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体育祭も終わって、もうすぐ期末試験が始まる。
そんな中、いつものように私と荒船くん、そして犬飼くんは期末試験の勉強をしていた。

ある程度勉強が進んだところで、犬飼くんが話しかけてきた。

「二人ともー、少し休憩しようよ」
「結構進んだな」
「そうだね。ちょっとお菓子でも食べる?」

買ってきたお菓子を開けて、少し休憩。

「でもさー、本当のところ、どうなの?」
「どうって?」
「苗字ちゃんって、カゲのこと好きなの?」
「急に恋バナが始まっちゃったけど、そんな流れだった?」
「お前は女子か」
「荒船くんだって気にならない?」

犬飼くんは荒船くんを見た。

「気にならないってのは嘘になるけど、言いたくないこともあるだろ」

荒船くんはさすがだな。

「そうなんだけどさー。なんか二人を見てると好き同士だからなのか、幼なじみだから一緒にいるのかわからないんだよね」

「うーん…そんなに気になる?」
「気になる」

面と向かってハッキリと聞かれることが、今までなかったから少し戸惑う。

「確かに、私は雅人くんのことが好きよ。ただ、私のこの想いは純粋な気持ちじゃない気がしてるんだ」
「そうなの?」
「うん」

私たちは、生まれる前から親同士の仲が良く、一緒にいることが決まっていた。
ただ、親同士が無理やりというわけれはなく、私たちがそれぞれの意思で一緒にいることを選んできた。
雅人くんのサイドエフェクトのこともあって、雅人くんと一緒にいられるのは私しかいない、と思っていた。

きっと、これは嫌な気持ち。
優越感のようなもの。
こんな気持ちを雅人くんに知られたら、多分一緒にはいてくれない。

「でも、みんなと出会って、雅人くんのことを理解してあげられる人って、私以外にもたくさんいるんだなって思ったの」

そう思ったら、私はただ幼なじみという立場を利用して、雅人くんと一緒にいるだけなんじゃなか。
ただ、雅人くんのことを縛り付けているだけなんじゃないか。

「この前雅人くんが言っていたみたいに、私も、私以上に雅人くんのことを大切にしてくれる人がいたら、譲らないといけないのかなって思ってるよ」

幼なじみという立場、サイドエフェクトのこと、何もかもがなくなった時、それでも雅人くん自身が、本当に私と一緒にいたいと選んでくれない限り、私はこの気持ちを伝えることはできない。

「私は、幼なじみという立場を利用して、雅人くんと一緒にいようとしてるだけなのかも」
「そんなことないだろ」
さっきまで何も言わずに聞いていた荒船くんが口を開いた。

「お前はちゃんとカゲのことが好きだよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「…そうかな?」
「お前らが一緒にいた18年間、それは嘘じゃないだろ」
「うん…」
「だからごちゃごちゃ難しいこと考えすぎんな!優越感だっていいだろ。実際お前はカゲの幼なじみなんだからよ!」
「…うん、ありがとう」
「そうだよ。苗字ちゃんなりにカゲと向き合ってきた結果だと思うし。誰よりもカゲのことを大事に思ってるってことじゃん!おれだったら、幼なじみだとしてもカゲと向き合い続けるのは無理だなー」
と笑いながら言った犬飼くん。

二人に話してよかったな。
私は、やっぱり雅人くんのことが大好きなんだと実感できた。

「二人ともありがとう」
「もしかしたら、カゲも同じように憶病になってるのかもな」
「雅人くんが?」
「あいつも女主人公と同じように、幼なじみだから一緒にいてくれてるって思ってるのかもな。腹割って話したら早いんじゃないのか?」
「…そうかな」
「関係性を壊すのが怖いかもしれないけど、一歩踏み出さないと何も変わらないよね。苗字ちゃんはカゲとこのままの関係でいいの?」
「…うーん…」
「カゲが他の女と付き合ってもいいのか?」

雅人くんが他の女の子と二人でいるところを想像すると「イヤかも…」と思った。

「だったら早めに二人で話せよ。もしフラれても俺がいるから安心しろ」

そう言って荒船くんは私の頭を乱暴に撫でた。

「荒船くん男前ー!」
「ありがとう」







自分の部屋で勉強をしていても、思い出すのは今日の話ばかり。
なかなか勉強に集中できない。
雅人くんと話したいけど、そもそもどうやって話を切り出せばいいのかわからない。
普段の会話の流れで「私のこと好き?恋愛的な意味で」と聞くのは、なんだか違う気がする。
恋愛初心者の私でも、ムードがないことだけは分かる。

「ううーーーん…」

「何うなってんだ」
「雅人くん!」
「ノックしてんのに気づかねーから勝手に入ったぞ」

私が考えるのに集中していたせいで、雅人くんのノックに気づかなかった。

「ごめんね。考え事してたよ」
「勉強で考え事って、珍しいな」

雅人くんは私の机に近づくと教科書を持ち上げた。

「うげー…意味わかんね」
「雅人くんは、もう少しちゃんと勉強しようね」

雅人くんの顔を見る。
やっぱりかっこいいな。
雅人くんはたくさんの人にモテるわけではない。
けど、一部に人気があるのは知っている。
中学のころも、一部の女の子たちが「影浦くんって男らしくてかっこいいよね」と話しているのを聞いたことがある。
だから、私以外にも雅人くんのことを好きな子はいるんだろうなと思う。

「何見てんだよ」
「…雅人くんがかっこいいなって」
「変なこと言ってんじゃねーよ」

そう言うと雅人くんが私のベッドに座る。

「…」
「…」
「なんか元気ねーな」
「そう?」
「いつもとちげー」
「…元気がないことはないけど」
「悩み事か?」
「…まぁそうね」
「なんかあったか?」
「大した事じゃないんだけどね。大丈夫だよ」

雅人くんには隠し事ができない。

「俺にも言えないことか?」
「俺にもっていうか、雅人くんのことだから」
「俺?」
「あのね、今度、試験が終わったらどこかに遊びに行かない?」
「いいけどよ」
「ありがとう。その時に話すね」
「…俺も話がある」

雅人くんから話があるって、珍しい。
まさか…

「な!なんで泣いてんだよ!」
「か…彼女でもできた?」
「はぁ!?んなもんできてねーよ!」

雅人くんは私の目元を拭った。

「急に泣いてんじゃねーよ」
「ごめん…」
「ビビったわ」
「私も驚いた」

雅人くんに彼女が…と考えただけで涙が出てくるくらい、私は雅人くんが好きなんだな。

「大丈夫か?」
「うん。ごめんね。お出かけ楽しみにしてるね」
「おー」

そう言うと雅人くんは自分の家に帰っていった。
まずは試験を片付けて、雅人くんとちゃんと話をしよう。
私の気持ちも、ちゃんと伝えよう。



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