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それから私たちは、買ったご飯を食べて、花火を見た。
途中、何回か信じられなくて雅人くんのことをチラチラ見ていたら、「見んじゃねー」と言われてしまったけど。

帰り道も手を繋いだけれど、行きとは違って、少しドキドキした。

「実はね、荒船くんたちに、お前たちは会話が少ない!本音でぶつかれ!って言われたの。わかってる気になってたけど、分かってないことが多かったんだなって思った」
「俺も同じようなこと言われた…なんでタイミング被ってんだよ」
「もしかして、みんなの策?」
「それはそれでうぜーな」

でも、私はそのおかげで雅人くんの本音を知ることができたし、こうやって今度は恋人として一緒にいることができて嬉しい。

「みんなに感謝しないどね」
「…不本意だけどな」
「ふふふ。雅人くんも同じように思ってたって、知れてよかったよ」
「それは同感だな」

家に着く前に手を離そうと思っていたけれど、お店の前に出ていたおばさんに見つかってしまった。

「あら!もしかして、もしかするの!?」
「うっせーぞババア!!」
「きゃー!これはお赤飯ね!やっと女主人公ちゃんが本当にうちの子になるのねー!」
「話が飛躍しすぎだ!」

テンションの高いおばさんは話を聞かずにお店に戻ってしまった。
さすがおばさん。
よく手を繋いでいるけれど、なんとなく私たちの雰囲気がいつもと違うことに気づいたみたい。

「おばさんテンション高いね」
「多分、当分こんな感じだな…」

家の前で手を離す。

「そしたら今日は帰るね」
「おう…」
「また明日」
「…女主人公」
「なに?」

扉に向かって歩き出したけれど、雅人くんに名前を呼ばれて振り返る。
と、同時に雅人君に腕を引かれ、私は雅人くんの腕の中に。

「ま、雅人くん?」
「…また明日な」
「うん」

雅人くんは私を抱きしめていた腕を解放すると、そのまま自分の家に帰っていった。

「雅人くんって…もしかして甘々なのでは…」

昔から、抱きしめるのは私からで、雅人くんから抱きしめてくれたことはあまりなかったのに。







次の日、朝起きると雅人くんから連絡がきていた。

『クソ犬にはぜってー言うなよ』

「…うん、荒船くんと犬飼くんには報告しよう」

相談に乗ってくれた二人にはちゃんと報告しないと、と思っていたので、私は雅人くんの言葉を無視することに決めた。

「さてと、今日もボーダーに行きますか」

朝の準備が終わり、家を出る前に雅人くんに連絡をする。
家を出ると雅人くんも同じタイミングで家から出てきた。

「おはよう」
「…おう」
「ふふふ。なんだか照れくさいね」
「うっせー」

そう言って、私は雅人くんに駆け寄る。

「こっちから積極的に言うことはないけど、誰かに聞かれたら雅人くんが彼氏ですって言っていい?」
「あたりめーだろ」

雅人くんは私の手を取った。

「手つないでもいいの?」
「俺はおめーの彼氏だろ」

そう言って笑った雅人くんの顔が、かっこよすぎて直視できなかった。



「二人ともおはよう!今日は午後から防衛任務だね」

作戦室に行くと、ゾエくんとユズルくんがいた。

「ゾエくん、ユズルくんおはよう」
「めんどくせーな」
「そんなこと言わないのー」
「カゲさんたちはそれまでどうするの?」
「俺はソロランク戦行ってくる」
「私もそうしようかな」
「オレも自主練してくるね。ゾエさんはどうする?」
「とりあえずヒカリちゃんが来るまで作戦室にいようかな」
「了解」

私と雅人くんは荷物を置いて、換装してからC級ブースに向かった。

「今日は鋼もいねーのか」
「そうみたい」
「なら俺とやるか?」
「雅人くんとやるとポイント取られるだけだからなー」
「勝てばいいだろ」
「簡単に言ってくれる」

雅人くんと話ていると、そこに那須隊の熊谷さんがやってきた。

「あの、苗字さん!」
「熊谷さん、どうしたの?」
「ソロランク戦ですか?もしよければ、あたしとやりませんか?」
「本当?ぜひやってほしいな」
「ありがとうございます!影浦先輩、苗字さんお借りしますね」
「おー」
「いってくるね」
「負けんじゃねーぞ」

私と熊谷さんは、それぞれ空いているブースに入った。


[ソロランク戦10本勝負、始め]


「急にすみません」
「ううん。誘ってもらえて嬉しかったよ」
「あんまり女性のアタッカーがいないので、苗字さんがよければこれからも相手してください」
「もちろん」
「ありがとうございます!それじゃぁいきます!」


私と熊谷さんの10本勝負は、私の勝ち。

『やっぱり苗字さん強いです』
「そんなことないよー。熊谷さんも手ごわかったよ」
『ありがとうございます』

ブースを出ると、出水くん、米屋くん、そして緑川くんがいた。

「女主人公さん、熊谷とソロランク戦って珍しいですね」
「あたしが頼んだの。勉強になったよ」
「女主人公さん動きが俊敏で、なかなか捉えるの難しいだろ」
「うん。もっと小回りが利くようにならないとダメみたい」
「でも熊谷さんもすごかったよ。弧月で隙がない感じ」
「ありがとうございます。またやってくださいね!」
「もちろん」

そう言うと、米屋くんが「そんじゃ次はオレとやらね?」と熊谷さんに声をかけた。

「いいわよ」
「よっしゃ!ちょっくら行ってくるわ」

熊谷さんと米屋くんがブースに向かうと、今度は緑川くんが「えー!オレもやりたいー!女主人公さんオレとやりましょうよ!」とソロランク戦に誘ってきた。

「緑川くん、私と同じような戦い方だから遠慮するわ」
「なんでよー!やろうよー!」
「こら緑川、女主人公さんが嫌がってんだからあきらめろ」
「もー!」

緑川くんが騒いでいるところに、雅人くんと太刀川さんがやってきた。

「緑川ー、お前うるさいぞ」
「太刀川さん!影浦先輩!どっちでもいいからオレとソロランク戦しよーよ!」
「いいぜ。取られたポイント取り返してやる!」
「やったー!じゃぁ行こう!」

雅人くんは太刀川さんに負けてしまったようだ。
雅人くんと緑川くんがブースに行くと、太刀川さんが話しかけてきた。

「なんかあったか?」
「何かと言いますと?」
「なんか影浦の調子がめちゃくちゃよかった。正直負けるかと思った」
「本当ですか?太刀川さんがそんなこと言うなんてレアっすね!」
「そんなに調子が良かったんですか?」
「おう」
「影浦さん、何かあったんですか?」
「…何もないよ」
「えー怪しい!絶対何かあったときの感じですよね、それ!」

雅人くんの調子がいい理由が、私だったら嬉しいな。

「なんか女主人公さんも機嫌いいし」
「まあね」
「あやしー」
「はいはい。出水くん、ランク戦しよ」
「女主人公さん今アタッカーでしょ!」
「じゃあ俺とやるか?」
「それは遠慮します」



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