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「混んでんなー」
「本当だな。空いてる席探そうぜ」


ここはボーダーのラウンジ。
出水と米屋はソロランク戦に行く前に、ご飯を食べるためにラウンジに寄っていた。
混んではいたが、空いている席を見つけて二人はその席に座った。

「んじゃオレの分もよろしくー!」
「うっせー」

何やら二人は賭けをしていたようで、負けた出水が買いに行くようだ。



「ほらよ」
「サンキュー!」

出水が買ってきたラーメンを米屋が受け取る。
出水も自分の分を食べ始めると、後ろの席から話し声が聞こえてきた。

「そういえば聞いたか?」
「あぁ苗字さんのことだろ」
「ショックだよなー」

最初は何でもない話をしていた後ろのグループだったが、聞き覚えのある名前が出たため、出水は食べるのをやめた。

「ん?どうした?」
「ちょっと喋んな!」

米屋は、出水が急に食べるのをやめたのを不審に思い、声をかけたが出水がストップをかけた。

「まさか影浦さんとは思わないだろ」
「それ、デマなんじゃねーの?影浦さんじゃなくて荒船さんだろ?」
「俺は烏丸って聞いたけど」
「それこそ嘘だったんだろ」
「影浦さんがいけんなら、俺でもいいじゃんかよー」
「おまえじゃ無理だろ」
「あーあー…なんで付き合ってんだろーあの二人」
「俺もあんな美女と付き合いてー」


米屋も、後ろの席のグループの話している内容に気づいた。

「おーい…大丈夫か?弾バカ?」
「…な…な…なんだってー!!!」
「わーうるせー」

出水はそのまま席を立つと、C級ブースのロビーに向かって猛ダッシュをした。

「はえーなー」







出水はC級ブースのロビーに着くと、あたりを見回した。

「あれ?いずみん先輩じゃん!何してんの?」
「緑川!!女主人公さんどこだ!?」
「え?女主人公さん?さっきまでブースで戦ってたよ」

ほら、と緑川が指をさした方を見る。
そこには女主人公と相手をしていた村上、そして影浦、荒船の姿があった。
ちょうど、女主人公と村上の勝負が終わったところで、影浦と荒船の座っている席に二人が向かうところだった。

「女主人公さーーーーーーん!!!」

「え?出水くん?」

出水はダッシュで女主人公のもとに走ると、そのまま女主人公の両肩を掴んだ。

「?」

「影浦さんと付き合ってるって本当ですか!!??」

ブースにいる隊員全員に聞こえるであろう大きな声で、出水は女主人公に聞いた。

「えっと…出水くん?落ち着いて」
「どうなんですか!!」
「えっと、うん。本当だよ」

そう言って女主人公は、少し恥ずかしそうに微笑んだ。
それを見た出水は「女主人公さんが…照れている…」と驚いた。

「てめーは何してんだよ」

そこに影浦がツッコんだ。

「影浦さん!!聞いてないですよ!女主人公さんといつから付き合ってたんですか!」

噂でしか聞いたことがない周りの隊員が、心の中で出水に対して、よくぞ聞いてくれた、と思っていた。
周りが聞きにくかったであろう突っ込んだ質問を二人に投げかける。

「おめーに関係ねーだろ」
「ありますよ!!おれは女主人公さんの師匠なのに!!」
「わー…ごめんね。出水くん、遠征から帰ってきてからも忙しそうだったから、ちゃんと言えてなかったね」

「オレは知ってたけどなー」

米屋が出水に追いついて、少し煽るようなことを言った。

「うっせー!槍バカ!!」
「てか、いずみん先輩なんでこんな怒ってるの?」

緑川も米屋と一緒にやってきた。
ヒートアップしている出水を落ち着かせるために、荒船と村上が間に入る。

「とりあえず、落ち着け出水。そんで、まずは女主人公の肩から手をどけろ」
「そうだ。多分、これ以上はカゲが怒るから」

その言葉に、少し落ち着きを取り戻した出水。

「と、とりあえず、一回座ろうか」

女主人公は座ることを提案した。
出水もそれに素直に応じてソファーに座った。

「んで、師匠なのが何か関係あんのかよ」

影浦は少しイラつきながら、目の前に座った出水に聞いた。

「おれ、師匠なのに何も知らなかったんでショックだったんです」
「そっか…ごめんね」
「なんだ出水。もしかしておまえ、女主人公のことが好きなのか?」
「あ、荒船!そんなこと聞くなよ」
「いや、ここはハッキリさせといた方がいいだろ?カゲも女主人公も、その方が安心だろ」

「好きっていうか、おれにとって女主人公さんは姉ちゃんみたいな感じです」
「???」
「弾バカは結構シスコンなんですよね。実姉に対しても」
「そうなんだ」
「おれは師匠だけど、戦闘から離れたら女主人公さんはおれにとって姉ちゃんなんです!」
「勝手にねーちゃんにすんな!」

影浦はそう言うと、出水の頭を殴った。

「いってー!くない」
「トリオン体なんだから痛くねーだろ」

「ようするに、出水は女主人公をカゲに取られたって思ったんだろ」
「そうです!」
「おめーんじゃねーよ!」

そう言うと、もう一度影浦は出水を殴る。

「女主人公さん!影浦さんめっちゃ暴力的なんですけど!」
「うーん…それはしょうがないんじゃないかなー…」
「影浦さんの味方なんですか!」
「ごめんねー」

女主人公がそう言うと、出水はしくしくと泣き出した。

「こいつは俺のなんだから、俺の味方なのはあたりめーだろ!」
「女主人公さん!モラハラですよー!!」

と言って出水が女主人公を見ると、心なしか少し嬉しそうな顔をしている女主人公がいた。

「え?女主人公さん、照れてます?」
「え!あ、だって俺のって言ってくれたから…」

そう言うと、女主人公は顔を赤くした。
そんな女主人公の姿を見て、影浦も少し顔を赤くして照れた。

「バカップルだー!!」
「バカップルじゃなきゃ、ラウンジでラブシーン繰り広げないだろ。どこのハリウッド映画だよ」
「その話は忘れてください」

出水は影浦の方を見て、真剣な顔で聞いた。

「影浦さん、女主人公さんのこと好きですか?」
「好きじゃなきゃ一緒にいねーよ」
「そういうんじゃなくて!ちゃんと女主人公さんのこと幸せにできますか!?」

「…そういう覚悟で一緒にいんだよ」

その答えに納得したのか、出水は影浦に対して頭を下げた。

「感情のまますみませんでした!でも影浦さんなら女主人公さんのこと任せられるって思ってます!絶対泣かせないでくださいよ!」
「言われなくてもわかってるっつーの」

「出水は誰目線なんだ?」
「弟じゃないか?」

「結局なんだったの?いずみん先輩は女主人公さんのことが好きなの?」
「シスコンってことだろ」

「良かったな、めんどくせー弟ができて」
「まさかの弟ができちゃったよ」

出水がC級ブースで大騒ぎしたおかげで、ボーダー内で影浦と女主人公が付き合っていることを知る人間が増えた。
そのおかげで、女主人公のボーダー内での呼び出しが格段に減ったのは言うまでもない。



だが

「おー、出水。おまえ苗字にどでかい声で告白したんだろ?やるなー」
「太刀川さん…それデマです」

話がねじ曲がって伝わっている人もいるとか、いないとか。



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