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樫尾くんが六頴館高校に着き、私たちはそのまま三門第一中学に向かった。

「ユズルくん!」
「女主人公さん!」
「ごめんね、お待たせ」
「いいよ。それより、女主人公さんトリオン回復してる?」
「あんまり…いつもの半分くらいかな?」
「やっぱり。オレもほとんど回復してないから、ゾエさんなんかはもっと回復してないよね」

夜勤の後、寝ないで学校に来たのがまずかった。
けど、学生だから仕方ない。

「苗字ちゃんたちはなるべく省エネで。おれたちがフォローするから安心して」
「犬飼くん、ありがとう」

「そしたら基地に向かうか。王子も基地を目指して移動中だそうだ」
「そうだね。雅人くんたちも基地に向かってるみたいだし」

私たちは基地を目指した。







基地に近づくにつれ、トリオン兵が姿を見せる。
すでにトリオン兵は、警戒区域を出ていた。

「こちら犬飼、六頴館にいるB級と樫尾、絵馬と警戒区域の近くには着いたのですが、すでにトリオン兵がいて戦闘せずに本部に辿り着くことが難しいです。どうすればいいですか?」

『こ…ちらは…ガガガッ』
「ん?」
「どうしたの?」
「本部と通信が切れちゃった」
「え?」
「通信室に何かあったのか」
「さっき、イルガーが基地に向かって突っ込んでいったけど、それのせいかな?」

蔵内くんは「どうする?このままここにいても何の役にも立たないな」と言った。

「そうだね。要は、B級一人で戦わなければいいってことじゃない?」
「それって」
「おれたちが揃って戦うなら問題ないんじゃないかな?緊急事態だし」
「…確かに」
「じゃぁここにいるメンバーで協力して、まずはトリオン兵たちを排除しようか」

アタッカーである辻くんと樫尾くんを中心に、ガンナーとシューター組がフォローする形で動くことになった。
ユズルくんも、いざという時はアイビスで応戦してもらう。

「カシオは好きに動け。俺たちがちゃんとフォローする」
「わかりました!」

さすがは王子隊。
無茶ぶりにもなれているようで、樫尾くんはトリオン兵に向かっていった。

「アステロイド!」

私も、辻くんと樫尾くんをフォローしつつ、スコーピオンでアタッカー寄りの動きをする。

「数が多いね。辻ちゃん大丈夫?」
「問題ないです」
「氷見さんも、無理しないでね」
「大丈夫ですよ!」

付近にいたトリオン兵をある程度片付けて、私たちは連絡通路へと急ぐ。
連絡通路について、扉を開けようとするとなぜか開かなかった。

「扉が開かないね」
「なんでだろう」
「やっぱり、基地の中で何か起こってるんじゃないか?」
「これ、他の連絡通路もきっと開かないよね。直接本部に向かおうか」
「そうだね…」

私たちは連絡通路を諦めて、本部まで走って向かうことにした。

「新型のトリオン兵が出たって言ってたけど、遭遇しないね」
「A級でも一人で戦ったらダメと言われるくらいなので、遭遇しないほうがいいんじゃないですか」
「そうだけどさー」
「でも、犬飼や苗字は元々A級なんだし、合流しなくても問題ないと思うけどな」
「忍田さんの考えがあってのことだろうから仕方ないよ」
「こういう時のために、普段から部隊の枠をこえた訓練も必要なのかなって思うね」
「本当だね」

本部に急いでいた私たちだけど、途中、トリオン兵と遭遇して戦う、の繰り返しでなかなか進むことができなかった。

「もう一度本部に通信つながるか試してみるね」
「うん」
「こちら犬飼、忍田本部長?」

『こちら忍田』
「あ、つながった」
『通信がつながらなかったか。すまない。そちらの状況は?』
「六頴館のB級と、樫尾、絵馬でトリオン兵を破壊しながら基地に向かっています。ただ、二宮隊も影浦隊も、王子隊も全員が揃うのは難しいです」
『そうか』
「連絡通路が開かないんですけど、何かありました?」
『ブラックトリガーが侵入してきた。今、諏訪隊が対応している』
「本部のみなさんは大丈夫なんですか?」
『とりあえず、だな。おまえたちはそちら側にいる残りのB級と合流して、引き続きトリオン兵の対応にあたってくれ』
「犬飼、了解」

本部との通信が復活して良かったけれど、本部にブラックトリガーが侵入しているとは思ってもみなかった。

「大丈夫かな」
「諏訪隊以外にもいるだろうから、きっと大丈夫だよ」
「そうだね…」
「おれたちは残りのB級と合流して、トリオン兵と戦おう」
「うん」



その後、基地東部に残っていたB級の子たちと合流し、私たちはトリオン兵と戦った。
市民の避難・誘導をしていたC級の子たちも守りながらだったけれど、この人数がいれば問題はなかった。

「おまえら、大丈夫か?」
「太刀川さん!」

途中で太刀川さんが合流してくれたので、さらに楽になった。



そして、どのくらい時間が経ったかはハッキリとしていないけれど、ゲートがすべて閉じて三門市の上空には青空が戻った。

「終わった…?」
「…みたいだね」
「もうトリオンギリギリだったよ」
「女主人公さん大丈夫?」
「うん。ユズルくんも大丈夫?」
「オレは平気」

「落ち着くのはまだ早いぞ。残りのトリオン兵を片付ける」
「はい」

太刀川さんと協力して、残ったトリオン兵をすべて片付けた。

「こちら太刀川。ネイバーは片付けた。けどC級の数が合わない。俺たちが着くまでにけっこう攫われたっぽいな」
「そんな…」

太刀川さんの言葉に、私は言葉を失ってしまった。

「…終わったことを悔やんでも仕方ない。次に活かすぞ」
「…はい」



こうして、二回目になるネイバーによる大規模侵攻は終結した。
私たちはそのまま被害状況の確認や、怪我人の対応のため市街地に向かって、救護班と連携して動いた。
夜勤明けなのに眠気はなく、疲れも感じないので、ただただ体を動かしていた。

「苗字ちゃん、少し休んだら?もうトリオンないでしょ?」
「…ううん、大丈夫」
「苗字ちゃんが倒れたら、カゲが心配するよ」
「そうだよ。オレたちは夜勤組だったんだから、先に本部に戻らせてもらおうよ」
「…うん」
「何かしてた方が気持ちがまぎれるのはわかるけど、それは元気になってからにしよう。大丈夫だよ。苗字ちゃんが市民のために頑張って動いてたのは知ってるから」
「…犬飼くん、ありがとう」

私とユズルくんは、そのままボーダー本部に向かった。

「カゲさんに連絡入れといたら?」
「そうする」

私は携帯を取り出すと、雅人くんに連絡をしようとした。
けれど、それと同時に雅人くんから電話がかかってきた。

「もしもし?」
『大丈夫か?』
「うん。疲れたけど、ケガもないよ。ユズルくんも大丈夫」
『そうか』
「雅人くんたちは?」
『俺たちも大丈夫だ。ゾエなんかピンピンしてるぜ』
「そっか。今から本部に戻るね」
『おー』

そう言って通話を切った。

「カゲさんたち元気そうで良かったね」
「そうだね。まぁあの二人は大丈夫だと思ってたけど」
「たしかに」

私たちは本部に急いだ。
声を聞けて安心したけれど、やっぱり早く顔が見たい。



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