43

「女主人公!ユズル!」

本部に戻ると、雅人くんたちが待っていてくれた。
ヒカリちゃんが駆け寄ってくると、私たち二人をまとめて抱きしめた。

「心配したぜー!無事でよかったなぁ!」
「苦しいよヒカリ…」
「ヒカリちゃん、ありがとう。ヒカリちゃんたちも無事でよかったよ」

「二人とも良かったー!合流できなくて心配してたんだよ」
「オレたち二人なら大丈夫だってわかってたでしょ」
「そうだけど。それでも心配したよ!」

雅人くんは、遅れて私たちのそばに来て「おつかれ」と一言だけ言うと、私の頭を優しくなでた。
いつもの乱暴ななで方ではないから、私は少し涙が出そうになって、雅人くんに抱きついた。

「!?」
「おおー!女主人公大胆だな」
「女主人公!んなところで抱きつくな!」
「…良かった…」

恥ずかしさから、雅人くんは私から距離をとろうと両肩を掴んでいたが、私のその一言で動きが止まった。

「…無事で良かった…」
「…俺はつえーから心配すんな」
「…うん…わかってたけど、やっぱり顔を見たら安心した…」

そう言うと、雅人くんも抱きしめ返してくれた。

「俺のが心配で死にそーだったわ」
「うん…」



「おめーら、ここがどこだか知ってっか?ボーダー本部のラウンジ。しかも人がたくさんいる」

ヒカリちゃんの言葉で、我に返った私たちはすぐに離れた。

「情熱的なラブシーンかますのはいいけど、場所考えてやれよぉー」
「うるせー!」
「ヒカリちゃんの言う通りだよー。もう二人とも、TPOを考えてよね!」

やってしまった恥ずかしい。
雅人くんに会えた安心感でついつい抱きついてしまった。







大規模侵攻から数日が経った。
あれから、三門市は復旧作業を少しずつ進めているようだ。

「そういえば、今日ってボーダーの記者会見があるみたいだね」
「大規模侵攻のこと?」
「うん。なんか説明しなきゃいけないみたいだよー」
「上層部も大変ね」

私たちは、作戦室でのんびりしていた。
もうすぐ2月。
高校最後のランク戦が始まる。

「次のランク戦が高校最後かー。なんだかあっという間だったね」
「おめーら、結局進路はどうすんだぁ?」
「みんな進学だよ」
「ボーダー続けんなら、それしかねーだろ」
「カゲはそのままボーダーに就職するのかと思ってたよ」
「大学行くのも悪くねーだろ」
「推薦してもらえて、本当良かったね。女主人公ちゃんも結局三門大にするんだね」
「うん。トリオンのこと、もっと色々勉強したいなって思ったから」

私たちは三人とも、卒業したら三門市立大学に進むことになっている。

「また同じ学校に通えるの、楽しみにしてるね」
「おめーが決めたんならなんも言わねーよ」

雅人くんは、私が遠慮していると思っているみたいだけど、私はちゃんと自分の学びたいことができて、それを学ぶには一番いいと思った選択をした。
だからまた一緒に学校に通えるのが嬉しい。

「学校が違うと、なかなか会えないもんね」
「ボーダーで会ってんだろ」
「またまたー。そんなこと言って、学校行事の時とか、カゲさみしそうにしてたじゃん」
「そうなの?」
「んなことねーよ!」

さみしがってる雅人くん、見たい。

「ユズルは中3だもんな」
「うん」
「学校が被ることないよねー。それだけユズルが若いってことなんだけど」
「ボーダー隊員いねーからさみしーだろ?」
「別に。むしろめんどくさくなくてラクだよ」
「ユズル…おめーちゃんと友達いんのか?」
「別にいいでしょ」

そんな話をしていると、ボーダーの記者会見が始まる時間になった。

「どうする?記者会見観る?」
「興味ねー」
「あらら」
「俺はランク戦行ってくる」
「じゃぁゾエさんも一緒に行こうかな」
「行ってらっしゃい」
「ユズルは訓練か?」
「うん。自主練してくるよ」
「アタシはねっかなー。昼寝してるから女主人公も適当にくつろいでろよー」
「はーい」

そう言って、雅人くんとゾエくんはソロランク戦に、ユズルくんはスナイパーの訓練場に、ヒカリちゃんはこたつに向かった。
私はテレビをつけて、ボーダーの記者会見を観ることにした。

『…それは戦闘の規模が大きかったから、40人程度は誤差の範囲ということでしょうか』

なんだか嫌な雰囲気だな。
そう思いながら観ていると、私の携帯が鳴った。

「もしもし」
『おう、俺だ』
「誰でしょう」
『ふざけてんのか』
「はいはい、荒船くんどうしたの?」
『記者会見観てるか?』
「観てるよー。すごい言われようだね」
『本当にな。それよりも、おまえたち、ラウンジでラブシーン繰り広げたんだって?』
「!!なんで知ってるの…」
『噂になってたぞ』
「別に…ラブシーンじゃないけどね」
『目立つことしてんな』
「あの時は仕方なかったの」

荒船くんと話しながらも、片耳は記者会見の内容を聞いている。

『ボーダーには緊急脱出のトリガーがあると聞いています。なぜそれを訓練生にも装備させないんですか?』
『トリガーが足らんからに決まっとろう!全員に付けられるもんなら付けとるわい!』

「鬼怒田さんもだいぶ怒ってるわね」
『そりゃあそうだろ。ベイルアウト機能一つ付けるのにも金と労力がかかるからな』
「それで、荒船くん用事は何?」
『カゲはいるか?』
「雅人くんならソロランク戦しに行ったわ」
『だから電話に出ないのか』
「用事だったの?」
『今日、久しぶりにかげうら行こうっていうお誘いだ』
「じゃぁ終わったらラウンジ集合ね。連絡入れておいて」
『おう』

それだけ言うと、荒船くんは電話を切った。

そしてテレビに目を向けると「え?三雲くん?」そこには入院着で松葉づえをついている三雲くんが現れた。

「すごいケガ…大丈夫なのかな?」

『どうしてここに!?ケガは大丈夫なのか?!』
『大丈夫です』
『んなわけないだろ』

忍田さんと林藤さんが焦っている様子が映る。
よほどのケガなのだろう。

三雲くんは、今回C級が狙われた理由が、自分が学校で訓練生用のトリガーを使ってトリオン兵と戦ったことが原因だということを話した。
ベイルアウト機能がついていないにも関わらず、その場で戦い、換装が解けたという情報をネイバーに渡したことで、C級にはベイルアウトが使えないことがバレた。
でも、もしもう一度同じようなことが起こったら、目の前の人を助けるために、また同じようにすると。
そうハッキリと言った三雲くんの姿は、誰よりも立派だった。

そして、話の流れでネイバーフッドに遠征に行く話が出た。

「あれ?遠征のことって機密事項じゃなかったっけ?」

『…彼の言ったとおり、現在ボーダーでは連れ去られた人間の奪還計画を進めている。すでに無人機でのネイバーフッドへの渡航・往還試験は成功した』

城戸さんがそう言うと、マスコミは納得したようだった。

「なるほど。これから行くってことにするのね」

一人の人間を悪にしようとした根付さん。
それを捻じ曲げた三雲くん。
そして、マスコミを使ってボーダーの印象操作をしている城戸司令。

「これが大人のやり方なんだろうけど、三雲くんはまだ中学生…。傷ついていないか心配だな」

後で烏丸くんに聞いてみよう。



>> dream top <<