「直接対策したほうが早いでしょ。こっちもそっちの戦い方知りたいし」
「…それは…」
「やめとけ空閑。次の試合が不利になるぞ」
「そうね。空閑くんには悪いけど、賛成はできないわ」
「…?」
「うーん、口出すのも出さねーのもフェアじゃねー感じがするなー。けどまぁ荒船さんたちの言うとおりだ。勝負は試合までとっとけよ」
みんながそう言うと、空閑くんは「ふむ…こりゃ余計戦いたくなってきた」と言った。
「いや、遊真先輩…」
「わかってるよ。よくわからんが、今戦うとこっちが損するんだろ?よーすけ先輩もあらふねさんも、苗字さんもウソついてないってのはわかる」
空閑くんはそう言うと笑った。
「でも、だから逆にそれがなんでなのか知りたくなった」
「…なるほど…玉狛第2のデータは少ない。対戦してもらえるならこっちとしては願ってもない話だ」
鋼くんはそう言うと、空閑くんに2つのお願いをした。
試合は10本勝負で、5本目が終わった後に15分の休憩をとること。
どうやら鋼くんも本気のようだ。
「それでもいいか?」
「いいよ」
二人はそう言うと、ブースに入った。
[市街地A、個人ランク戦10本勝負、開始]
最初の5本が終わり、15分間の休憩時間になった。
最初の5本の結果は、4対1で空閑くんが勝っている。
「”こりゃいける”…と思うじゃん、メガネボーイ」
三雲くんの表情を見た米屋くんが、三雲くんに話しかけた。
「鋼さんが怖いのはこっからだぜ」
『10本勝負終了。勝者は村上鋼』
休憩が終わり、ソロランク戦が再開。
結果は6対4で鋼くんの勝ち。
「人間の脳は、睡眠をとった時に記憶の定着や整理をしてる。オレの脳みそはその機能が人より少し極端らしい。”強化睡眠記憶”。…それがオレのサイドエフェクトだ」
『…なるほど、これは手強いね』
「さすが鋼くん」
鋼くんがブースから出てきた。
「いや、なかなか手強かったよ。さすが荒船に勝っただけある」
「うるせーな」
「次も勝てそう?」
「それは、わからないな。全力じゃなかった可能性もある」
「そっか。でも鋼くんなら大丈夫だよ」
「ありがとう。女主人公の期待に応えられるようにしないとな」
空閑くんはブースから出ると、「むらかみ先輩、ありがとうございました」と言って、三雲くんと一緒に玉狛支部に戻っていった。
「次の試合、私たちも同じ昼の部だから見に行けないんだよね」
「残念だな。オレたちのことも身内贔屓発言してほしかったのに」
「見に行けなくても、ちゃんと贔屓してますー」
「ありがとう」
「代わりに俺が見に行ってやるから。絶対勝てよ」
「荒船は女主人公たちの試合の方を見なくていいのか?」
「中位のやつらの試合優先だな」
「上位で待ってるよ」
「言ってろ」
荒船くんはそう言うとブースを指さした。
「よし、女主人公。約束通りランク戦するぞ」
「もうやる気ないのかと思ってたよ」
「んなわけあるか。むしろ鋼たちのランク戦見てたらやる気出たぜ」
「はいはい。あ、鋼くん」
「ん?」
「雅人くんがこっち向かってるみたいだから」
「了解」
私は荒船くんの隣のブースに入る。
『悪かったな』
「何が?」
『勝てなくて。むしろぼろ負け。情けない姿見せた』
「全然。今回は玉狛第2の方が上手かったってだけで、個人でなら荒船くんは負けてないからね」
『当たり前だろ』
「次は勝ってくれるんでしょ?」
『おう』
荒船くんとの10本勝負は6対4で私の勝ち。
「やっぱ鈍ってんな荒船!」
「雅人くん」
ブースを出ると、雅人くんが鋼くんと一緒にソファーに座っていた。
「女主人公、おめーもうスコーピオン6000いったんじゃねーか?」
「あ、本当だ。荒船くんゴチです」
「うるせー!」
「やったな。これで女主人公もオールラウンダーだな」
「ありがとう」
「どっちもマスター目指したらどうだ?アステロイドはもうすぐ8000点だろ?」
「そうね。この際だから目指してみようかな」
「よし!今日は女主人公のオールラウンダー祝いってことで、かげうら行こうぜ」
「おめーも好きだな」
「俺の好きな物はお好み焼きだからな!」
私たちは一度荷物を取りに作戦室に戻って、ラウンジに集合してかげうらに向かうことにした。
「今日の試合はどうだったんだ?」
「カゲ、お前録画見てないのか?久しぶりに荒船が弧月を抜いてたぞ」
「マジかよ。スナイパーのくせに居場所バレてんじゃねー」
「不可抗力だ。今日の試合は、相手が一枚上手だったな」
お好み焼きを焼きながら、今日の試合の反省会をする。
「結局負けてんじゃねーか」
「頑張って応援したんだけどね」
「おまえの応援が足りなかったな」
「もう、人のせいにして」
焼けたお好み焼きを、雅人くんが私のお皿にのせてくれた。
「おいカゲー。今日は頑張った俺からくれよ」
「あ?女主人公のオールラウンダー祝いって言ってただろうが」
「忘れてた」
「忘れんな!」
「んで、次の鋼の相手が今日荒船たちとやったとこか?」
「そう。玉狛第2の空閑くんね」
「玉狛の空閑ねー…鋼!おめーは負けんじゃねーぞ!」
「さっきソロランク戦したけど、勝ったな。一応」
「6対4だったね」
「カゲももう少し早く来たら見れたのにな」
「興味ねーよ」
お好み焼きがどんどんなくなっていく。
「よく食べるねー」
「おめーは食べなさすぎなんだよ」
「もっと食べろ」
「そんなにたくさん食べられないよ」
「折れそうで怖いな」
「鋼くん…さすがに人間はそんな簡単に折れないよ」
それよりも、と荒船くんが話題を変える。
「おまえらは最近どうなんだ?」
「は?」
「仲良くしてんのか?」
「荒船!」
「おかげさまで、変わらず仲良しだよ」
「付き合う前とあんまり変わらないから、本当に付き合ってるのかって聞かれるんだよ」
「誰に?」
「女主人公のことを好きな男たちに」
「そいつら全員教えろ。一人ずつブースに突っ込んでぶった斬る」
荒船くんの言葉に雅人くんが怒る。
「まぁたしかに、あんまり変わらないよなカゲたちは」
「人前でベタベタするようなカップルじゃなくて良かったでしょ」
「それはたしかに…そうされても困るな」
「ラウンジで抱き合ったり、極端なことはするくせに普段は変わらないってどういうことだよ」
「もうその話はいいから」
荒船くんは、いつまで大規模侵攻の時の話を持ち出すのかしら。
「ま、変わらず仲良くしてんならそれでいいけどな」
「荒船、おめーは誰目線なんだよ」
「ただ、周りに聞かれるのもめんどくさいから、ほどほどに付き合ってるアピールはしていけ」
「めんどくせーが本音だろ」
付き合ってるアピールと言われても…。
「どうするのがアピールになるの?」
「うーん…一般的に言うと、手を繋いだり?仲良くしている姿を見せればいいんじゃないか?」
「なるほど」
鋼くんの言葉に納得した私は、雅人くんの方を見ると「そしたら、ボーダーに行くときは手を繋ぎましょうか?」と提案した。
「イヤだ!」
雅人くんは顔を赤くして否定した。
そりゃそうだ。