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今日の防衛任務は夜勤なので、夜から。
それまで私たちは、影浦隊の作戦室で時間をつぶしていた。

夏休みももう終わるので、雅人くんとヒカリちゃんは、残していた課題を必死に片づけていた。

「だから計画的にやれって言っただろ」
「うるせー!」
「荒船も喋ってないで手伝え!」

二人がきちんと課題を進めるかの見張り兼、先生役ということで荒船くんが呼ばれた。

「ユズルくんはちゃんと宿題終わらせてるんだよ」
「当たり前じゃん。あの二人と一緒にしないでよ、女主人公さん」

そう言いながらユズルくんはイヤそうな顔をした。

「今日中に終わらせねーと、もう夏休みが終わるぜ」
「やなこと言うなよー荒船」
「だりー。数学なんて、なんの意味があんだよ」

文句を言いながらも、なんだかんだ頑張る二人のために差し入れを買いに行ってあげよう。

「ちょっとコンビニ行ってくるね。何が欲しい?」
「糖分〜〜」
「了解。他は適当に買ってくるね」
「ゾエさんも一緒に行こうか?」
「すぐそこだから大丈夫。ありがとう」







コンビニでお菓子や飲み物を買って、私は作戦室に戻ろうとした。

ラウンジの前を通ると、知らない男の子に呼び止められた。

「苗字さん、今いいかな?」
「どちら様ですか?」
「俺、最近B級になった田中っていうんだけど」
「どうも」
「少し話がしたくて、大丈夫?」
「どうぞ」
「あっちで話してもいいかな?」

田中くんはラウンジの外を指さした。

「…ここだとダメなの?」
「人が多いとちょっと…」

想像している通りの内容なら、なるべく時間をかけたくない。

「わかった」
「ありがとう!」

そう言って、私たちはラウンジを出た。
ラウンジの入り口から少し離れたところで彼は止まった。

「ごめんね」
「いいえ。それで何かしら?あまり時間がないから手短にお願いしたいのだけど」
「あぁ。あの、俺ずっと前から苗字さんのことが気になってて、もしよければ付き合ってくれないかな」
「ごめんなさい」

私は、間髪を入れず断った。

「なんで?」
「付き合ってる人がいるの」
「荒船さんと付き合ってるって本当なの?」
「なんで荒船くん?」
「噂になってるよ。その前は烏丸くんだったけど、苗字さんは荒船さんと付き合ってるって」
「違うわ。私が付き合ってるのは影浦雅人」
「幼なじみの?本当に?ただの幼なじみだったんじゃないの?」

一歩ずつ距離を詰めてくるので、私も一歩ずつ後ろに下がった。

「付き合い始めたの」
「断るための嘘でしょ?」
「なんでそうなるのよ。本当だから言ってるの」
「そんな素振りなかったよね。まだ荒船さんと付き合ってるって言われた方が信じられるけど」
「なんであなたにそんなことを言われなきゃいけないの?」

雅人くんとのことを信じてもらえなくてもいいけれど、他の人と付き合ってる方が信じられるとか、そんなことは言われたくない。

「いい加減にしてよ」

そう言って、相手から距離を取ろうとすると、彼は私の腕をつかんだ。

「俺と付き合ってよ!」
「だから、私は雅人くんと「何をしている」

私がすべてを言う前に、後ろから声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには風間さんがいた。

「風間さん!」
「か、風間さん…!」

「苗字、影浦が呼んでいた。早く行くぞ」
「はい」

私はつかまれている腕を無理やり振りほどくと、風間さんに駆け寄った。

「ありがとうございます」
「大丈夫か?」
「はい…助かりました」

そのまま風間さんと影浦隊の作戦室に向かった。

「ご迷惑をおかけしました」
「別にかまわない。礼なら菊地原に言ってくれ。あいつのサイドエフェクトのおかげでおまえたちのやり取りに気づいたからな」
「菊地原くんが」

私たちの会話を菊地原くんが聞いていたようで、風間さんに助けに言ってほしいと伝えたそうだ。

「自分で行けと言ったんだがな」
「まぁ、私と菊地原くんはほとんど面識がないので」

影浦隊の作戦室に着き、ドアを開けると雅人くんとヒカリちゃんが机に倒れこんでいた。

「女主人公、遅い…って風間さん。どうしたんですか?」

私と一緒に風間さんが登場したことに驚いた荒船くん。

「絡まれていたのを助けた」
「助けてもらっちゃった」

その一言に、机に倒れていた雅人くんが起き上がった。

「ああ?誰にだ?」
「…知らないB級の子」
「…チッ」
「で、おまえたちはまだ課題をやっているのか」

机の上に広がった教科書や資料を見て、風間さんはあきれた様子だった。

「そうなんですよ。風間さんからも言ってください」
「勉強するしないはおまえたちの勝手だが、今やるべきことをしっかりやれ。でないと太刀川みたいになるぞ」

「…それは嫌だな」
「それで納得しちゃうのは、太刀川さんに失礼だよー」

ゾエくんの言葉に、思わず笑ってしまった。

「影浦、おまえも大変だな」
「何がっすか」

「付き合っているんだろう、苗字と」
「な!」

「えーーーー!!カゲと女主人公、お前ら本当かよ!」

「まだ内緒だったのか。すまない」

爆弾発言を残して、風間さんは影浦隊の作戦室を後にした。
菊地原くんのサイドエフェクトで、雅人くんと付き合ってると言ったこともバッチリ聞かれていたようだ。
だけど、こんな風に言い逃げされるとは!

「風間さんめー…」

「カゲ、女主人公ちゃん、本当なの?」
「相談にのってやったのに黙ってるなんて、薄情なやつだな」
「荒船くんと犬飼くんには、ちゃんと言おうと思ってたよ」
「クソ犬には言うなっつっただろ!」

不本意だけど、ここでしっかり報告することにしよう。
そう言った意味も込めて、雅人くんの顔を見る。
私の意図をくみ取ったようで、雅人くんは頭を掻きながら「あー…」と話し出した。

「付き合うことになった…」
「カゲと女主人公!」
「そうだよ」
「おめでとう!やっとくっついんたんだね!ゾエさん嬉しいよー」
「なんだかんだ、二人は付き合うと思ってたぜ」
「カゲさん、女主人公さんのこと恋愛的な意味でちゃんと好きだったんだね」

私は、荒船くんに向かって「ちゃんと言えなくてごめんね」と伝えた。

「後できちんと言おうと思ってたのに…」
「気にすんなって。良かったな、やっぱりちゃんと話してよかったろ」
「うん。荒船くんありがとう」


「おめーら、あんま言いふらすなよ!」
「そんなん気にすんなよ!いつかみんな知ることなんだからよ!」
「マジで余計なことすんなよ…」



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