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「おつかれさま」
「0点は回避っすね」
「悪い、空閑を仕留められなかった」
「いや、相手がうまかったなあれは」



B級ランク戦ROUND2夜の部は、玉狛第2が勝利した。

『諏訪隊長、荒船隊長がベイルアウト!ここで決着!最終スコア6対2対1。玉狛第2の勝利です!』

生存点込みで、玉狛第2は今回の試合も6得点。

『玉狛第2の勢いは止まらない!』

『相手の得意な陣形を崩す。エースの空閑うまく当てる。この二つを徹底して実行できていたことが6点という結果につながったと思います』

東さんの解説が始まった。

あえて、荒船隊有利の地形を選ぶことで、諏訪隊と連携するような動きを作り、荒船隊のメンバーを補足する。
そして、順番に一人ずつ落としていって最後は空閑くんを囮にして三雲くんが諏訪さんを獲る。
見失うと厄介なスナイパーを、諏訪隊を使って見事に補足&撃破した玉狛第2は素晴らしい。

の、だが。

「うーん」
「あれ?苗字さん、なんか機嫌悪い感じ?」
「そうじゃないんだけど…なんかなー荒船くんたちが1点しか獲れないことに納得ができなくて」
「作戦がしっかり考えられていましたよね」

『今回は、荒船隊全員をマークするためにバラけざるをえなかった諏訪隊。これも玉狛の計算のうちだと思います』

「米屋先輩」
「あん?どした?」
「玉狛の作戦って、そんなに意味があったんですか?単にクガって人が強かっただけに見えたんですけど」
「どうなの?センパイ」
「おれですか?」

黒江さんは米屋くんに聞いたのに、米屋くんは古寺くんに話を投げた。

「黒江ちゃんの言う通り、確かに空閑は強いけど、普通のマップで五分の条件だったら、玉狛が荒船隊を崩すのは難しかったと思うよ」
「そうなのよね。諏訪隊を巻き込んで高台を取れるかどうかの勝負に引き込んで、地形を使って相手を動かすことがとっても上手だったのよ」
「そうですね。”動かされた側”の2チームはずっと対応に追われて、”動かした側”の玉狛は最後まで”次の一手”があった。その余裕の差があったから、結果的に点差が開いたんだと思うよ」
「荒船くんがそれに気づいてないはずないのよね。だからこそ、こんなに一方的な結果なのが悔しい」
「わー苗字さん、身内贔屓の発言」
「…なるほど。ありがとうございます」

黒江さんはそう言うと、丁寧に頭を下げた。

『えー…古寺と苗字に全部言われたので話すことがなくなっちゃいました。後、苗字は贔屓しない』
「あっすいません!」
「ごめんなさい」

東さんの発言に、会場にいる隊員たちは笑い出した。

『…さて本日の試合がすべて終了!暫定順位が更新されます!』

画面の順位が入れ替わった。

『玉狛第2が8位に上昇!早くもB級中位のトップに立った!諏訪隊は10位、荒船隊は11位にダウン!次回の対戦の組み合わせも出ました!注目の玉狛第2の次の相手は…』

画面に次回の組み合わせが表示された。

『暫定13位那須隊と暫定9位、鈴鳴第一です!』
『これは…面白い組み合わせですね。鈴鳴第一と那須隊は、前衛、中衛、後衛がそれぞれ一人ずつ。そして中衛の隊員がリーダーという玉狛第2とまったく同じ編成のチームです。そして、鈴鳴第一にはナンバー4アタッカーの村上がいる。玉狛は次のマップを選べないし、順位的にもマークされる側…。玉狛第2に真価を問う一戦になりそうですね』

「苗字さんの身内チームその2じゃん」
「そんなんじゃないけどね」
「苗字さんたちの代は、本当横のつながり強いですよね。特に荒船さんと鋼さんとは仲が良いですから、次の試合も楽しみですね」
「そうだね」

試合が終わり、隊員たちが観覧室を後にする。
私たちも席を立ち、扉に向かって歩き出すと嵐山さんたちの姿を見つけた。

「嵐山さんちーっす」
「おっ、珍しい組み合わせだな」
「嵐山さん、時枝先輩、おつかれさまです」
「うん、おつかれ」
「おつかれさま、双葉ちゃん」
「…どうも。失礼します」
「黒江ちゃんって、あいかわらず木虎に冷たいよね」
「嵐山さん、時枝くん、木虎さん、こんにちは」
「おう苗字。荒船隊、残念だったな」
「玉狛第2にしてやられましたね」
「次に活かすしかないな!」
「そう伝えておきます」

観覧室を出ると「苗字さんはこの後どうします?」と米屋くんに聞かれた。

「とりあえず、荒船隊の作戦室に寄ろうかな」
「了解っす!オレらは玉狛第2にちょっかいかけてきます」
「うん、それじゃあまたね」



コンコンッ

「どうぞー」
「お邪魔します」
「女主人公」
「みんなお疲れ様」

米屋くんたちと分かれて、私は荒船隊の作戦室に来た。

「荒船くん、ナイス1点」
「おまえバカにしてんだろ」
「してないよー」
「照れてるんだよ、荒船は」
「え?なんで?」
「苗字さんがあんなこと言うからじゃないっすか」
「あんなことって…あぁあれ」

私の荒船くんはもっとできる的な発言のことかな?

「どストレートに褒められたから、荒船くんも照れてるみたいだよ」
「私、褒めたつもりはなかったんだけど…」
「自分のことを想って言ってくれた言葉だから、照れないはずないじゃない」
「そういうもの?」
「うん」
「好き勝手なこと言ってんな」

それまで黙っていた荒船くんが口をはさんだ。

「荒船くんの実力は、あんなものじゃないからね」
「うるせーな。次はぜってー負けねーよ」
「信じてるよ、荒船隊長」
「おう」

荒船くんは帽子をかぶり直すと「んで、おまえは何しに来たんだ?」と聞いた。

「荒船くんの様子を見に来たの」
「じゃぁ今からソロランク戦するから付き合え」
「弧月?」
「腕がなまってる気がしたから、久しぶりにガチでやる」
「負けないよ」
「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
「おう」
「お邪魔しましたー」



荒船くんとC級ブースに行くと、米屋くん、緑川くん、そして空閑くんと三雲くんがいた。

「おっ荒船さんと苗字さん、個人ランク戦すか?」
「荒船さん…!」
「なんだ、おまえらもいたのか」
「さっきランク戦したばかりなのに、空閑くんも元気ね」
「それは荒船さんもでしょ。どうしたの?遊真先輩に負けて熱くなっちゃった?」
「緑川。てめー俺が負けるって予想してたらしいな」

荒船くんは緑川くんにヘッドロックをきめていた。

「オレのサイドエフェクトがそう言っていたのだ!」

緑川くんは「遠距離に逃げてちゃ近距離戦は勝てないよ」と荒船くんを煽った。

「よーしいい度胸だ。ブース入れ、ぶった斬ってやる」
「荒船くん…」
「女主人公はこいつの次な」

そんな話をしていると、ロビーの入り口がざわついた。

入り口の方を見てみると、鋼くんがC級ブースのロビーに入ってきたようだ。

「あの人は…?」
「鈴鳴第一の村上先輩。アタッカーランク第4位。荒船さんがアタッカーをやめる理由になった人だ」

と、古寺くんが三雲くんに言っているとは気づかなかった。

「鋼」
「鋼くん」
「荒船、女主人公!荒船がこっちにいるのはめずらしいな」
「ソロランク戦やりにきたんだよ」
「私が誘われたのに、緑川くんに取られそう」
「なんだそれ。それより試合の録画見たぞ。久々に弧月使ってたな」
「見んなよ」
「あれは荒船くんの全力じゃないものね」
「女主人公は荒船贔屓なんだって?」

鋼くんが空閑くんたちのことを見て「あいつらが…」と言った。

「そう。玉狛第2の空閑くんと三雲くんだよ」

鋼くんが見ていることに、空閑くんも気づいたようだ。

「はじめまして、オレは鈴鳴第一の村上鋼」
「どうもどうも。玉狛第2の空閑遊真です」

空閑くんは、三雲くんを指さして「あっちにいるのがうちの隊長のオサムです」と紹介した。

「は、はじめまして」
「よろしく」

「鋼くんは空閑くんたちに会うの初めてだったんだね」
「おまえだけだろ」
「荒船くんも、入隊式の日に一瞬会ってるんだけど」
「覚えてねー」

「鋼さんも久々っすね。こっち来るの。もしかして、こいつの対策すか?」
「そうだよ」

米屋くんの質問に、鋼くんはストレートに答える。

「荒船を斬り倒す新人アタッカー。そして、荒船に弧月を抜かせたチーム戦術。玉狛第2はかなり手強そうだからな」
「俺を噛ませっぽく言うのはやめろ」
「緑川がいてくれて丁度よかった。対策付き合ってくれよ」
「やだね!たった今負けてごっそりポイントもってかれたとこだもん。今日はこれ以上減らせないね」
「へぇ…」

緑川くんが即答で否と答えた相手だから、空閑くんは興味津々みたい。

「鋼さん、オレでよかったら相手しますよ〜」
「ありがたいけどおまえグラスホッパー使わないだろ」
「ありゃ…そういう対策ね」
「鋼くん、私が付き合おうか?」
「女主人公がいいなら助かる」
「いいよ。私的には、鋼くんには何としても勝ってもらわないとだからね」
「身内贔屓〜」

「じゃあおれと戦ろうよ」

そう言ったのは、空閑くん本人だった。



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