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「今日の防衛任務も疲れたねー!ゾエさん眠くなってきちゃった」
「だね」
「さっさと帰んぞ」

今日は午後から防衛任務で、やっと夜勤組と交代の時間になった。
トリオン兵と遭遇することはなかったので、ただただ見回りで時間が過ぎていった。

「今日も終わったなぁ!さっさと帰ろうぜ!」

影浦隊の作戦室に戻ると、ヒカリちゃんが帰る支度万全で出迎えてくれた。

「ヒカリちゃん早いよー。ゾエさんたちも帰る準備するから、ちょっと待ってて」
「早くしろよー!」
「ヒカリちゃん、お疲れ様」
「おう!女主人公はカゲと二人で帰るだろ!アタシたちは先に帰るから、二人でゆっくりしてろよ!」
「うっせーぞヒカリ!」

いらぬ親切だなーとも思いつつ、二人になれるのは嬉しいからありがたくそうさせてもらうことにした。
さっきまでにぎやかだった作戦室も、ヒカリちゃんたちが帰った後だととても静かだ。

「雅人くん、もう帰る?」
「あぁ…」
「じゃあ上着取ってくるね」
「…その前に」

と、雅人くんは両手を広げた。

「?」
「いいからこい」

雅人くんはもう一度、私に向かって両手を広げると「さっきから刺さってんだよ」と言った。

「私の感情刺さった?」
「おー」
「ふふふ。ありがとう」

そう言って、私は雅人くんに抱きついた。

「充電。最近ゆっくり二人になれなかったから」
「だと思った」
「雅人くんとのハグには癒しの効果があると思うの」
「んなわけねーだろ」
「えー。好きな人とのハグはストレス解消になるのよ」
「なら一生ひっついてろ」
「そうしたいな」

私がそう言うと、雅人くんは抱きしめている腕に力を入れた。

「大好きだよ」
「おう」

もう少しこのままでいたい、と思っていると作戦室の扉が開いた。

「カゲ、女主人公ちゃん、ごめーん!ゾエさん忘れ物しちゃった!」
「ゾエくん!」
「!?」
「わー!!ごめん!邪魔しちゃった!」

ゾエくんは私たちが抱き合っているところを見ると、両手で顔を隠した。

「勝手に入ってくんじゃねーよ!」
「えー!理不尽だなーここ作戦室じゃーん。てか二人ともこんなところでイチャイチャしてないでよー。ゾエさんだから良かったものの、ユズルだったらゾエさんも怒るよ」

雅人くんに胸倉をつかまれながらも、ゾエくんは反論した。
まさしくその通り。
ゾエくんの言ってることが100%正しい。

「そういうのは家に帰ってからにしてよね!ゾエさん帰るけど、早く二人も帰りなよ!」

そう言って、ゾエくんはバタバタと作戦室を出て行った。

「びっくりしたね」
「…チッ」
「まぁでも確かにゾエくんの言う通りだね。続きはお家でね」
「おう…」

私たちは荷物を持って、作戦室を出た。







「苗字、申し訳ないんだが今度の入隊式の手伝いをしてくれないか?」

そう嵐山さんに頼まれたのは、1月の入隊式の数日前だった。

「入隊式ですか?」
「あぁ。今回も俺たち嵐山隊が担当なんだが。今回は入隊する隊員が多くて人手が足りてなくてな…」
「なるほど」
「アタッカー、ガンナーで分かれてからで大丈夫だ。その後のC級隊員のサポートをしてくれると助かる」
「わかりました。とりあえず、防衛任務がないかだけ確認しますね」
「本当か!他に頼める人がいなくて困ってたんだ」

嵐山さんに頼まれて、断れる人は少ないんじゃないかなと思いながら、私はスケジュールを確認した。

「その日は防衛任務がないので大丈夫です」
「ありがとう!助かるよ!」

そう言うと、嵐山さんは私の手を握ってブンブン上下に動かした。



「嵐山さんと女主人公じゃないか。何してるんだ?」
「あ?」

それを遠目から見ていた雅人くんと鋼くん。
二人が近づいてくると、嵐山さんもそれに気づいて声をかけた。

「二人ともおつかれ!」
「嵐山さん、どうしたんですか?」
「今度の入隊式の手伝いを苗字に頼んでたんだ」
「入隊式?」
「あぁ。1月の入隊式の人手が足りなくてな」
「こいつで役に立つのか?」
「雅人くんよりは役に立つと思うわよ」
「苗字はしっかり働いてくれるからな」

嵐山さんは「詳しい時間はまた連絡する」と言って、広報に用事があるとかでそちらに向かっていった。

「入隊式の手伝いって、何をやるんだ?」
「詳しくは聞いてないけど、C級のサポートって言ってたよ」
「頼まれたらホイホイ安請け合いするのやめろよな」
「困ってるみたいだったから」

雅人くんは少し面白くなさそうにした。

「入隊式の手伝いなんだし、本部にいるんだから大丈夫だろ。カゲは心配性だな」
「うっせー」
「心配してくれてありがとう」



そうこうしているうちに、あっという間に1月の入隊式の日を迎えた。

入隊式の前に、私は嵐山隊の作戦室に向かう。

「こんにちは、苗字です」
「苗字さん、お疲れ様です」

嵐山隊の作戦室の前でノックをすると、綾辻さんが出迎えてくれた。

「こんにちは、綾辻さん。今日はよろしくお願いします」
「はい。嵐山さんたちも中で待っていますので、どうぞ」
「ありがとう」

中に入ると嵐山隊がお出迎えしてくれた。

「苗字、今日はありがとう!」
「いえ」
「苗字さーん!こんにちは!今日は佐鳥と一緒に頑張りましょう!」
「うん」
「佐鳥先輩はスナイパー組でしょう。苗字さん、今日はよろしくお願いします」
「木虎さん、よろしく」
「苗字さん、今日はわざわざすみませんでした」
「全然、今日は防衛任務もないし、大丈夫だよ」
「それなら良かったです」

さすが嵐山隊のみなさん、全員とてもスマートで(佐鳥くん以外)人気なのもうなずける。

「いつも通り、全体に説明をしてから、アタッカー・ガンナー組、スナイパー組で分かれて試験をする。その時のC級のサポートだったり、質問などの受け答えをしてほしい」
「わかりました」
「基本俺たちがメインで動くけど、人数が多いから、ちょくちょく頼むと思うがよろしくな」
「はい」

嵐山さんは簡単に説明をすると、部屋の時計を見た。

「そろそろ時間だな。移動しよう」

私たちは入隊式の会場に向かった。



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