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ラッドの駆除が終わり、徹夜で一日働いていた私たちはそのまま家に帰って休むことにした。
私たちは家の前まで着くと、「じゃぁまた後でね」と言って、それぞれ自分の家に入ろうとした。
けれどそれはかなわず、雅人くんが私の腕をつかんで雅人くんの家に入り、そのまま雅人くんの部屋に連れていかれた。

「どうしたの?」
「…」
「疲れたし、早く休んだ方がいいよ?」
「…」

そう言っても何も言わない雅人くん。
私が雅人くんの手に自分の手を重ねると、一瞬だけ雅人くんの手が動いたけれど、腕をつかむ力はそのままで、むしろ心なしか少し強くなった。

「何かあった?」
「…」

正直、雅人くんがこうなる理由がわからない。
何かしちゃったかな?
うーん、と考えていると「…おめーが…」と雅人くんが話しだした。

「うん?」
「…おめーがビビッて抱きつくのは鋼なのかよ…」
「…え?」

そこまで言われて、ようやくわかった。
さっきのラッド騒動の時に、私が驚いて近くにいた鋼くんにひっついたのが気に入らなかったようだ。
あの時は全く気にしてなさそうだったから、ちょっと驚いた。

「ごめんなさい」
「…別に」
「あれは近くにいたのがたまたま鋼くんだったから。雅人くんは少し離れた場所にいたからだよ」
「わかってる」
「だけど目の前で他の異性にしがみつくのはダメだったよね。反省してる」
「…鋼と距離がちけー…」
「ごめんね。でも私が好きなのは雅人くんだけよ」
「あたりめーだろ」

そう言うと、雅人くんは私を抱きしめて、そのままベッドに寝転んだ。

「雅人くーん?」
「ねみー…」
「このまま寝るの?」
「抱き枕の刑。黙って寝ろ」
「うん」

私は雅人くんに抱きしめられながら、そのまま目をつぶった。







次の日、本部のC級ブースにいると、烏丸くんと米屋くんがやってきた。

「女主人公さん、この間はありがとうございました。お礼に奢りますよ。米屋先輩が」
「オレかよ!まぁ確かに助かったんで、奢りますよ」
「役に立てて良かった。じゃぁ今からご飯食べにラウンジ行く?」
「いいすね。荒船さんと影浦さんも誘いますか?」
「そうね。雅人くんと鋼くんのソロランク戦が終わったら聞いてみようか」

荒船くんに連絡を入れて、私たちは雅人くんたちのランク戦が終わるまで待つことにした。

「あれ、迅さんじゃね?」
「本当だ」

向こうの廊下に迅さんの姿が見えた。

「最近本部で見ることが増えたわね」
「たしかに」
「最近なんかバタバタしてるみたいだからなー」
「米屋先輩、何か知ってるんですか?」
「さあなー。ま、でもそのうち面白そうなことが起こりそうだぜ」
「なるほど」

そんな話をしていると、荒船くんから返信がきた。

「あ、荒船くんも今からラウンジに向かうって」
「ちょうど影浦さんたちも終わったみたいですよ」

烏丸くんがブースの方を指さすと、雅人くんと鋼くんがこちらに向かって歩いてきた。

「お疲れ様」
「おー」
「お疲れ!米屋と烏丸もいるんだな」
「鋼さんどうもー!」
「みんなでラウンジにご飯食べに行こう」
「もうこんな時間か」

そう言って、雅人くんは携帯で時間を確認した。

「この前勉強見てもらったお礼にご飯行きましょうって話してたんです」
「オレの奢りですけどね」
「試験の結果はどうだったんだ?」
「結構良かったです。女主人公さんと荒船さんのおかげすね」
「それは良かった」
「オレはまぁーいつも通り、変わんない感じですね」

5人でラウンジに向かうと、すでに荒船くんの姿があった。

「荒船さん!」
「おー米屋」

荒船くんの他に穂刈くん、それからユズルくんの姿があった。

「ユズルくん」
「女主人公さん、おつかれ。オレも連れてこられた」

「人数増えたなー。とりあえず、全員で座れる席探しますか」
「そうだね」

米屋くんが席を探しに歩き出したので、私もそれを追う。
私の後ろを、雅人くんや鋼くん、荒船くんたちもついてきた。

「ここなら座れますね。分かれちゃいますけど、横並びでいけそうです」

米屋くんが見つけた席は、4人掛けのテーブルが3つ、横並びで空いている席だった。

「適当に座りましょうか」
「そうしよう」

先に米屋くんと烏丸くんが座り、私が烏丸くんの隣に座ろうとすると「待て」と、雅人くんが腕をつかんだ。

「おめーはこっちだ」

そう言って、雅人くんは自分の隣に私を座らせた。
それを見ていた烏丸くんが「影浦さんって、意外とそういうところ気にするんすね」と言った。

「ほっとけ」
「そりゃあそうでしょ。カゲさんって、女主人公さんのこと大好きだし」
「オレもこの前、女主人公と距離が近いって怒られたな」
「別にんなこと言ってねーだろ!」

あらあら。

「まぁこんな綺麗な幼なじみだったら、過保護にもなりますね」
「オレも苗字さんが幼なじみだったら速攻で惚れてる」
「幼なじみだけど、それ以上にこいつらは付き合ってるからな」

「そうなんすか」
「マジっすか!」

そう言えば、米屋くんたちにはまだ言ってなかった。

烏丸くんはこっちを見ると「女主人公さん、影浦さんと付き合ってたんですね」と聞いてきた。

「うん。ちょっと前からだけどね」
「言ってくださいよ。じゃぁさすがに待ち受け画面変えますね」

そう言って烏丸くんは携帯を取り出した。

「おめー、まだその写真にしてたのかよ!さっさと変えろ!」

雅人くんは烏丸くんの携帯を見て怒った。

「わかりました。そしたら女主人公さんのソロショットにしますね」
「え?」
「おめー喧嘩売ってんのか!」
「嘘ですよ。嘘に決まってるじゃないですか」
「京介ー。あんま影浦さんからかうなよ」
「カゲも落ち着け。烏丸のいつもの悪ふざけだろ」
「わかってるっつーの!」

烏丸くんは携帯の画面を操作しながら「やっぱり影浦さんって面白いっすね」と涼しい顔をしながら言った。
烏丸くんのその感じ、私は嫌いじゃないよ。

「そういえば出水くんって、まだ遠征から帰ってこないの?」
「たしか、明日くらいには帰ってくるみたいですよ」
「そっか。今回もみんな無事に帰ってくるといいね」
「ですね」

その後は、みんなでご飯を食べた。
時折、烏丸くんが雅人くんをからかうから少しハラハラしたけれど、なんだかんだ楽しそうで良かった。



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