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期末試験が終わり、夏休みに入る。
雅人くんとのお出かけは、花火大会になった。

「ずっと行ってなかったろ」

と、雅人くんが花火大会のチラシを持ってきてくれた。

「高校最後だから、ババアも女主人公と行ってこいってよ」
「いつもお店のお手伝いだったもんね。楽しみ」
「夕方まで店の手伝いすっけど、その後な」
「うん」







花火大会当日は、私もかげうらのお手伝いをして、時間になる1時間前に上がらせてもらった。

「女主人公ちゃん、今日はありがとうね!」
「いいえー。こちらこそ、今日は最後までお手伝いできなくてすみません」
「いいのよ!花火大会楽しんできて!」
「はい!」

いったん家に帰って、お母さんに浴衣を着付けてもらった。

「今日は雅人くんと花火大会なんでしょ?」
「うん」
「じゃぁ可愛くしないとね!」

と言って、張り切ってくれた。

「あんまり遅くならないように、雅人くんとはぐれないように気を付けてね」
「ありがとう!いってきます」

家を出ると、雅人くんが家の前にいた。

「連絡してくれたらよかったのに」
「今家出たんだよ」
「そっか」

雅人くんは黒色の浴衣を着ていた。

「浴衣、初めてみた」
「ババアと兄貴が着てけってうるせーから」
「かっこいいね」
「へーへー。女主人公も似合ってんじゃねーか」

と、雅人くんは私の恰好を褒めてくれた。

「ありがとう。雅人くんと花火大会って言ったら、お母さん張り切っちゃった」
「おばさんならやりそうだな」

雅人くんはそう言うと、私の手を取る。

「あぶねーからな」
「デートみたいだね」
「言ってろ」

私たちは花火大会のある駅を目指した。



「すごい人だねー!」

さすが三門市の一番大きな花火大会。
たくさんの人で溢れていた。

「雅人くん大丈夫?」
「夕方だし、みんな自分たちに夢中だろ。あんま刺さってこねーよ」
「そか」

私たちは、射的ゲームをして遊ぶことにした。

「ね!あれ可愛いよ」
「スナイパーじゃねーから取れねーよ」
「マンティスも同じようなものじゃない」
「全然ちげーわ」

文句を言いながら、雅人くんは私が欲しかったぬいぐるみを取ってくれた。

「おにいさんやるねー!可愛い彼女にいいところ見せられて良かったな!」
お店の人はそう言いながらぬいぐるみを渡してくれた。
彼女じゃないんだけどね。

「何食べたい?さっきのお礼に買ってきてあげる」
「お好み焼き」
「家で食べたほうがおいしいよ」
「ちげーねー。ならたこ焼きだな」
「じゃぁ買ってくるからちょっと待っててね」

雅人くんを近くのベンチで待たせて、私はたこ焼きを買いにいった。
列に並んでいる間、私はどうやって話を切り出すかを考えていた。

花火を見ながらだと音がうるさくてちゃんと話せなさそうだから、やっぱりご飯を食べながらかな。
たこ焼きを買って、雅人くんのもとに戻ろうとすると、知らない男の人二人組に捕まった。

「ねぇねぇ、君めっちゃ可愛くない?友達と来てるの?」
「よかったら俺たちも二人だからさ、一緒に回らない?」

「連れがいるので無理です」
「そう言わずにさー、いいじゃん!少しくらい」
「そうだよ。人数多い方が良くない?絶対楽しませるし、一緒に行こうよ」

もうしつこいなー、と思いながらなんて言うかを考えていると

「だったら楽しませてくれよ」

雅人くんが来てくれた。

「あ?」
「なんだよ、お前」
「こいつの連れだよ」
「は?男かよ」
「どんな関係?彼氏じゃねーだろ」
「なんだっていいだろ。てめーらには関係ねー」
「つり合ってねーだろ?なんでこんなのと付き合ってんの?」
「彼女も趣味悪いねー」

今、なんて言った?

「あの、今なんて言いました?」
「女主人公やめろ」

「だからー、趣味が悪いって言ったの!」
「そうだよ。君ならもっとイケメンと付き合えるでしょ!例えば俺とか!」

あなたたちがイケメン?

「私にとって、彼が一番イケメンなの。私の大事な人を傷つけるようなことを言う人たちに用はないわ。さっさと消えて」

二人組は、私の言葉に驚いたのか、「なんだよブース!」「こっちから願い下げっだつーの!」などとぶつぶつ言いながら去っていった。

私の前で、雅人くんの悪口を言うなんて。

「雅人くん…ごめんなさい。私のせいで嫌な気持ちにさせちゃった…」
「…」
「…雅人くん?」

俯いて何も言わないので、雅人くんの顔をのぞき込もうとすると

「くくく…ぶはっ!まじか女主人公、おめーかっけーな!」

雅人くんは笑っていた。

「雅人くん」
「イヤな気持ちには、まぁ少しはなったけど、単純にあいつらがうぜーだけな。女主人公は気にすんな。俺はその後の女主人公がかっこよすぎてしびれた」
「本心だもん」
「ありがとな。けど、男相手に突っかかっていくんじゃねーよ。あぶねーだろ」
「雅人くんもいるし、いざとなればトリガーオンするから大丈夫!」
「そういう問題じゃねー」

雅人くんは軽く私の頭を叩くと「おめーのことが心配だから言ってんだよ」と笑った。

「とりあえず、何個か食い物買って、座れるとこ探すか」
「そうだね」

そうして私たちは、たこ焼きの他にも焼きそばやとん平焼きなどを買って、花火の見える芝生エリアに落ち着いた。

「すごい人だねー」
「だな」

ただ、周りに座っているのはカップルばかりで、みんな自分たちの世界に入っている。
ここでなら話ができそう。



「雅人くん」
「ん?」
「試験の前に言ってた、話したいことなんだけどね」
「おう」

なんて言えばいいんだろう。
ストレートに私が雅人くんのことを好きだと伝えるのが一番早いか。

「私ね…色々考えてたんだけど」
「その前に、俺から話てもいいか?」

私が話だそうとしたら、雅人くんからストップがかかった。

「うん」

そう言うと、雅人くんは私から少し顔を逸らした。

「…女主人公…おめー、荒船のことが好きか?」

「…え?」

「俺は、女主人公が荒船のことが好きで、女主人公が荒船と一緒にいたいっつーならそれでもいいって思ってた」
「…うん」

まさか、告白する前にフラれるフラグ?

「…けど。やっぱちげーわ。無理だなってなった」
「え?」

「俺は…女主人公のことを自分で幸せにしてーんだなって気づいた」
「それって…」

雅人くんは、私の目を見て静かにこう言った。

「女主人公のことが好きだ。幼なじみとしてだけじゃなくて、男として」

「…本当?」
「このタイミングで嘘なんかつかねーよ」
「雅人くん…ありがとう」

私は雅人くんの手を握った。

「私も雅人くんのことが好き。大好き」



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