あの後、米屋くんたちと勉強会をしていたら、16歳組の子たちもやってきて、大人数での勉強会になった。
私と荒船くんだけでは先生役が足りなくなってしまったので、犬飼くん、水上くんなど、頭の良い人たちにも声をかけた。
氷見さんや今さんにも声をかけたので、どんどん人数が増えてしまった。
でも、そのおかげでそれぞれ得意科目で分担して教えることができたので良かったかな。
みんなでくつろいでいると、忍田さんからボーダー隊員全員に連絡が入った。
「イレギュラーゲートの原因が分かったみたいだね」
ここ最近、市街地に発生していたイレギュラーゲート。
発生原因がわかったという連絡だった。
迅さんによると、ラッドという小型ネイバーがバムスターの腹部に格納されていて、そのラッドがバムスターから分離した後に地中に隠れて、各地に移動。
人の多い場所で近くを通る人からトリオンを集めて、ゲートを開いていたらしい。
「知らないうちにトリオンを取られてると思うと、怖いね」
「なるほどな。だからボーダー隊員の近くでゲートが開くことが多かったのか」
「ボーダー隊員からならトリオンもがっつり取れそうだもんね」
「害虫駆除か」
そう言うと、雅人くんはこちらを向いた。
「女主人公、おめー大丈夫か?」
「…うん」
「なんだ?女主人公は虫が嫌いなのか?」
「虫が好きな人は、あんまりいないんじゃないかなー」
あまり好き嫌いがなく、基本的にはなんでも大丈夫な方だけど、虫とお化けだけは苦手。
今回のラッドも、どう見ても人間の天敵であるやつにしか見えない。
ラッドという名前なんだから、もう少しネズミよりのフォルムをしていてほしい。
「この見た目じゃな。確かにやつに見える」
「名前を言ってはいけないやつね」
「女主人公にも苦手なものがあったんだな」
「どういう意味」
「どうしてもダメな時は、先にベイルアウトしろ」
「任務だから頑張るよ。でもありがとう」
『市街地に開くゲートの原因が判明しました。この小型ネイバーがそうです』
根付さんがテレビでイレギュラーゲートの発生理由と駆除を開始することを発表した。
『ただいまよりボーダーによる一斉駆除を開始します。発見された方は、ボーダーまでご一報を』
テレビに小型ネイバーの画像が映し出された。
私も自分の端末でその画像を見る。
やっぱりやつにしか見えない。
「ヒカリ!この辺にいねーのか?」
『ちょっと待ってろ。今レーダーに映す』
ヒカリちゃんがラッドの姿をレーダーに映してくれたおかげで、ラッドはものすごい量いることが分かった。
知りたくなかった、この事実。
「うひゃーうじゃうじゃいるね」
「ゾエくんやめて!」
「女主人公ちゃんが弱ってる」
雅人くんが頭を掻きながら「しかたねーなー。女主人公、とりあえずおめーは少し離れたところから見てろ」と言った。
「足手まといにならないように頑張ります」
「頑張れるやつのツラじゃねーな」
『女主人公ー。あんまり無理すんなよ』
「うん」
迅さんの指揮のもと、私たちは一斉にラッドの駆除を始めた。
「攻撃はしてこないからいいけど、逃げて行く姿がまさにあれ」
「確かに」
「この辺全てをメテオラで更地にしたい…」
「女主人公ちゃんが嫌すぎて現実逃避をしてるよー」
C級の隊員まで出てきているけど、このラッドの数だから今夜は徹夜になりそうだ。
時折、市民の人たちも「あっちで見かけたよ!」と教えてくれたり、「頑張ってね!」と応援してくれたりするので、とても励みになった。
『こっちのエリアはあと少しだな』
ヒカリちゃんから嬉しい言葉を聞くことができた。
「カゲ!」
あたりを見回していると、鋼くんたち鈴鳴第一のメンバーに遭遇した。
「鋼。おめーらもいたのか」
「あぁ。向こうから歩いてきたんだ。あと少し、この辺にいるみたいなんだが…」
「俺たちも探してんだよ」
「そうか。ゾエも女主人公もお疲れ様」
「鋼くんおつかれー!」
「お疲れ様」
「女主人公はどうしたんだ?」
「こいつ虫が苦手なんだよ」
「そうなのか」
「すべてを爆破したい…」
「相当だな」
全体的にあと少し、というところまで駆除は進んでいた。
ただ、私たちのいるエリアにあと数匹いるとレーダーには映っているのに、なかなか見つからない。
「ぼくたちはもう少し向こう側を見に行ってみようか?」
「そうですね。カゲたちはそっちを頼む」
「わーったよ」
と、二手に分かれて付近を捜索しようとした瞬間、地中にいたラッドが私の目の前に飛んできた。
目の前に急に現れたラッド、さすがの私もキャパオーバーになってしまった。
「キャー!!」
私は大声で叫んで、近くにいた鋼くんに抱きついた。
「な!女主人公!」
「ヤダー!こっちこないで!」
鋼くんにしがみついていると、雅人くんが飛んできたラッドをスコーピオンで破壊してくれた。
「もう倒したから落ち着け!」
「ううう〜…本当にもういない?」
「いねーよ」
「あぁ。だから離れてくれるとたすかる」と鋼くんが言いかけたところに、『まだもう一匹いるぞ』とヒカリちゃんから入った。
そして、そこに残り一匹のラッドが出てきた。
「まだいるじゃん!」
「女主人公!落ち着いてくれ!」
鋼くんは、私を支えながら「スラスターオン!」と言ってレイガストをラッドに向かって投げた。
「鋼さんナイス!」
「これで全部かな」
『そのエリアはもう大丈夫そう。撤収していいそうです』
「今ちゃんありがとう」
「女主人公終わったぞ!いつまで鋼にひっついてるつもりだ!」
「終わった?」
そう言って鋼くんを見る。
「終わった」
「鋼!おめーもいつまでその体勢でいんだよ!」
「ちが!これは女主人公が転ばないようにと思って支えてるだけだ!」
鋼くんは赤くなりながらそう言って、私の腰に回していた手を離した。
「鋼くんありがとう」
「いや…とりあえず終わってよかったな」
「うん」
「カゲ、悪い。わざとじゃない」
「見てりゃわかるし、ひっついたのは女主人公だろ。にしても、鋼…おめー何赤くなってんだよ」
「赤くなってない」
否定する鋼くんに対して、雅人くんが笑いながら「女主人公相手に赤くなってんじゃねーよ」と言った。
「ちょっと雅人くん、それどういう意味」
「女主人公相手に照れることなんかねーだろ」
「ほぼ100%の男子が照れると思いますけどねー」
「太一は静かにしてようか」
色々あったけれど、無事にラッドはすべて駆除された。
もう二度とやりたくない。