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そういえば、さっきから視線を感じるのだけれど、なんだろう?
私、というよりも私たち全体を見ている感じ。



「…なるほどな」

あれ、この声は。

「風間さん。来てたんですか」

風間さんが入隊式を見にくるなんて、珍しい。
階段の上には菊地原くんと歌川くんもいる。

「訓練室をひとつ貸せ、嵐山。迅の後輩とやらの実力を確かめたい」
「ほう」

風間さんはそう言うと、トリガーを起動した。

「あの人は…!?」
「A級3位、風間隊の隊長だ」
「風間さんと知り合いなの?」
「いえ…」

空閑くんと嵐山さんに近づく風間さんを、嵐山さんが止めた。

「待ってください風間さん!彼はまだ訓練生ですよ?トリガーだって訓練用だ!」
「おれはべつにやってもいいよ」

空閑くん、強気だな。

「違う、そいつじゃない。俺が確かめたいのは…おまえだ三雲修」

そう言うと、風間さんは三雲くんを見た。

「…え!?」
「いきなり何を言い出すんだ風間さん。また城戸司令の命令か?」
「こいつは正隊員だろう?俺と模擬戦をする分にはなんの問題もない。訓練室に入れ、三雲。おまえの実力を見せてもらう」

三雲くんは、何やら考え込んでいるようで何も言わない。
その代わりに嵐山さんと烏丸くんがフォローをしている。

「無理に受ける必要はないぞ、三雲くん」
「模擬戦を強制することはできない。イヤなら断れる」
「…」

なんだか嵐山さんの態度が少し過剰な感じもするけど、何かあったのかな?

「受けます。やりましょう模擬戦」

三雲くんがそう答えると、C級の子たちがざわついた。
けれど、それを時枝くんが「はいはい。終わった人はラウンジで休憩しよう」と言ってみんなを連れ出した。

「おれは見ててもいい?」
「もちろんだ」
「私も見てていいのかしら?」
「女主人公さんも見ててください。修、今のおまえじゃ勝てないぞ」
「わかってます」
「無理はするなよ」
「はい!」

そう言うと、三雲くんは訓練室に向かって歩き出した。

「女主人公さん、修はシューター志望しているので、アドバイスか何かあればお願いします」
「うん」

風間さんと三雲くんの模擬戦が始まった。
勝負が始まると、風間さんはカメレオンを起動して、姿を消し、三雲くんのトリオン供給器官を破壊した。

その後も、三雲くんの防戦一方でほとんど一撃で風間さんにトリオン器官を破壊され、ダウンが続く。

「見えない風間さんをどう攻略するか、カメレオンは無敵じゃないからね。そこに気づけないと風間さんには勝てないかな」

「姿を消すトリガーか。ボーダーにはおもしろいトリガーがあるなー」

模擬戦が始まると、空閑くんが私たちの横に座った。

「”カメレオン”。トリオンを消費して風景に溶け込む隠密トリガーだ」
「ふーむ。おれならどう戦うかな…」
「空閑くんは戦い慣れしている感じだよね。何かしてたの?」
「ほんの実力です」

にやっと笑ってきちんと答えてはくれなかったけど、空閑くんはなんだか雰囲気が違うんだよね。

「遊真は海外育ちなんです」
「そうなんだ」
「色々いたけど、どこも戦争してたからそれのせいかもね」
「すごいね」
「まあね」

なるほど。
紛争地域にいたら、実践慣れしてるのは当然だ。

「三雲くんも頑張れ。カメレオンはすごいトリガーだけど、弱点もあるから」
「そうすね。それに気づけるか…」

三雲くんは、部屋中にアステロイドを撃ったが、風間さんは三雲くんの背後に回りそのままスコーピオンで刺した。

「うーん、もう少し」

「烏丸先輩、もうやめさせてください。見るに耐えません」
「キトラ」

私たちが座っている席に木虎さんが来た。

「三雲くんがA級と戦うなんて早すぎます。勝ち目はゼロです」
「なんだ、修の心配か?」
「なっ…違います!」
「オサムだって、別に今すぐ勝てるとは思ってないだろ。先のこと考えて経験を積んでんだよ」
「”ダメで元々””負けも経験”。いかにも三流の考えそうなことね。勝つつもりでやらなきゃ、勝つための経験は積めないわ」

おおー。
木虎さんかっこいい。

「おまえいいこと言うな」
「いえ、それほどでも…」
「しかしまぁ、いつ終わるかは始めた二人次第だからなぁ」
「烏丸くん、のんきね」
「お、終わったっぽいよ」

訓練室に目を向けると、風間さんが上がろうとしている様子が見える。
けれど、三雲くんと何かを話した後、もう一度向き合った。

「あれ?まだやるみたいだぞ?」
「なんで…!?もう十分負けたでしょ?」
「さぁ…なんかしゃべってたっぽいけどな」
「…」
「三雲くんはちゃんと考えられる子でしょ?だからシューターなんでしょ?」
「はい。あいつは弱いけど馬鹿じゃない。知恵と工夫でどうとでもなるシューター向きなんです」

ラスト一戦。
三雲くん、頑張れ。

「さぁ、どうするオサム」

最後の一戦が始まると、三雲くんは部屋中をアステロイドの弾で埋め尽くした。
弾速を極限まで遅くして、弾丸で訓練室を埋め尽くす作戦のようだ。

「風間さんは透明のままじゃ、弾丸を防御できない。考えたな修」

三雲くんの思っていた通り、風間さんが姿を現した。

「けど、カメレオンなしでも風間さんは強いぞ」

その弾丸を風間さんはスコーピオンで削っていく。
そして、三雲くんに向かって走り出した。
三雲くんは弾丸の壁で動きを制限して、レイガストを盾にしながらアステロイドで迎え撃つつもりなのかな?
それだと風間さんには当たらないから、もっと別のことを考えているのかな?

三雲くんが一気に加速した。
多分、スラスターを起動させたのだろう。
風間さんに向かってシールドチャージして、壁際まで押し込んだ。
そして、レイガストで閉じ込めた後に、一部分を開けてアステロイドを撃ち込んだ。

「決まった」
「やったかな?」

煙が晴れてくると、そこにはスコーピオンで伝達系を切断された三雲くんの姿があった。

「でも読み合いでは三雲くんの勝ちだったね」
「…惜しかったわね」
「…いや。そうでもないよ」

完全に煙がなくなると、風間さんの左腕がなくなっていることに気づく。

「これはトリオン漏出過多かな?」
「引き分けだな」

ここで二人の模擬戦が終わった。
0勝24敗1引き分けだけど、すごい頑張った。

「風間さんと引き分けるなんて…」
「勝ってないけど大金星だな」
「オサム、やったじゃん」
「やった…のかな?」

訓練室から出てきた三雲くんと、空閑くんはハイタッチをした。

「うちの弟子がお世話になりました」
「烏丸…そうか、おまえの弟子か」

烏丸くんも風間さんに話かけに、階段を降りていった。

私も後に続いて階段を降りる。
風間さんの三雲くんへの評価もまずまずといった感じだ。

風間さんは、菊地原くんと歌川くんの待つ階段上に登って行って、そのまま訓練場を後にした。

「ラスト一戦はいい読みだったな」
「烏丸先輩の指導のおかげです」
「けど、一回読み勝つために20回負けてたら普通はアウトだぞ」
「は、はい」
「そうよ!調子にのらないことね!」
「でもすごいよ三雲くん。これからどんどん強くなっていきそうだね」
「ありがとうございます」

そんな話をしていると、私の携帯が鳴った。
見てみると差出人は、荒船くん。

「どうしたんだろう?」
「誰すか?」
「荒船くん」

内容を確認してみると『スナイパーの訓練場に穴が開いた』とのこと。
一緒に送られてきた写真を見てみると、確かに壁に穴が開いている。

「なにこれ?」
「これは…もしかして」
「烏丸くん何か知ってるの?」
「えぇまあ」



「三雲くん、大変だ。きみたちのチームメイトが…!」
「え?」

嵐山さんに何か連絡が入ったようで、三雲くんと空閑くんはスナイパーの訓練場に向かおうとした。

「スナイパーの訓練場ってどこでしたっけ?」
「よければ案内しようか?」
「苗字さん、いいんですか?」
「うん。ちょうど荒船くんから面白い連絡もきたし、スナイパーの訓練場に行きたいなって思って」
「よろしくお願いします!」

私は三雲くんと空閑くんを連れて、スナイパーの訓練場に急いだ。



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