同じクラスではない男の子に呼び出された。
こういう時、中学までなら雅人くんの睨みで相手の男の子は去っていったけど、あいにく雅人くんはいない。
「なんでしょう?」
「ここじゃああれだから、ちょっと移動しない?」
うーん、困った。
相手の雰囲気を見るに、あまりいい呼び出しとは思えないから正直言うと行きたくない。
後で雅人くんに報告した時に、不機嫌になるのが目に見えているから、余計に行きたくない。
「悪いな。女主人公はこれから期末試験の勉強だ」
ポンツ
と後ろから肩を叩かれたので振り向くと、荒船くんがいた。
「そうなの?てか、苗字さんの名前…」
「ん?女主人公は女主人公だろ?」
「二人って、もしかして…」
「ほら行くぞ。みんな待ってる」
「あ、荒船くん」
荒船くんは私の手を引くと椅子から立たせ、その男の子には目もくれず歩き出した。
「荒船くん!」
「ん?」
学校を出て、ボーダーに向かう道の途中でようやく立ち止まってくれた荒船くん。
「助けてくれてありがとう」
「あぁ。この前カゲに、女主人公が男に呼び出されたら問答無用で助けろって言われたんだ」
「正直助かったよ。中学までは雅人くんがいたから」
「カゲの言ってた通りだな。目立つ容姿だから大変だな」
あまり言いたくないけれど、荒船くんの言う通り。
昔から、周りに容姿を褒められることが多い。
この容姿のせいで、一緒にいる雅人くんが余計嫌な感情を向けられることも多く、私はあまり自分の顔が好きではなかった。
こんなことを言うと、周りには「自慢してる」「嫌味だ」と受け取られてしまうかもしれないから、言葉に出したことはないけど、目立っていいことはあまりない。
私が男の子から絡まれるたびに、雅人くんが壁になって、喧嘩になることが多かった。
「とりあえず、カゲにも頼まれたから学校では俺を頼れ」
「うん、ありがとう」
「やっほー!二人とも、デート?」
荒船くんの言葉にホッとしていると、後ろから声をかけられた。
「犬飼か?」
「そうだよー!荒船くん、この間ぶり!」
「よう。お前も今からボーダーか?」
「うん。二人も?デートじゃないんだ?」
これが噂の犬飼くんか、と私がジッと見つめていると
「ちょっと照れるね〜。初めまして、犬飼澄晴です」
「照れるの?苗字女主人公です。よろしくね」
「だって苗字ちゃん有名だし。話せてラッキーだよ」
何が有名なのかはとりあえずおいておこう。
「それよりも、犬飼くんも一緒に勉強する?期末対策しようって話してたんだ」
「おれも混ぜてくれるの?助かるよー!二人はおれよりも頭いいし、頼りにしてるよ」
そう言って、私たちは三人でボーダーに向かった。
もう少し静かなところで、とも思ったけど、なんだかんだボーダーのラウンジや食堂が適度に騒がしくて集中しやすい。
それに、分からないことがあっても、三年生の先輩たちもいるから一番いいという結論になった。
「てか、本当に二人は付き合ってないの?」
「付き合ってないよ?」
「付き合ってねーな」
空いている席を見つけて座ると、教科書を取り出しながら犬飼くんが質問をしてきた。
「ふーん、そうなんだ。結構一緒にいるところ見るから、付き合ってるのかなって思ってたよ」
「そんな風に見えてたの。荒船くんに申し訳ない…」
「別に気にしないけど、俺は自分よりも幼なじみを大事にする女は無理だな」
「荒船くんって、本当ハッキリ言うよね」
そんなやり取りをしていると、私の携帯が鳴った。
「あ、雅人くんたちも勉強するって」
「じゃぁここに呼ぶか」
「雅人くん?」
「うん。私の幼なじみ」
ポチポチと携帯を操作しながら、犬飼くんからの質問に答える。
「さっき荒船くんが言ってた、苗字ちゃんの幼なじみ?」
「あぁ。カゲは普通校なんだよ」
「そうなんだ」
そうこうしているうちに、雅人くんがゾエくんと知らない男の子を二人連れて、やってきた。
「あ?誰だこいつ?」
「睨まないの。D組の犬飼くん」
「初めましてー!犬飼だけど犬は飼ってないよ。よろしくね!」
「よろしく頼む。穂刈だ」
「それ、お前の持ちネタか?当真だ」
「こいつらも同じ学校、同い年で、その辺にいたからとりあえず連れてきた」
「カゲ〜、そんな言い方ねーだろ。で、この別嬪さんは誰だ?カゲのコレか?」
と当真くんが小指を立ててきたけど、全然違う。
「ちげーよ、幼なじみ」
「そうそう」
「なんだつまんねー。だったら俺が狙っても文句ねーな?」
「はあ?こいつがおめーみてーなバカ好きになるかよ」
雅人くんは当真くんの言葉に笑った。
「そしたらカゲもだめだな。頭的な意味で」
「穂刈ぶっ潰す!ブース入れおらっ!」
「ダメダメー!今日は勉強しにきたんでしょ?今回の期末、赤点取ったらやばいよ〜!」
ギャーギャー騒いでいる普通校組は無視して、私は勉強を始めた。
「ねー苗字ちゃん。本当に彼が幼なじみなの?」
「うん、そうだよ」
「なんだか雰囲気が全然違うね」
「うーん、まぁ雅人くんはやんちゃだからね」
「やんちゃというか…なんというか…」
犬飼くんは、騒いでいる4人を見ながらなんとも言えない表情をしていた。
「ああ見えて、面倒見が良くて優しいんだよ」
「そうなんだ。幼なじみにしか知らないことってあるよね」
「うん。とっても大切な人なんだ」
そう言いながら、私は雅人くんの方を見た。
あぁやって、みんなでワイワイしてる雅人くんを見ることが、最近の私の幸せ。
と、思っていると雅人くんがいきなりこちらを見た。
「女主人公!ほのぼのとした感情刺してくんのやめろ!」
そう言った雅人くんの顔が可愛くて笑ってしまった。