直めんどくさいんだよ」

まったく。
荒船くんはモテる。
少し怖そうな雰囲気があるから犬飼くんよりはモテないけど、なんだかんだとってもモテる。
学校では、私の存在があってあまり呼び出しは多くないけど(荒船くんのことを好きな子たちに申し訳ない)、ボーダーではそこそこ呼び出されているようだ。
ただ、犬飼くんと違ってモテたいという気持ちはあんまりないみたいで、結構女の子たちに冷たく対応するからこっちがハラハラしてしまう。

「前も言ったけど、今はボーダーで頑張りたいんだよ。だからこれでいいんだよ」
「ちゃんと対応はしてあげなよ」
「対応してるだろ」

と、そんなやり取りをしていると、さっきの女の子が友達を呼んだようで、4人に増えていた。
そして、荒船くんに話しかけた女の子がこちらを睨んでいた。

「荒船くん!早く行ってあげてよ」
「気が強そうだな。ますますめんどくさい」
「そんなこと言ってないで」
「俺の好みは落ち着いてて性格がいい女なんだよ」
「はいはい、聞いてないから早く行きなさい」

そう言って、荒船くんを押した。
ぶつぶつ文句を言いながら、荒船くんはあの女の子たちのテーブルに向かい、話しかけてきた女の子と荒船くんは、別の場所に移動していった。

「あの」
その場に残っていた、あの子の友達であろう女の子たちに話しかけれた。

「はい?」
「苗字さんって、荒船さんと付き合っているんですか?」
「付き合ってないです」
「なら、あんまり荒船さんと一緒にいるの、やめてもらえますか?」
「そうですよ!あの子、荒船さんのこと好きなんですよ」
「うーん…同じクラスだし、一緒にいないってことは難しいかな」
「ならもう少し距離感を考えてくれませんか?」
「近かった?」
「近いですよ!付き合ってない男女の距離感じゃないと思います!」
「それはごめんなさい」

なぜ私は、年下の女の子たちにこんなに説教をされているのだろうか。
そう思っていると、ラウンジの入り口に雅人くんの姿が見えた。
あれは怒っている顔だ…。

「わかった!ちゃんと考えて接するから、今日はもう行くね。これから防衛任務なんだ」
「あ!苗字さん!」

何か言われる前に、私は雅人くんの方に向かった。

「雅人くん」
「…なんだあいつら」
「荒船くんのファンの子」
「…あいつも無駄にモテんな」
「まぁ仕方ない」
「何かあれば言え」
「ありがとう。でも大丈夫だよ」

私たちは影浦隊の作戦室に戻った。
荒船くんに何も言わず戻ってしまったので、後で荒船くんから怒りの連絡が入っていた。
申し訳ない。



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