入隊式が始まった。
忍田さんが今日入隊のC級全員に向けて、説明を始めた。
『君たちは本日C級隊員…つまり訓練生として入隊するが、三門市の、そして人類の未来は君たちの双肩に掛かっている。日々研鑽し正隊員を目指してほしい』
今回も入隊した訓練生は多い。
その中でも、髪の毛が白くて小さい男の子がいて目を惹く。
その隣にいる黒い髪の小さい女の子も可愛い。
あんな小さい子たちもボーダーに興味を持って、入隊してくれるんだからボーダーってすごいなと思った。
ただ、その二人はなぜがB級のメガネをかけた子と一緒にいる。
知り合いなんだろうか?
『君たちと共に戦える日を待っている。私からは以上だ。この先の説明は、嵐山隊に一任する』
忍田さんがそう言うと、少しざわついた。
「嵐山隊…!本物だ!」
「嵐山さん!」
「さて、これから入隊指導を始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。アタッカーとガンナーを志望する者はここに残り、スナイパーを志望する者は、うちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」
「はいはい、スナイパー組はこっちだよ〜」
佐鳥くんについていったのは全部で8人。
あの小さくてかわいい女の子もスナイパー組だったんだな。
アタッカー、ガンナー志望の子たちに向けて、嵐山さんが説明を始めた。
「改めて、アタッカー組とガンナー組を担当する嵐山隊の嵐山准だ。まずは入隊おめでとう」
嵐山さんがそう言うと、白い髪の子とB級隊員の子が少しだけ反応したのが見えた。
嵐山さんと知り合いなのかな?
嵐山さんは、正隊員(B級)になるための方法を伝えた。
「数字を4000点まで上げること。それがB級昇格の条件だ」
みんな、自分の手の甲に書いてある数字を確認していた。
私と雅人くんは、1000点ではなく上乗せされていたけれど、大体の人が1000点スタートだ。
「ポイントを上げる方法は二つある。週2回の合同訓練でいい結果を残すか、ランク戦でポイントを奪い合うか。まずは訓練のほうから体験してもらう。ついて来てくれ」
そう言って、嵐山さんは訓練室に向かって歩き出した。
その後を私も追う。
木虎さんと一緒に一番後ろからついていっていると、木虎さんが「ちょっとすみません」と言ってあの白い髪の子とB級の子に話しかけにいった。
「三雲くん」
「木虎…」
あの子は三雲くんというのか。
「なんであなたがここにいるの?B級になったんでしょ?」
「転属の手続きと空閑の付き添いだよ」
「おっキトラ。ひさしぶり!おれボーダーに入ったからよろしくな」
木虎さんが同い年の子と話しているのは珍しい。
仲が良さそうで良かった、とほのぼのしていると「あの…あなたは?」と三雲くんに話しかけられた。
「初めまして。今日は嵐山隊のお手伝いで来た、影浦隊所属の苗字です」
「苗字さんって、あの!」
「三雲くん、失礼よ」
「あ、すみません」
あのって、どのだろう…。まぁいいか。
「苗字先輩、よろしくお願いします」
「よろしくね。二人は木虎さんと友達なの?」
「な!違いますよ!」
「そうだよ。オサムとキトラはマブダチってやつです」
「空閑!変なことを言うな!」
「そかそか。仲が良いのはいいことだからね」
「でしょ。ねぇおれ、なるべく早くB級に上がりたいんだけど、なんかいい方法ある?」
「苗字さんは先輩よ。敬語を使いなさい、敬語を」
「それはそれは、失礼いたしました」
「気にしなくて大丈夫だよ」
「まったく…。早くB級に上がる方法なんて簡単よ。訓練で全部満点を取って、ランク戦で勝ち続ければいいわ」
空閑くんの質問に答えた木虎さん、回答ができる人のそれでかっこいい。
「なるほど。わかりやすくていいな」
「さあ、到着だ。まず最初の訓練は…」
訓練室に到着して、嵐山さんが訓練の内容を説明した。
対ネイバー戦闘訓練。
仮想戦闘モードの部屋の中で、少し小型化した大型ネイバーのバムスターと戦う。
制限時間は5分で、早く倒すほど評価が高くなるこの試験。
私は確か、40秒くらいだったけれど、雅人くんはもっと早かったな。
「私のときもいきなりこれだったわ」
「木虎さんもなんだ。私もこれだったよ」
「ぼくの時もです…」
「これで大体わかるのよね。向いてるかどうか」
「説明は以上!各部屋始めてくれ!」
同時にスタートした対ネイバー戦闘訓練。
初めてなら1分切れればいいほうだけど、確か木虎さんや緑川くんはもっと早かったな。
それぞれの部屋を見ていると、まぁまぁ動ける子もいるかな、といった印象。
『2号室終了。記録58秒』
おぉ。
1分切った子が出てきた。
『5号室用意』
「お、空閑くんの番だね」
「はい」
『始め!』
それは本当に一瞬の出来事で、空閑くんはバムスターに向かって飛びあがると、一気に弱点を攻撃した。
パキッ
ズズン!
バムスターが倒れて、記録は『…れ…0.6秒…!!?』
「な…」
「なんだ?!こいつは…!!」
あ、諏訪さんの声が聞こえた。
「よし。どんどんいこう」
「0.6秒!?」
「今ので満点かな?」
そう言いながら訓練室を出てきた空閑くん。
すごい新人が現れたものだ。
「いやいやいや、まぐれだ!計測機器の故障だ!もう一回やり直せ!」
「ふむもう一回?いいよ」
空閑くんの記録に文句を言ってきたC級の子に対して、空閑くんはそう言うともう一度訓練室に入った。
そして、もう一度測定すると、今度は0.4秒。
これだけ早い子は初めてだから、他の子たちも興奮しているようだ。
「おまえすごいな!」
「何者だ!?」
「女主人公さん」
「あれ?烏丸くん」
「なんでここにいるんですか?」
「嵐山隊のお手伝いだよ」
そこに烏丸くんがやってきた。
「むしろ烏丸くんがなんでいるの?」
「それはちょっと用事があって…修」
「あ」
「!!」
烏丸くんは三雲くんを呼んだ。
「か…かかか烏丸先輩!」
「おう木虎。久しぶりだな。悪い、バイトが長引いた。どんな感じだ?」
「問題ないです。空閑が目立ってますけど…」
「まぁ目立つだろうな。今回も嵐山隊が入隊指導の担当か。大変だな」
「いえ!このくらい全然です!烏丸先輩…最近ランク戦に顔出されてないですね。お時間があったらまた稽古つけてください…!」
この木虎さんの反応…もしかして木虎さんも烏丸くんのことが好きなのかな?
「いや、おまえ十分強いだろ」
烏丸くーん、乙女心がわかってないな。
「そんな…私なんてまだまだです」
「ん?そういやおまえ、修と同い年か」
「?はい、そうですね」
「じゃぁちょうど良かった。こいつ俺の弟子なんだ。木虎も色々教えてやってくれ」
「…!?弟子…!?」
木虎さんがすごいショックを受けている。
「こいつの様子を見にきたんす。女主人公さんもシューターとして色々教えてやってください」
「私で役に立つかな?烏丸くんも弟子をとったんだね」
「まぁ成り行きで」
「烏丸くんは、教え方も上手だから三雲くんも勉強になると思うよ」
「はい。本当にそうだと思います」
「頑張ってね。私で力になれることがあったらいつでも言ってね」
「ありがとうございます!」
三雲くんはそう言うと、烏丸くんに「二人はお知り合いだったんですね」と聞いた。
「ああ。女主人公さんは俺の元カノだ」
「え!?」
「こらこら烏丸くん。そういう嘘はやめなさいって雅人くんにも言われたでしょ」
「すみません、つい」
「ついじゃないわよ」
木虎さんの顔が怖くて見れない。
「本当に付き合っていたわけではないんですか?」
「全然。同時期に入隊した同期なの。烏丸くんって無意味な嘘をつくことが多いでしょう」
「…はぁ。たしかに」
「話半分で聞いておいた方がいいよ」
「わかりました」
烏丸くんは、自分の発言にとんでもない影響力があることをもう少し自覚してほしい。
木虎さんは、烏丸くんの弟子発言の方に気を取られていたようで、元カノ発言は聞いていなかったみたい。
本当に良かった。