「なにこの数値!ブラックトリガーレベルじゃん!」
雨取のトリオン数値を見て、小南と宇佐美は驚いた。
「千佳ちゃんすごーい!」
「どうなってんの…?」
玉狛支部のリビングに集まって、小南、木崎、烏丸がそれぞれの弟子である空閑、雨取、三雲について話をしていた。
「雨取のトリオン能力は超A級だ。忍耐力と集中力があって、性格もスナイパー向き。”戦い方”を覚えれば、エースになれる素質はある」
「おお〜!レイジさんがそんなにほめるとは。こりゃ千佳ちゃんが一番の有望株か〜?」
宇佐美はメガネをキラリと光らせて言った。
「むっ…うちの遊真のほうが強いよ!今でも余裕でB級上位くらいの強さはあるし、ボーダーのトリガーに慣れればすぐA級レベルになるんだから!」
負けじと、小南も弟子自慢を始めた。
「こなみ先輩より強くなります」
「それはない。調子に乗るな」
「ふむふむ、じゃぁ遊真くんにはトリガーの説明したほうがいいかもね。普通はB級に上がってからなんだけど」
「そっちはどうなのよ、とりまる。そのメガネは使い物になりそうなの?」
「うーん…」
小南に聞かれると、烏丸は黙り込んだ。
なかなか答えない烏丸を、不安そうな目で三雲は見ている。
「今後に期待…としか言えないすね」
「なにそれ、つまり現時点で全然ダメってことじゃん!ちゃんと強くなるんでしょうね?玉狛の隊員に弱いやつはいらないんだけど」
「うっ…」
小南の言葉に三雲は少し顔を青くする。
「いや、でも小南先輩。こいつ、小南先輩のこと”超かわいい”って言ってましたよ」
「!?」
「えっ…!?そうなの!?」
「うむ、言ってた気がする」
「ホントに!?」
烏丸の言葉に小南は顔を赤くして照れながら、三雲をポカポカと軽く殴った。
「ちょっとあんた、やめてよねそういうお世辞!お世辞じゃないのかもしれないけど!」
「いや、その…」
「すいません、ウソです」
「…!?」
「お世辞じゃなくてウソです」
「なっ…!だましたな!?このメガネ!!」
「だましたのはぼくじゃないですよ!」
小南は泣きながら三雲にヘッドロックをきめる。
「傷ついた!プライドが傷つけられた!」
「だからぼくじゃないですって!」
「こらこら小南さん、その辺にしておきましょう」
リビングの扉が開くと、男主人公が買い物袋を提げて入ってきた。
「男主人公さん」
烏丸は男主人公に近づくと、男主人公が持っている買い物袋を持った。
「持ちます」
「大丈夫ですよ」
烏丸は男主人公の言葉を無視して、買い物袋を半ば強引に奪い取った。
「これくらい全然重たくないのに」
「俺がやりたいだけなんで」
「ありがとうございます」
その様子を見ていた三雲は「男主人公さんは、烏丸先輩の師匠なんでしたっけ?」と聞いた。
「ああ」
「と言っても、大したことは教えてないですけどね」
「そんなことないすよ。男主人公さんのおかげでここまで強くなれたんで」
「男主人公さんは、外国の人?」
「えぇそうですよ」
「ふーん…」
空閑が男主人公を観察するように見ていると、間に烏丸が割り込んだ。
「どうした?」
「いや、別に」
「よし、休憩は終わりだ。そろそろ午後の訓練を始めるぞ、雨取」
「はい!よろしくお願いします」
「おれたちも訓練行こうぜ、こなみ先輩。今日こそ勝ち越せる気がする」
「はぁ?千年早いから」
そう言うと、木崎と雨取はスナイパーの訓練室に、小南と空閑は2号室に入っていった。
「さて、俺たちも行くぞ、三雲」
「はい!烏丸先輩」
「そうだ、京介。俺、今日は夜遅くなるのでご飯はいりません」
「そうなんすか?」
「えぇ。悠一も遅くなると思うので、なしで大丈夫ですよ」
「…わかりました」
「三雲くん、頑張ってくださいね」
「はい!」
『目標地点まで残り1000』
「おいおい三輪。もっとゆっくり走ってくれよ。疲れちゃうぜ」
玉狛支部に向かっているのは、本部所属の太刀川隊、冬島隊、風間隊、三輪隊のメンバー。
玉狛支部の空閑遊真の持つブラックトリガーを回収せよ、という命令を受けたボーダーのトップチームだ。
『目標地点まで残り500』
「!!止まれ!」
太刀川隊隊長の太刀川が何かに気づき、走りを止めた。
そこに立っていたのは、迅と男主人公だった。
「迅…!!男主人公さん…」
「なるほどそう来るか」
「太刀川さん久しぶり。みんなお揃いでどちらまで?」
「うおっ迅さんと男主人公さんじゃん。なんで?」
「よう当真。冬島さんはどうした?」
「うちの隊長は船酔いでダウンしてるよ」
「余計なことをしゃべるな当真」
「こんな所で待ち構えてたってことは、俺たちの目的もわかってるわけだな」
「うちの隊員にちょっかい出しに来たんだろ?最近、うちの後輩たちはかなりいい感じだから、ジャマしないでほしいんだけど」
「そりゃ無理だ…と言ったら?」
「その場合は仕方ない。実力派エリートとして、かわいい後輩を守んなきゃいけないな」
そう言うと、迅は風刃を軽く触る。
「…」
「なんだ迅、いつになくやる気だな。男主人公もいるし」
「おいおいどーなってんだ?迅さんと男主人公さんと戦う流れ?」
「”模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる”。隊務規定違反で厳罰を受ける覚悟はあるんだろうな?迅、男主人公」
「それを言うならうちの後輩だって、立派なボーダー隊員だよ。あんたらがやろうとしていることもルール違反だろ、風間さん」
「…!」
その言葉に、三輪隊の隊長である三輪が反応した。
「”立派なボーダー隊員”だと…!?ふざけるな!ネイバーを匿ってるだけだろうが!!男主人公さんも、なぜ迅の味方をしてるんですか!!」
「秀次…」
「ネイバーを入隊させちゃダメっていうルールはない。正式な手続きで入隊した正真正銘のボーダー隊員だ。誰にも文句は言わせないよ」
「なん…」
「いや迅。おまえの後輩はまだ正式な隊員じゃないぞ」
迅の言葉を太刀川は否定した。
「玉狛での入隊手続きが済んでても、正式入隊日を迎えるまでは本部ではボーダー隊員と認めてない。俺たちにとって、おまえの後輩は、1月8日まではただの野良ネイバーだ」
太刀川は、起動していたバックワームを解除した。
「仕留めるのになんの問題もないな」
「…」
「へぇ…」
「邪魔をするな迅、男主人公。おまえたちと争っても仕方がない。俺たちは任務を続行する」
風間はそう言うと「本部と支部のパワーバランスが崩れることを別としても、ブラックトリガーを持ったネイバーが野放しにされている状況は、ボーダーとして許すわけにはいかない」と続けた。
「城戸司令はどんな手を使っても、玉狛のブラックトリガーを本部の管理下に置くだろう。おとなしく渡したほうがお互いのためだ。…それともブラックトリガーの力を使って、本部と戦争でもするつもりか?」
「城戸さんの事情は色々あるだろうが、こっちにだって事情がある。あんたたちにとっては単なるブラックトリガーだとしても、持ち主本人にしてみれば命より大事な物だ」
「…本当、そうですよね」
「別に戦争するつもりはないが、おとなしく渡すわけにはいかないな」
「あくまで抵抗を選ぶか…」
迅がそう言うと、風間はあきれたように言った。
「おまえも当然知っているだろうが、遠征部隊に選ばれるのはブラックトリガーに対抗できると判断された部隊だけだ。他の連中ならともかく、俺たちの部隊を相手におまえと男主人公二人だけで勝てるつもりか?」
「おれたちはそこまで自惚れてないよ。遠征部隊の強さはよく知ってる。それに加えてA級の三輪隊。おれがブラックトリガーを使ったとしても、いいとこ五分だろ」
「”おれたち二人だったら”の話だけど」
迅がそう言うと「嵐山隊、現着した!」と、近くの屋根に嵐山隊のメンバーが現れた。
「忍田本部長の命により、玉狛支部に加勢する」
「嵐山…!」
「嵐山隊!?」