いつもは3部隊ほどなのに、今日の防衛任務は出動部隊の数が多い。
近々、大規模なネイバーによる侵攻があるみたいで、それに備えた動きのようだ。
「だとしても暇だろ」
「その大規模侵攻も、近々起こるっていうだけでいつって分からないから怖いよねー」
「本当にね」
あの5年前の大規模侵攻はまだ起こると思うと怖い。
でも、あの時と違って、私たちは戦える。
今回は、死者を出さないようにしたいな。
『もうすぐ夜が明けるぞー。おめーら大丈夫か?』
「ヒカリちゃーん、今日はこのまま無事に終われそうだね」
『油断すんなよー』
「うん」
夜中に何個かゲートが開いたけど、あっさり撃破。
その後は、特にゲートが開くことはなく夜が明けて、防衛任務が終わったので、私たちは本部に戻った。
「おう、カゲ」
「荒船」
「疲れてるな」
「穂刈くん、おはよう」
本部に戻ると、ラウンジに荒船隊と柿崎隊のメンバーがいた。
「ザキさん、うっす」
「おーカゲ!みんな夜勤お疲れ」
「柿崎さん、お疲れ様です。照屋さんと巴くんもおはよう」
「おはようございます」
「おはようございます!」
荒船隊や柿崎隊はこれから防衛任務なので、私たちと交代。
出る前に軽く朝ごはんを食べていたようだった。
「私たちもお腹すいたー」
「なんかメシ食うか?」
「腹いっぱいにして寝るなよ」
「寝ないよー。防衛任務頑張ってね」
「おう、今日のノート頼んだ」
「了解」
私たちは、一度作戦室に戻ってヒカリちゃんを呼びに行くことにした。
「ヒカリちゃん、お疲れ様」
「おー、おつかれ」
「お腹すかない?軽くご飯食べに行こ」
「いいぜ!」
ラウンジに戻って軽食を食べて、私たちは作戦室に戻った。
学校が始まるまでもう少し。
「寝んじゃねーぞ。ぜってー起きれねーからな」
「わーってるよ!」
「でも眠いよねー。ゾエさんウトウトしてきちゃった」
「寝たらだめだよ、ゾエさん」
「ユズルも厳しいー」
「眠らないように何かゲームでもする?」
「トランプとか?」
「頭使うゲームは余計眠くなんぞ」
「後20分くらいでしょ。それぐらいの時間なら起きてられるでしょ」
みんなで騒いでいたら、あっという間に時間がきた。
「じゃ、また後でなー!」
「女主人公さん、行こう」
「うん」
私とユズルくんは学校の方向が同じなので、途中まで一緒に登校。
雅人くんたちとは本部を出て真逆の方向になるので、本部の入り口でお別れだ。
「今日も何事も起きないといいね」
「本当だね」
「本当に大規模侵攻が起きるのかな?」
「迅さんの予知は絶対だからね…いつになるかわからないのが怖いけど」
「…うん」
「でもきっと大丈夫だよ」
「…そうだね」
「学校にいる間に何かあったら、まずは私たちが合流しようね」
「うん。女主人公さんもちゃんと気を付けてよ。何かあったらカゲさんに顔向けできないよ」
「大丈夫だよ」
分かれ道でユズルくんと分かれて、私は六頴館に向かう。
学校の入り口あたりで、犬飼くんに声をかけられた。
「苗字ちゃん、おはよう!」
「犬飼くん、おはよう」
「疲れてる?夜勤だったんでしょ?」
「そう。出動している部隊がいつもより多くて、暇すぎて逆に疲れちゃった」
「あー、わかる。やることないと暇疲れするよねー」
犬飼くんと教室に向かう。
「今日、荒船くんは防衛任務だっけ?」
「そうだよ」
「そしたら帰りは一緒にボーダー行こうね」
「うん」
「お昼はどうする?辻ちゃんとひゃみちゃんと食べる予定だけど、苗字ちゃんも来る?」
「うん、そうしようかな」
「じゃぁまたお昼に迎えに来るね!」
「ありがとう」
そんな私と犬飼くんのやり取りを見ていた鈴木さんが「…浮気?」と言ってきたので「違うよ」と否定しておいた。
「苗字ちゃんお待たせ!」
宣言通り、犬飼くんがお昼の時間に迎えに来てくれた。
「ううん。わざわざありがとう」
「辻ちゃんたち中庭にいるって、さっき連絡きたよ」
「今日いい天気だもんね」
中庭に着くと、辻くんと氷見さんがベンチに座っていた。
「苗字先輩、お疲れ様です!」
「氷見さん、こんにちは」
「お、おつ、おつかれさ、まです」
「辻くんも、こんにちは」
「だいぶ苗字ちゃんと話せるようになってきたねー」
それぞれ持ってきたお昼ご飯を広げて食べている。
「苗字先輩はいつもパンなんですか?」
「いつもはお弁当なんだけど、今日は夜勤でボーダーからそのまま来たから手抜きだよ」
「夜勤でしたか。お疲れ様です!」
「最近出る部隊が増えたから、シフト回ってくる回数も増えたよね」
「本当ですね」
そんな話をしていると、ボーダー基地の方の空が暗くなっていくのが見えた。
「え…」
「な!ゲート!?」
ボーダー基地を中心に、その周りの警戒区域に無数のゲートが現れている。
「これって迅さんの言ってた…」
「大規模侵攻かな?」
チチチチ
ボーダーから支給されている端末が鳴った。
「緊急呼び出しだね」
「なにあれ…」
「基地の方が真っ暗だよ」
「え、なに」
周りの生徒たちも驚いている。
「とりあえず、おれたちも基地に向かおうか」
「二宮さんに連絡します」
「私もユズルくんに連絡するね」
そう言って携帯を取り出すと、ユズルくんからすでに連絡が入っていた。
『まずは部隊の合流優先だと思うから、オレの中学まで来れる?』
「私はユズルくんと合流しに行くね」
「一人で行くのは危険じゃないかな」
「でも!」
「犬飼先輩、二宮さんが大学からこっちに向かうそうなんですけど、電車が止まっていてこっちまで来れるかどうかわからないみたいです」
「なるほどね」
「二宮さんにはトリオン体になってダッシュで向かってもらうとして、私たちはどう動きますか?」
「おれも苗字ちゃんについていくよ。ユズルくんと合流しないと、一人だもんね?」
「うん。ユズルくんの学校に他のB級の子が通ってるって話は聞いてない」
「なら俺たちも行きます。隊で動いた方がいいと思うので」
「みんな…ありがとう」
「よし、そしたら一回状況を整理しようか」
六頴館にいるボーダーのメンバーは、ここにいるメンバーとオペの子を除くと荒船くん、蔵内くん、奈良坂くん、片桐くん、古寺くん、歌川くん、菊地原くん、一条くん。
「たしか、風間隊は今日は本部待機って言ってたよね?」
「うん。荒船くんも防衛任務中だし…」
「そうなると、会長と合流してから動こうか?」
「A級はそれぞれで動きそうだもんね」
「連絡してみるね」
犬飼くんが蔵内くんに連絡をしている間に、私もユズルくんと雅人くんに連絡を入れた。
ユズルくんには『六頴館のB級メンバーと向かうから待っていて』という内容。
そして雅人くんには『ケガしないように気を付けてね』という内容にした。
雅人くんからすぐに返事が返ってきて『おめーも一人になんなよ』と、私のことを心配する内容だった。
私が一人で行動するかもしれないとバレていたようだ。
「待たせた!」
蔵内くんが中庭にやってきた。
「とりあえず、ユズルくんと合流するために三門第一中学に行こうか」
「わかった。カシオがこっちに向かってるみたいだから、少し待ってもらってもいいか?」
「大丈夫だよ」
「本部からの指示は何か来たか?」
「まだ何も」
「こんな状況だからな、バラバラになるのは得策じゃないよな」
「そうだよね」
「よし!とりあえず、換装しておこうか」
「うん」
全員でトリガーを起動する。
『こちら忍田。全隊員に告ぐ。A級部隊は、全員が合流したのちに、直ちに戦闘を開始せよ。必要に応じて戦闘を許可するが、新型のトリオン兵が確認された。一人では決して戦闘に入るな。B級部隊は部隊の合流優先だ。チームの全員が揃うまで戦闘への参加を許可しない。その後、全部隊合同で市街地の防衛に向かってもらう』
「ということは、やっぱりおれたちは揃うまで戦闘に出るのは難しいってことだね」
「…私たちは夜勤だったし、トリオンが完全に回復していないから合流できたとしても長くは戦えないわ」
「俺もカシオとは合流できそうだけど、王子とは難しそうだな」
「連絡通路が使えればいいけど」
B級部隊の私たちは、チーム全員が揃うまで戦闘はできない。
まずは合流できるよう動くしかなさそう。